団地は何色?

団地再生物語 | 2014.8.19

「団地」は自然とそこにある

築30年以上経つような団地は、計画的に植えられた樹木がよく育ち、季節によって新緑、紅葉、落ち葉、と私たちの目を和ませてくれます。そういう団地の敷地内に足を踏み入れると、まるで公園を訪れたときのように、癒される気持ちになる方は多いのではないでしょうか。
奇をてらわないかたち、適度な大きさの住居棟が点在したその間を縫う通路、遊具やベンチ、芝生や草、そして生い茂った樹木。そこには、自然の森林とは違う安心感があります。

団地のあらゆる配置は実際よく考えられています。しかし実は、団地内で感じる公園のような感覚は、全体の配置やかたちだけでなく、色も重要な役割を果たしているように思います。
住居棟は、見るからに丈夫そうなシンプルな箱型の外壁を、いわゆるアースカラーにしつらえて樹木の中に佇んでいます。まるで樹木と同様に自然の産物であるかのように。

「団地」という「街並み」を考える
団地は、今さら言うまでもなく、一個の建物を指すのではなく、合理的に考え尽くされた集合住宅がさらに集合して成り立っています。当然、建物のボリュームが大きくなるので、なるべくそれらの建物ひとつひとつが主張せず、全体の植栽・配置計画と合わせてひとかたまりの空間(=団地)になるように配慮されています。それが長年人々に好感をもって受け入れられてきました。

しかし、すこし視点を変えると、せっかくたくさんの暮らしが支えられている団地ですから、もう少し「人間臭さ」があっても良いのかもしれません。ベージュやオフホワイトなど、自然界にある色を上手に使って公園のように草木と一体になることも素敵ですが、敢えて意図的な色を使って、人々が集まって暮らしている「街並み」としての人間臭さがもう少しあったらどうでしょうか。

「集まって住む場所」の美しい色とは
では、そのような「意図的な色」とは何色でしょう。爽やかな「ブルー」でしょうか。それとも鮮やかな「赤」?思いきって「黒」?あるいは、それらの色を塗り分ける? いやいや、どれも団地にふさわしいとは思えません。

「まっ白」はどうでしょう?「え?あまり今と変わらないのでは?」と思われるかもしれません。しかし、「まっ白」は意図的につくらないと出せない色なのです。
「白」はとてもレンジの広い色です。ですから、「まっ白な建物」には「白っぽい建物」とは明確に異なる意思が働いていると言ってよいでしょう。

写真はイタリアのotsuniです。「意図的な白」が織り成す美しい街並の典型ではないでしょうか。木々の緑と抜けるような青空に不協和音を起こすことなく溶け込みながら、しっかりそこに人間が暮らしていることを主張しています。
団地の外壁を、このような「まっ白」にしてみたら、どうでしょう? 今の控えめな美しさとはまた違った、印象に残る街並となるポテンシャルを団地は持っているのではないでしょうか。

「そうは言っても汚れが気になる」など色々なご意見があると思います。ぜひ皆さんのお考えをお聞かせください。