日本三景・松島をのぞむ、“less is more”な大空間『雪竹屋』

#大空間推し | 2023.4.24

絶景を見せるため、たどり着いたSE構法

重厚ながら親しみも感じる外観

耐震性と自由な空間設計が魅力の建築工法、SE構法。SE構法で建築された素敵な施設をご紹介する企画「#大空間推し」の第二弾です。
今回訪れたのは、宮城県・仙台駅から電車に揺られ約30分、「松島海岸駅」から徒歩約7分の場所にある『雪竹屋』。広島県の宮島・京都府の天橋立と並ぶ、日本三景のひとつ「松島」の景色が広がる松島湾に面した道路沿いに構えるお土産店です。寺社仏閣を思わせる黒い木の柱と大きなガラス窓が目を引く外観は、文句なしにかっこいい。しかし、中に入るとさらに心躍る大空間が待ち受けているんです。

大きな窓いっぱいに広がる「松島」

それがこちら、2階のカフェ『松華堂菓子店』の飲食スペースです。天井から床まで、正面から側面まで張られたガラス窓からたっぷりと日が差し込み、その先には日本三景・松島の景色が広がる、この上なく贅沢な大空間。海岸沿いで直接見る松島も圧巻ですが、2階からのぞむ島々もこれまたいい。

「2階のこの場所は松島の美しい景色を見ていただきたかったので、できるだけ柱を少なく、窓を大きくしたいと思っていました。お寺のような日本古来の木造建築でそれを実現するために、SE構法を選んだ形です。古いものと新しいものが共存する空間にできましたね、作る方はこちらの要望に応えるのが大変だったみたいですが……(笑)」
と語るのは、オーナーの千葉さん。
「2011年に起きた東日本大震災のとき、この辺りは倒壊してしまった建物もありましたが、ありがたいことにこの建物は無事だったんです」
その言葉を聞くと、少ない柱がいっそう力強く見えてくるよう。

使い込まれた木の風合いにうっとり…

“今のいいところ、昔のいいところ、その両方を大切に”というコンセプトで営業している『松華堂菓子店』。店内を見回すと、年季の入ったショーケースや食器棚に、こだわりの商品や選び抜かれたお皿が並びます。

こだわりのカステラを、専用の音楽と共に

黄色い箱も愛らしい

若いスタッフの方が慣れた手つきで切っていきます

ここの名物は「松華堂かすてら」。毎朝お店で卵を割るところから始まり、カットするのもひとつひとつ手作業ですが、使用するオーブンは最新のもの。このカステラにも“今のいいところ、昔のいいところ”が詰まっているんですね。

シンプルな形にたくさんの想いが込められています

脚付きの銀食器にプリン……たまりません

店内でいただくカステラは、千葉さんが「ようやくぴったりのものを見つけた」と語るこだわりの木のお皿に乗せて提供。きめ細かいやわらかな舌触りが楽しめる、至福の一皿です。ここでしか食べられないプリンと、淹れたてのコーヒーもご一緒に。

この店のために作られたピアノ曲集のCDも販売中

BGMはオリジナルで作成したという『カステラのためのピアノ曲集』。店内に飾られたピアノで演奏したというクラシックの名曲たちは、通常よりもかなりテンポを落とし、この空間のゆったりとした雰囲気を確固たるものに仕上げます。

「“less is more”という言葉を遺した建築家のミース・ファン・デル・ローエじゃないですが、シンプルなものや引き算の美意識は大事にしています。この建物や、かすてらや食器、音楽、景色、ここにあるものは全て無駄を削ぎ落としたもの。それら全てが揃うことで、この空間は完成するんです」
ミース・ファン・デル・ローエといえば、必要最低限のラインのみで構成された「ファンズワース邸」などが代表作としてあげられる建築家。あの徹底的にミニマルな邸宅と、この『松華堂』……たしかに共通するものを感じますね。

『松華堂』のロゴが入った行灯も洒落てます

美しく整った大空間を支えるのは、シックな黒い柱と階段横に設置された白い壁。木の風合いを楽しみながら開放感を一層強める階段の吹き抜けも、SE構法だからこそ叶います。

開かれた空間で、世界でここだけのお土産を

一階は風が通り抜けるような開けた空間

一階のお土産店『雪竹屋』では、厳選された東北土産が販売されています。東北限定の手ぬぐいは、かわいいものばかりで目移りしてしまいそう。東北の農をテーマとした手づくり雑貨プロジェクト『菜園雑貨』とのコラボレーションで作られた手塩皿、松島の松をイメージしたオリジナルのお香など、“世界でここだけ”のアイテムも見逃せません。

一枚ずつ焼く姿はずっと見ていても飽きません

店先では焼きたてのおせんべいも販売中。ひとつひとつ手作業で焼いている様子も間近で見ることができます。

営業中は観光客で大賑わい

お店の前はたくさんのベンチが置かれ、ひと休みしながらおせんべいを食べる憩いの場になっていました。

全てが完璧に整えられつつも、人と人とが交流することを考えて作られた大空間は、どこか懐かしく暖かく、誰もを迎え入れてくれる場所でした。この場所で過ごす時間のために松島を訪れる、そんな贅沢もありかもしれません。


1階 『松島雪竹屋』
2階 『松華堂菓子店』
宮城県宮城郡松島町松島町内109


大空間に住むなら。

『松島雪竹屋』と同じ建築工法、「SE構法」を採用している『無印用品の家』も、大きな窓、少ない壁、丈夫な柱で構成されたシンプルな大空間が特長です。30年先も飽きない「暮らしの器」を覗いてみませんか?