夏至の日射しと木の家

快適温度の暮らし方 | 2011.9.6

←今まさに台風が来る直前の16:30。空がなんともいえない色に染まり、今にも雨が降りそうな9月のはじめの屋外。

夏至の日射しと木の家

「チームいま何度?」は、未来の家の暮らし方を考えています。
電気や石油などのエネルギーを極力使わずにすむ、太陽や風などの自然の恵みから得られるエネルギーを上手に活用する家を実現するためには、いくつかの重要なことがあります。
「家そのものが持つ断熱性能の高さ」と、もうひとつは「太陽や風の自然の力を利用すること」です。
今回は「太陽の力を利用すること」についてさらに深く知るため、夏至の日(2011年6月22日)に、モデルハウスで日射状況を観測してみたのでご報告します。

夏至とは?

太陽の高さが高くて暑い「夏の日射し」、その夏のうちで最も太陽が高くなる日が夏至(6月下旬)、日の照っている昼の時間が最も長い日です。反対に冬至(12月下旬)は、太陽の高さが低くて寒く、昼の時間が最も短い日です。
夏至の南中時(正午)の太陽高度は、北緯35度では78.5度。これは天頂(90度)にかなり近い角度で、ほとんど真上から太陽が照りつけることになるので、夏至の日が最も日射しが強く、夏至を過ぎると日差しは傾き、だんだん弱くなります。

ではなぜ、最も日射しが強い夏至の日が一番暑い日ではないのでしょうか。
それは、地球を取り巻く大気が「暖まりにくく、冷めにくい」性質を持っていることによります。 このため、太陽の日射しによって地表がだんだん熱せられ暖まり、それによって地表に接する空気が熱せられます。
また、日本は海に囲まれていますが、さらに海水は熱容量が大きく暖まりにくく冷めにくいこともあり、太陽の運行より季節が遅れてしまい、真夏日が8月となるのです。

庇(ひさし)がどれくらい夏の日射しをさえぎるのか

自然エネルギーの代表格である太陽の光。冬にはこの日射しをたくさん取り入れ、部屋を暖かくしたいものですが、夏は家を暑くしてしまいます。
古くからの日本の家の知恵でもある、深い軒(のき)や庇(ひさし)が、夏の室温を上げる原因の「夏の日射し」をどれくらいさえぎっているのかを確認するために、最も日射しが強い夏至の日(2011年6月22日)に、木の家のモデルハウスで日射状況を観測してみました。

以下は、無印良品の家 熊谷店のモデルハウスで、南側の大きな開口部(窓)から、夏至の日射しがどのように入ってきたか、10:00、12:00(正午)、15:00に撮影したものです。
無印良品の家モデルハウスで、お客様とのお打合せでいつも使用しているソフトを使い、シミュレーションもしてみました。下の図は、このコンピューターグラフィックと比較しています。

すごい! シミュレーション通り、夏至の日射しは外のウッドデッキまでは入ってきますが、部屋の中までは入ってきていません。
部屋の中から撮影したものと、その時の温湿度は以下になります。

庇(ひさし)だけでなく、横の袖壁(そでかべ)が夕方15:00の西日をさえぎっているのがよくわかります。
この袖壁は、流れてくる風を受け止めて流れを変え、室内へ風を取り入れる「ウィンドキャッチャー」としても機能しています。

木の家の庇(ひさし)の理由

木の家の少し変わった箱型の外観は、南側に大きな窓をしつらえているのが大きな特徴です。
この窓から風を取り入れながら、深い庇(ひさし)で夏至の高くて強い日射しをさえぎり、横の袖壁で夕方の少し傾いた日射しもさえぎり、そして、冬に低くて優しい日射しを取り入れる、というデザインの理由があったのです。

それでは、冬至は?

では、冬はどうなのでしょうか?
そこで同じように、コンピューターグラフィックで、今年の冬至(2011年12月21日)の日射しをシミュレーションしてみました。

南側の大きな窓を通して、また、吹き抜けからも冬の日射しがたっぷり降り注いでいるのがわかります。
冬の太陽の高さはとても低く、また、日照時間が短いため、日中に冬の日射しをたくさん取り入れて、部屋を暖かくし、できるだけエアコンや暖房設備を使いたくないものです。
大きな窓があり、吹き抜けがある木の家は、「冬は寒そうだ」と思われている方も多いのではないでしょうか。木の家の大きな窓は、冬の日射しを取り入れるワケがあったのです。
冬に「陽だまり」で過ごす木の家は、太陽の光を快適にコントロールしている家といえるでしょう。

真夏日に快適に過ごす知恵

さて、先ほど「夏至の日が一番暑い日ではない」とお伝えしました。夏の日射しは、7~8月には少し傾いてしまい、真夏日には庇(ひさし)の長さや建物の配置によって、部屋の中に太陽の日射しが入ってくる、という経験はないでしょうか。

そこで、落葉広葉樹を庭に植える、という方法があります。
夏は葉が生い茂って日陰をつくり、冬には寒さと乾燥から葉を落とすことで、日射しが入ります。これは、古くからの日本人の自然共生の知恵といえます。

もうひとつ、この夏、無印良品の家でモデルハウスでも育てている「緑のシェード」です。
初夏に種をまき、強い日射しをうけてどんどん成長するゴーヤはつる性の一年生草本。真夏に実がなり、秋には枯れて終わります。最も暑い時期に、緑のカーテンとなり、優しい葉陰をつくってくれるのです。

葉や土から水分が蒸発すると、気化熱の作用で温度を少し下げてくれます。
「緑のシェード」を通って部屋の中に入ってくる風は、少し温度が下がった風なので、より涼しく感じることができるのです。こういった自然の知恵をたくさん応用していきたいですね。

また、テラス前に設置する「緑のシェード」は、日射しだけでなく、外の地面やベランダの日射しが反射し、たくわえて放射する熱をふせいでくれる効果もあります。
「日射しが反射し、たくわえて放射する熱」は、真夏の熱い、アスファルトの道路を思い浮かべてみるとわかりやすいかもしれません。

夏の暑い日、アスファルトの日陰より、葉が生い茂った木陰のほうが快適に感じますよね。木の家のテラスがウッドデッキを使用しているのも、この夏の「放射する熱」をなるべくたくわえない工夫なのです。
この熱や日射しを防ぎ、涼しさを得るには、このほかに、庭に芝生を植えたり、ベランダにすのこを敷いたりすると効果があります。

いかがでしたでしょうか。皆さんもこの夏、日射しの工夫しましたか?
快適に過ごす夏の知恵を教えてください。