10年目の住まい リバーサイドしろきたWさんのお部屋を再び訪問

MUJI×UR団地リノベーション | 2022.9.5

「住み続けているのは、かなり、気に入っているからですよ」。
柔らかい日差しが入ってくるダイニングの椅子に座って、Wさんはそう語ります。
Wさんがこのお部屋に暮らしはじめて、ちょうど10年が経ちました。10年の節目というタイミングで、当時の設計者であるMUJI HOUSEの豊田がWさんのお部屋を訪問させていただきました。

大阪市都島区にある団地「リバーサイドしろきた」の一角にあるWさんのお部屋は、「MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト」によって手掛けられた住戸。玄関には「Plan02」と記されたプレートが埋め込まれているように、現在1,000戸以上、間取りのプランも60種類以上となった「MUJI×UR」プロジェクト最初期の物件です。

「入居当時から、レイアウトなどはあまり変えずに暮らしています」。その言葉どおり、リビングにソファ、ダイニングにテーブルと椅子を設置して、鴨居の向こう側の部屋には、スチールシェルフを2列に置いて、収納スペースとして活用する、といったレイアウトは、8年前に取材させていただいた以前の記事(2014年7月掲載)で紹介されているそれとほぼ同じです。

2014年の様子

現在の様子

「台所道具を置く場所を変えたり、ベッドを買い替えたりといった『変化』はもちろんありました。でも、レイアウトの変更はほとんどないかもしれません。もともと、モデルルームのレイアウトを踏襲したのですが、これが過ごしやすいんですよね。以前の住戸のまま残された鴨居やカーテンレールのカバーには、趣味のコレクションをディスプレイできて楽しいし、リビングに設置されたスポットライトは、間接照明として使えるので、テレビを見る時に重宝してますし(笑)。だから、余分なものを持たないようにするなどして、住みはじめたときに感じた『心地よさ』を維持することは心がけてきました」。

一室空間となっているリビングとダイニング、収納スペースなどの床に敷かれている「麦わらパネル」は、当時「MUJI×UR」のリノベーションで使われていた素材。寝室には現在もリノベーションに使われている「麻畳」が敷かれています。それらは、経年変化によって、落ち着いた色合いになっています。
「メンテナンスはとくにしていませんが、問題が出たことはありません。どちらも肌触りの良さが気に入っています」。
一方で、白く塗られた壁や天井はきれいなまま。Wさんがそろえたシンプルなデザインの家具類とも調和を見せています。

自身の生活感が反映されつつも、清潔感がある。そんなバランスの取れた居住空間を維持するためには、相当な努力が必要なのでは。そんな質問に対して、Wさんは笑顔で首を横に振ります。
「確かにスイッチパネルやドアノブのまわり、ステンレスキッチンなど、汚れやすいところは、折に触れて拭いたりしていますが、基本的には、週に1回掃除をするだけです。モップで鴨居などのほこりを落として、掃除機をかける。それだけですね」。

最近はコロナ禍の影響で、リモートワークをすることも多くなっています。自宅で過ごす時間が増えましたが、ストレスを感じることはないそう。
「ソファでテレビを観るなどして、リラックスする時間を持つようにしています。そのまま寝ちゃったりなんてことも結構あるんですけどね」。

そう笑うWさんの視線の先にある窓からは、大阪の市街地や生駒山が一望できます。
下に目を向けると、団地に設けられた公園が見えます。「春には桜も咲いてきれいなんですよ」というWさん。お休みの日には、団地内のカフェでひとときを過ごしたりもしています。
「団地そのものも気に入っています。オートロック機能などはありませんけれど、管理がしっかりしているから共有部分がきれいだし、お互いにあいさつしあえるような、住人同士の適度な繋がりもありますから」。

10周年を迎えた「MUJI×UR」が新たに取り組む「団地まるごとリノベーション」にも好印象を持っているそうです。
「共用部分もリノベーションし、地域コミュニティの形成にも積極的に関わるような『団地まるごとリノベーション』が行われることで、さまざまな世代の人たちにとって、より暮らしやすく過ごしやすい場所になるはず。団地自体がいい意味で、いまよりも『盛り上がる』ように感じます」。
いまのお部屋での「ここまで」の暮らしを振り返っていただいたWさん。最後に「MUJI×UR」が手がけるお部屋への入居を考えている方々へのメッセージをいただきました。

「基本的に古い団地の住戸をリノベーションしているから、スイッチの位置など、変更しようがない部分で、不便なところも幾分かはあるかもしれません。でも、決して住みにくいわけではないはず。だからこそ僕は、あるものを生かしながら、自分なりの工夫をすることで、心地よく過ごしてこられました。

例えば、キッチンのタイルや、バスルームのドアなどといったレトロな部分を残しつつ、シンプルで飽きのこないデザインで統一されている。そんな『MUJI×UR』のお部屋が、格好いいな、素敵だな、と感じられる方だったら、その良さをより引き立てるような工夫自体を楽しみながら、長く暮らしていけるんじゃないかな、と思います。URの団地は建物自体が丈夫ですしね。私もここでの暮らしをこれからも楽しんでいきたいと思っています」。

MUJI×UR Plan 02 [Re+002]「リバーサイドしろきた」(大阪市都島区)/60.62m²