vol.27 景色の家
「無印良品の家」で暮らしている方を訪ねて青森県三戸郡へ。
情報学研究者のドミニク・チェンさんが、美しい風景に佇む「窓の家」に会いに行きました。

施工例 | 2019.12.10

プロローグ

家族の環世界

子どもが生まれてから、それまでは当たり前に在るものと思っていた「家族」というものについて、考えるようになった。家族とは、最初から在るものなのだろうか? 親と子がいれば、自然と家族になるのだろうか? それはおそらく違う、と最近は思うようになった。家族はつくられるものであり、家族をつくる時間というものがあるのだ。
台所でコトコトと火で温められる鍋、そこから流れる美味しい香り、隣のフライパンからジューッと野菜を炒める音。戸棚からコップを取り出し、テーブルにカチャカチャと食器が並べられる。呼びかけられた子どもは読み耽っていた本をバタンと閉じて、いそいそと部屋から出てきて、台所とダイニングを行き来する母と父に合流する。
この一連のなにげない所作によって紡がれる時間の蓄積こそが、「家族」という関係性を作り出しているのだと、ふと感じ入る。外界とゆるやかにつながる「窓の家」で午後を過ごして、家とは家族の環世界が作動し続けるための道具であり、インタフェース(境界線)なのだと、改めて思った。

Dominique Chen|ドミニク・チェン
情報学研究者・起業家
1981年生まれ。フランス国籍。早稲田大学文学学術院・表象メディア論系・准教授

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