「木の家」の新しい造作材 「造作材」の線は消せるか?

住まいのかたち | 2026.1.30

2004年に販売を開始した「木の家」。余計な装飾を削ぎ落とし、簡素でありながら豊かに暮らすための編集可能な「余白」を設計するという発想から開発されました。
今回、その原型の空間に、深い落ち着きと成熟した温もりを加えるために、新たな素材とディテールを20年ぶりに追加設定いたしました。
この連載では、その新しい素材やディテールについて、テーマごとにお話ししていきます。

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第4回となる今回は、室内空間で様々な機能を支える「造作材」についてです。

ここで言う造作材とは、建具やサッシ枠、巾木、笠木などを指しますが、建築設計や施工に携わっている方以外、あまり普段意識することはないかもしれません。
しかしこれらは、建具やサッシを支え、壁や床などの異なる部位同士の納まりを整える、重要な役割を担っている部材です。造作材がなければ、空間は成り立たない、といっても過言ではないでしょう。
今回の新仕様では、その「見え方」を丁寧に見直しました。

まず、建具・建具枠について。
住まいの中で最も頻繁に目に入り、触れ、使われるアイテムと言ってよいでしょう。
そして、繰り返しの開閉機能が不可欠で、そのため強度・耐久性のある可動・固定部材で構成され、自ずと「線」の多い部位となります。
従来の「木の家」では、建具・建具枠の機能を満たす必要十分な直線部材のみを使用し、柱や梁と同様に、建具枠も空間に潔く現していました。
新仕様では、美しい構造材である柱や梁ともども、建具枠や引き戸の複数の線も消すことで、より感じの良い「余白」を生もうと考えました。
もちろん、建具としての機能を損なうわけにはいかないので、強度や耐久性を維持しながら線を消すという、ディテールデザインの工夫がここにあります。

従来仕様

新仕様

従来仕様

新仕様

「枠の線をなくす」という考え方は、サッシ枠にも踏襲されています。
窓を「部材」として見せるのではなく、光と景色のための開口であることの再認識です。

従来仕様

新仕様

室内からはフレームよりも先に、外の緑や空の明るさが自然と目に入り、空間の奥行きを静かに広げてくれます。

「笠木」のデザインも見直しています。
「笠木」は、腰の高さまでしかない「腰壁」などの上端の仕上げ材として使われる造作材です。もし、これらの手で触れることの多い部分を壁と同じ塗装やクロスで仕上げてしまうと、すぐに汚れが目立ったり痛んだりしてしまうので、それを避けるために、耐久性の高い木製や樹脂などの素材を用いるのが一般的です。
従来仕様では、ここに厚み20㎜の木製板材を使用していましたが、この厚みさえも省略したいと考え、7㎜にサイズダウンしました。

従来仕様

新仕様

この、わずかな引き算により、「力強さ」から「繊細さ」へと大きく印象を変化させています。

足元の巾木についても同様です。
巾木は壁の最下端の床と接する部分に使う造作材で、全く異なる素材を綺麗につなぐことと、掃除機などが直接壁に当たることを防ぐ役割を担っています。
この巾木をなるべく目立たせたくない、というのは従来仕様でも同じで、そのために壁の白色と同色のアルミ製の巾木を採用していました。
新仕様では、壁の仕上げに白以外の選択肢が加わったことにより、壁側に色合わせをするのではなく、床と同じ素材の木製巾木を用意することにしました。
壁に同化させるのではなく、床の延長として自然に穏やかに壁とつなげることが目的です。

従来仕様

新仕様

今回の造作材に関する更新は、言われないとわからないくらい微細なもので、けして目を引くためのものではありません。
建具やサッシ、笠木、巾木は、住まいを成立させるために欠かせない要素であり、なくすことはできません。ただ、その見え方や線の量は、空間の感じ方に大きく影響します。
今回の新仕様では、性能や役割を変えることなく、その線をひとつひとつ整理していきました。
小さな変更の積み重ねではありますが、それによって生まれる余白や落ち着きは、日々の暮らしの中で、少しずつ効いてくるはずです。

20年という時間の中で、「木の家」は、大きく変わるのではなく、変えすぎないための調整を重ねてきました。
今回の更新も、その延長線上で、家が住まい手の暮らしに静かに寄り添い、邪魔をせず、支え続けるためのものなのです。