「木の家」に新仕様を追加しました①開放感溢れる一室空間に質感と陰影を

住まいのかたち | 2025.11.7

無印良品企業メッセージ「茶室と無印良品」(2005年)より

この写真の茶室は、無印良品が2005年に出した企業メッセージ「茶室と無印良品」に添えられた、茶室の源流とされる国宝・同人斎です。
このメッセージでは、茶室に見る、自在性とあらゆるイマジネーションを受容する簡潔さをお手本とした無印良品の家づくりに言及しています。

茶室と無印良品 >

このメッセージが発表された前年に販売を開始した「木の家」は、簡潔さの中に、価値や美意識を見立てていく無印良品の思想そのままに、愚直なまでに簡素であることに徹した、堅牢な箱を家としたものでした。

南面の大きな庇と開口部を持つ一室空間は、季節ごとに太陽光の入り方をコントロールしながら、底抜けに明るくて開放的な空間をつくり、家族の成長とともに、明るくあたたかな時間を過ごしていただくためのデザインです。

2010年築 港北ニュータウン店モデルハウス

2018年築 名古屋店モデルハウス

2004年に販売開始後、20年以上経つ今も、このコンセプト、デザインは全く変わりません。2015年には、10年以上同じコンセプト・デザインで売れ続けていることが認められ、グッドデザイン・ロングライフデザイン賞を受賞しております。
その後も住宅商品としては、他に類を見ないほど長い間、簡素で合理的な空間構成・内外装の内容をほとんど変更することなく販売してきましたが、この度、素材そのものの質感を生かしたマテリアルとこれまで以上に余計な線を消す細部のデザインを追加しました。
これらのこだわりの質感やデザインは、簡素な空間だからこそ際立ち、余白がもたらす豊かさ・充足感を増幅してくれます。

例えば子どもが巣立ち、自分たちのためだけの時間が増えたときに、天真爛漫な明るさよりも、少し陰影のある、静かさや落ち着きを感じられるひとときが過ごせるしつらえとしたのです。

空間を構成する壁と床の素材には特にこだわりました。
壁は本来廃棄されるたまごの殻をクロスに仕立てて、たまごの殻の特性を生かして調湿性を持たせたものです。色も淡い色が何色か選べ、これまでの白色一辺倒とは趣を変えています。
床材もより木の持つ素性の良い素材感が生きるように、幅広で長尺、表面の木材もかなり厚いものを採用しています。
さらに空間をつなぐ扉やサッシの枠はできるだけ小さくし、空間の線を整えることで、すっきりとした印象とともに、光と影の変化をより繊細に感じられるデザインとしています。
1階と2階をつなぐ階段も、これまでの力強いデザインから、空間に与えるインパクトの小さい直線基調、かつ光を吸収するグレー色に変更しています。

加えて、これまであまり想定していなかったカーテンのたたみ代の確保も兼ねて、南側の窓の大きさを敢えて少し控えめにして、時間帯によって移ろう陰影を楽しめる空間を演出しています。
外の景色を切り取りながら、室内にやわらかな光が届くことで、自然と呼吸を合わせるような心地よさが生まれるでしょう。

これまで、無印良品の家は、そこに暮らす人の個性を生かせる、「白いキャンバス」であることを一義とし、素材も色も、個性を抑えたデザインに徹してきました。今回追加した仕様・デザインは、より達者で成熟した絵描きが、白以外や、定形外のキャンバスを選ぶように、暮らしのリテラシーに長けた方が、自分の暮らしのベースとして、よりふさわしい空間を選びやすいように選択肢を広げる、という狙いです。

暮らし方に合わせて、お好きな仕様をお選びいただけます。

次回以降、今回採用の新しい素材、ディテールについて、それぞれ詳しくご紹介していきたいと思います。
これまでの無印良品の家より、すこし大人になった?新しい空間にご期待下さい。

「木の家」新仕様について詳しくはこちら>