50代の住まいとお金①
住まいのかたち | 2024.8.26
大きく変わった「50代」の価値観
時代の変化にあわせて求められている、新しい平屋での暮らしについて、みなさんと一緒に考えていくプロジェクト「みんなで考える理想の平屋」を先月より開始しました。
第一回のアンケートでは約3,400人にご回答いただき、大きな反響を呼びました。回答者を年代別に見ると50代の方々の回答数がもっとも多い結果となりました。実は無印良品の家のモデルハウスへのご来場、および陽の家(平屋)をお選びいただく50代の方々も年々増加しております。
数年前にアニメ「サザエさん」に登場する「波平さん」の年齢設定が54歳であることがSNS上でもトレンドになりましたが、一昔前と現代の50代のライフスタイルや価値観は大きく変わっています。例えば、祝日の一つである「敬老の日」は、元々55歳以上の人を対象にした「敬老会」が始まりだと言われています。また、仕事に関しても、1980年代頃まで定年は55歳とされていました。このように現代の尺度で測ると、50代の在り方が大きく変わっていることがわかります。当然この変化は、「住まい」や「暮らし」に対する意識も同様なのではないでしょうか。
アンケートの回答では、50代の方々の「住まい」についての価値観が非常に多様であることがわかりました。その一方で懸念としてもっともあげられていたのが「お金」に関することです。ライフステージの変化に伴い、いざ新しい住まい方を検討しようとすると、収入や支出、税法上のことなど知らないといけない要素が多く存在します。
このコラムでは、現代の50代の「住まい」に対する意識と「お金」について、アンケート結果や世の中のデータを用いて考えていきたいと思います。
また、マンション・団地リノベーションについて連載中のコラム「リノベーションなんでも相談室」でも、「50代のマンション購入について教えてください」というコラムを掲載していますのでこちらもぜひご覧ください。
50代の方々の「住まい」についての意識
まずは、50代の方々の「住まい」に関する意識について、前述の平屋のプロジェクト内で募集したアンケート結果から考えていきたいと思います。
Q:今のお住まいの家で生涯暮らせると考えていますか?
「あまり思わない」「暮らせないと思う」を合わせると、約4割の方が今のお住まいの家について消極的なイメージを持っていることがわかります。
実はこの割合は、どの年代も大きく変わりませんでした。しかし、同じ「生涯暮らせない」に対する回答でも、やはりライフステージの違いで理由は異なるようです。「暮らせないと思う理由」を30代の方と比較してみましょう。
30代の回答に多かったキーワードとして「手狭/狭い」「賃貸」「巣立つ(子ども)」が目立ちます。個別回答を見ると、現在の住まいが賃貸で手狭であること、今後子どもが大きくなっていくと手狭になっていくのでは、という理由がやはり多いです。一方で50代の回答を見ると、「老後」「賃貸」「古い」「広い」「階段」などが目立ちます。こちらは自身のこれから(老後)を考えたときに①今の賃貸暮らしだと不安 ②今の住まいが年数が経っている(古い)/広い、または階段が使えない、バリアフリーに対応していないので使えない という理由が多いようです。
Q:現在住宅購入についてどの程度関心がありますか?
住宅購入についての関心度についても聞いてみました。50代の方々の回答では、「非常に関心がある」「それなりに関心がある」で約7割となり、全年代の割合とほぼ同じという結果となりました。
Q:住宅購入についていつ頃を検討していますか?
具体的にいつ購入を検討しているか、の質問については、5年以内と回答した方が約2割、それ以上先で約3割、購入する予定はないが約4割となりました。これらを鑑みると、関心は持ってはいるが、まだ具体的に購入検討には至っていないという方が一定数いるのではないかと推察されます。
では、世の中全体はどうなっているのでしょうか。
国土交通省が発表している「住宅市場動向調査」を基に確認してみましょう。まずは、住替えた住居ごとの取得時の年齢です。注文住宅全体では、50代の割合は約10%程度。新築では8.4%で、建て替えとなると全体の23%となっています。注文住宅全体の取得時の平均年齢はこの5年間で微増の傾向です。
また、取得回数別でも見てみましょう。一次取得(はじめて住宅を取得した)・二次取得(2回目以上住宅を取得した)方の取得時の年齢別のデータです。注文住宅の一次取得では、50代が7.7%と、はじめて取得される方も一定数いることがわかります。
二次取得になると、50代以上の比率が大きく上昇します。50代で18.8%、ちなみに60代だと56.5%の割合となります。二次取得者全体の平均年齢は56歳となっています。
50代の方々の「資金計画」について
一方で資金計画についてはどうでしょうか。
こちらは年代別のデータがなく、一次取得者・二次取得者全体のデータとなります。住宅購入における資金の考え方として、自己資金(最初に拠出可能な資金)+借入金(住宅ローンなど)の合算値が主な考え方となります。一次取得者全体では、30代が多いこともあり、借入金の比率が多いことがわかります。
二次取得については前述の通り、全体の平均年齢が56歳であり、50・60代が中心となることもあってか
自己資金の比率が高くなっていることがわかります。但し、借入金の比率についても一定の割合があることから、必ずしも自己資金だけで取得しているとは限らない、ということも言えるかと思います。
では、借入金(=住宅ローン)の利用者状況について見てみましょう。こちらは住宅金融支援機構が公表している住宅ローン利用者の実態調査から抜粋した年代別住宅ローン利用者の年間推移となります。2024年4月調査では、50代の比率が10%、また2021年の調査時にはなかった60代の回答者も3%程度いらっしゃることがわかります。
このように世の中全体でも、50代での住宅購入者は新築、建て替え、一次取得、二次取得問わず一定数
いることがわかります。またそれも自己資金だけでなく、ある程度借入金も含めて購入している状況です。
では、少しだけ住宅購入についての予算について補足します。
まず、家を建てるために必要な総費用には、大きく分けて5つの項目があります。
建物本体をつくるための「①建物本体工事費」、屋外の給排水工事や電気工事に掛かる「②附帯・その他工事費」、カーテンや外構、エアコン工事の「③別途工事費」、税金やローン手数料などの「④諸費用」、家を建てる土地を所有するために必要な「⑤土地代」です。 建替えとなると、この中に解体費用として、家屋の取り壊しにかかる費用や、それによって発生した廃材の処分費用などが発生します。
これらの総費用に対して、自己資金(住宅取得に充てることができる預貯金や親族からの支援金(贈与など))+借入金(住宅ローン)+支援補助金といった調達資金が下回らないのかを考える必要があります。
調達資金のバランスについては、今後のライフプランを考えて決めていく必要がありますが、では住宅ローンについて、「何歳までに返済しないといけないのか?」「加入条件について」「住宅ローンの種類について」などについて、また自己資金についての棚卸しについては、今後のコラムにてご紹介したいと思います。
「住まい」の選択肢も多様に
住まいについての考え方や価値観は今回のアンケートの回答を見ても本当に多様化してきていると感じます。
「この年代はこうでないといけない(こうである)」といった今までは当たり前のように存在していた、年代別で考える企業側視点のマーケティングも今後形骸化していくのではないかと思います。
先日筆者も参加したMUJI×URでのトークセッションにて、「住宅すごろく」についてお話をされておりました。「住宅すごろく」とは、1973年に建築家の上田敦さんが考案されたもので、日本の高度経済成長期での都市居住者の住宅の住み替えの過程をすごろくとして表現したものです。実は、2007年に現代版の住宅すごろくとしてアップデートがされております。庭付き郊外一戸建住宅がすごろくの「上がり」としていたものが、現代版では「上がり」が6つに増えました。もとより現代版の発表から約15年以上経過しているため、今ではもっと多くの選択肢があるのかもしれません。
「住まいを購入する」という選択肢も自分の理想とする暮らしに照らし合わせたときに、決して年代やライフステージで縛られることはなく、選択肢の一つとして考えることは可能です。その選択の対価として一定の「お金」が必要になってきます。今後のコラムでも様々な角度から50代の住まいについての意識とお金について考えていきたいと思います。