「窓の家」+「断熱最高等級」がもたらすもの(前編)

住まいのかたち | 2024.3.12

家における窓の役割

無印良品「窓の家」の名前の由来である「窓」には家の外と内をつなぐ、たくさんの役割があります。
外の光を取り込む(採光)、外の景色・様子を見る(眺望)、外の空気を取り入れる(通気)、外と行き来する(出入口)・・・ざっとこのくらいの役割を担っています。

一つの窓でこれらの役割を複数担う、というよりは、窓によってそれぞれの主な役割が決まってくる、ということの方が多いようです。そしてその役割によって最適な大きさや位置が求められるのですが、一方で外観デザインを考慮すると、その窓に必要な(最適な)要件を無視して、大きさや位置を他の窓と揃えたりしてしまうことがあるのではないでしょうか。

2007年に発表された「窓の家」のデザインの、画期的な仕掛けは、眺望を楽しみたければアイレベルに大きな窓を、逆に近隣の目線が気になる場合は、高い位置に明かり取りとして小さな窓を、というように、それぞれの窓の役割に合わせて自由に大きさや配置を決めても、家全体のデザインが破綻しない、むしろ表情が豊かになる、というものです。

窓は諸刃の剣?

ところで、窓には前述の役割のほかに、もう一つ、外気温と室温の温度(エネルギー)のやりとり、つまり家の断熱性能・省エネ性能を左右するとても大事な機能があります。
この機能は、冬の暖かい陽射しを取り入れて部屋を温める、夏に窓を開けて風の通り道をつくってこもった湿気、温度を逃す、というポジティブな面と、冬の冷たい空気、夏の暑い空気を家に取り込んでしまう、と言うネガティブな面の諸刃の剣となります。
したがって、窓については、総合的に高度な性能設計をしないと、少ないエネルギーで快適な暮らしを営むことが難しくなる、と言っていいでしょう。

ところが、この窓の快適性、省エネ性を左右する大切な機能は、彩光や通風、出入口などの窓のその他の機能と比べて、なぜかあまり意識されないことが多いようです。
しかし無印良品では、かねてよりこのエネルギーのやり取りの設計にも注目しており、窓の大きさ、位置を自由に設計できる「窓の家」では、冬に陽の当たらない、あるいは夏の強い西陽が当たる場所には無駄に大きな窓を設けない、逆に冬場に陽の当たる部分には、例えば手の届かないところにも大きめの嵌め殺し窓を設けるなど、「窓の家」ならではの設計提案をして参りました。

家の断熱・省エネ性能については、国の施策としても、数値基準(UA値やBEI値など)のかさ上げと2025年に義務化(断熱性能等級4)の動きがありますが、無印良品の家では、そのずっと前、2011年から家全体の断熱・省エネ性能について、すべての家について数値計算・シミュレーション(+AIR)を行い、その省エネ・快適性を確認の上お引渡しをして参りました。

※省エネ法改正により、2025年以降建築されるすべての住宅に「断熱等性能等級4」の適合が義務付けられます。

断熱・省エネに関する数値基準

UA値:屋根・外壁などに使われている部材から、家全体の熱の通しやすさを算出し、それを表面積で割った数値。(外皮平均熱貫流率)数値が小さいほど熱を通しにくい。

BEI値:計画した住宅の設計一次エネルギー消費量から、基準一次エネルギー消費量を割った数値。数値が小さいほど省エネルギー性能が高い。

「窓の家」だからこそ簡単に実現できた断熱性能最高等級7。その効果は?

無印良品の家では、すべての商品でダブル断熱+トリプルガラスを標準仕様とし、全棟断熱・省エネ性能を数値化してきた結果、全棟のUA値の平均は0.43という高い性能であることが実証されています。(※2022年度販売全棟の実績)

家の中で最も熱の出入りが大きくなる窓について、「窓の家」は、前述のようにその窓の大きさ、位置を敷地の状況や建築プランに合わせて最適化できるので、「木の家」や「陽の家」といった他の商品と比べてもひときわ高い断熱性能(UA値平均0.38)となっています。
この数値は、2025年に断熱・省エネ性能義務化が予定されていますが、最も寒さの厳しい北海道エリアの基準をクリアしています。さらにその先の2030年に制定が検討されている一段高い基準においても、同様に北海道エリアの基準をクリアする実力です。

このように、高い断熱・省エネ性能を誇る無印良品の家の中でも、そのデザインコンセプトから先天的に高い断熱性能を持つ窓の家だからこそ、断熱性能等級の最高等級7も容易に達成することができました。

最高等級7を実現する高断熱仕様について、詳しくはこちら >

どのように達成しているかについて、詳しい内容は当コラム後編にて解説いたします。
元々の窓の家の断熱仕様は、全く同じプランでUA値0.6程度の一般住宅(=2025年度に義務化される断熱性能は関東エリアの基準でUA値≦0.87ですから、十分以上の性能です。)と比べても、24時間快適温度をキープする条件での年間冷暖房費を約32%削減できているのですが、断熱性能最高等級7(UA値=0.23)まで性能アップすることで、約45%も削減できる見込みとなっています!

快適性を我慢、いえ、より快適にして、さらに冷暖房コストが下がる、ということはもちろんお財布にやさしい、ということですが、同時に使用エネルギーが小さくて済む、ということで、まさにこれからの人類の責任とすべきカーボンニュートラルへの第1歩と言えるのではないでしょうか。

みなさんはこのような超断熱仕様について、どのように感じられますか?
ぜひご意見をお聞かせください。

後編へつづく >