「窓の家」+「断熱最高等級」がもたらすもの (後編)

住まいのかたち | 2024.3.26

断熱・省エネ性能が、やっと義務化されます。

2025年から、一定以上の断熱・省エネ性能がない家には建築許可が下りなくなる、ということをご存知でしょうか?
令和4年度改正建築物省エネ法による

これまでも断熱・省エネ性能目標値は制定・改訂されていますが、それはあくまで目標値であって、「義務」ではありませんでした。したがって家を依頼する側と、建てる側で、「このくらい断熱材を入れてあれば十分でしょう」というあいまいな合意で家が建てられていたケースが多かったかもしれません。
しかし、これからは車の燃費(●●km/ℓ)のように、客観的な断熱・省エネ性能の数値基準が設けられ、その基準をクリアしていないと建築許可が下りなくなります。建築主の判断だけでは通らなくなるのです。
つまり、今まで床面積を知らずに家を買う、建てる人が居なかったのと同様に、これからはその家の断熱・省エネ性能値を知らずに買う、建てる人も居なくなるということです。

ところで、車の燃費の単位「km/ℓ」と、その意味(ガソリン1ℓ当たり何km走れるか)は多くの方がご存知なのに、家の断熱性能、省エネ性能の基準がどんな計算によるどういう数値なのか、はまだ知らない方が多いかもしれません。
しかし、今後この数値が必ず示される様になるということは、その数値の意味を知っておく必要がある、ということになりますので、ちょっと硬い話になりますが、簡単に解説しておきます。

断熱性能基準=外皮平均熱貫流率(UA値)

家の断熱性能を客観的に評価するためには、車の燃費と同じように、同じ条件下での同じ計算値を基準にする必要があります。
そこで、室内外の温度差が1℃のときに、外皮(屋内と屋外を隔てる床・壁・天井や、窓・玄関ドアなどの開口部 )1㎡あたり、どのくらいの熱(W:ワット)が逃げるのか、という、外皮平均熱貫流率=UA値を統一の指標としています。
この数値が低いほど熱が逃げにくい、つまり断熱性能が高い、と言えます。
実際には家の外皮の断熱性は均一ではなく、屋根、壁、床の断熱施工や、そして使われている窓の性能によってまだらに熱は逃げていきますが、家の断熱性能指標としては、外皮全体の平均値としているわけです。
しかし、他と比べて極端に断熱性能の弱い部位があると、そこだけ冷えやすくなり、コールドドラフトや結露が起きやすくなるので、快適な家のためには全体のバランスも非常に重要なのですが、指標としてはそこまで言及しない、ということのようです。

省エネ性能基準=一次エネルギー※消費量基準(BEI値)

次に今後の家の省エネ性能の指標についてです。
いくら断熱性能が高い家でも、エネルギー効率の悪い設備機器を大量に使われては、家で使うエネルギーを削減できません。そこで、冷暖房機、照明、給湯器、そして換気設備などの生活に必要な設備機器の省エネ性能を数値化したものが「BEI値」です。
設備機器にどの様なものを使っているかを入力し、それらの使用要件(たとえば冷暖房機は季節ごとの設定温度と使用頻度)を共通とした場合に、基準となる家と比べて、使用エネルギーがどのくらい削減できているか、あるいは多くなっているのか、を数値化。基準の家より消費エネルギーが少ない場合はBEI値は1よりも小さい数字に、多い場合はBEI 値は1よりも大きな数字 となり、この数値が小さいほど、省エネ性能が高いことを表しています。

※一次エネルギー
エネルギーは、生産されてから実際に私たちエネルギー消費者に使用されるまでの間に、様々な段階、経路を経ています。大まかにみると、原油、石炭、天然ガス等の各種エネルギーが供給され、電気や石油製品等に形をかえる発電・転換部門(発電所、石油精製工場等)を経て、私たちに最終的に消費されるという流れになります。2019 年度は、日本の一次エネルギー国内供給を100 とすれば、最終エネルギー消費は68 程度でした。

建築物の省エネルギー基準で規定されるエネルギー消費量は、日本全体の低炭素化、地球全体の温暖化防止効果に直接的にする「一次エネルギー」で規定していますが、私たちが住宅・建築物の計画設計、住まい方・使い方の工夫で実現する省エネルギーは、「二次エネルギー」の削減であり、それが「一次エネルギー」に貢献するということになります。

義務化の数値基準と、窓の家の実力比較

これからの家の断熱・省エネ性能の共通指標となる、UA値、BEI値についてご理解いただいたうえで、2025年から予定されている断熱・省エネ性能義務化の基準数値と、2025年のその先に目指している数値、そして窓の家の高断熱仕様の数値とを比較してみましょう。

窓の家高断熱仕様が目指したもの。

この様に窓の家の高断熱仕様は、世の中の目指す基準値よりさらに高い数値を実現しています。地球温暖化の危機が予断を許さない今、これからの家が目指すのは、いかに少ないエネルギーで快適な温度環境をつくることができるか、であることは間違いありません。
それをどのように実現するか、にはいろいろな手法があります。
手っ取り早いのは、とにかく効率の良い機器を揃え、さらに太陽光発電や蓄電池など、再生可能エネルギーを活用し、一次エネルギーを使わずとも潤沢にエアコンを回せるようにすることです。
しかし、それはあくまで設備開発の領域であって、家づくりの本質ではない、と私たちは考えています。無印良品では、家そのものの断熱性能を最大限に上げることで、普通の設備を使っても十分に今後の義務化以上の省エネ性能を発揮できることを目指しているのです。

では、どのようにしてこの高い断熱性能を実現しているのでしょうか。

断熱材の中でも特に性能の高い発泡樹脂系の断熱材を、床下の基礎断熱の立上りに100mm、天井の断熱に180㎜、そして外壁には外張りに60㎜発泡樹脂系断熱材、壁体内には高性能グラスウールのダブル断熱、というように、外観デザインをこれまでと変えずに極端に分厚くしています。

さらに最も熱の逃げやすい窓にはトリプルガラス+アルゴンガス+樹脂サッシという、非常に断熱性能の高いサッシを採用しています。このサッシは、今一般的に使われているアルミサッシ+ペアガラスのサッシと比べて、4倍以上の断熱性能を持っているのです。
このように、あらゆる部位に高い断熱性能を持たせている窓の家の高断熱仕様は、単にUA値を低くするためではなく、家中のどこにも、冷気も結露も起きにくい、真に快適な空気環境を、設備に頼らず実現しようという、無印良品の家の強い意志の現れなのです。

最高等級7を実現する高断熱仕様について、詳しくはこちら >

これからの家のあり方としての、「窓の家・高断熱仕様」。
皆さんはどのようにお考えになられますか。

ぜひご意見をお寄せください。