家と街の間にある「物置き」について考える
住まいのかたち | 2017.6.12
前回のコラム「家と街の間には何がある?」では、暮らしの質や街並み、街とのつながりに大きな影響を与える要素なのに、家づくりではとかく後回しになりがちな「家の外まわり」についてお話をさせていただきました。同時に、「家の外まわり」についてのアンケートを実施させていただいたところ、なんと11,459名もの貴重なご意見をいただくことができました。たくさんのご参加ありがとうございました。
このアンケートの集計結果をまとめていますので、ぜひご覧ください。
アンケートのご回答内容はそれぞれたいへん興味深く、すべてのご意見を拝見させていただきました。その中でとくに印象深かったのは、「現在あるもの」と「欲しいもの」の乖離が大きかったことです。
例えば、もしこれから家を建てる場合に、駐車場・カーポートは「屋根のない雨ざらしタイプ」を選択された方は、8%しかいらっしゃらないのですが、現在すでに戸建てにお住まいの方の実態は、49%が「屋根のない雨ざらしタイプ」でした。
駐車場のタイプ
つくりたい駐車場のタイプ
また、庭の樹木や塀の種類も、「もし戸建てを建てる場合」と「現在の戸建ての実態」では、希望するものに隔たりがあるものが多いようです。その裏には、建築の法律の知識や、知見不足、コストなど様々な要因がありそうです。
どうやら、家と街の間に何があるのか、またこれからどうすべきなのかは、実はとても深くて広い課題といえそうです。
そこで、この「家と街の間」は、いくつかのテーマに分けてみなさんと一緒に考えていきたいと思います。
今回は、やはり理想と現実の乖離が大きかった「物置き」について考えてみます。
もしこれから家を建てる場合には、7割以上の方は庭に物置きを置こうと思っていないのに対し、実際に戸建てに住んでいる方の半分以上の方が物置きを置いているという回答だったのです。
「物置きを置きたくない」という思いは、「ものを持たない暮らし」というライフスタイルから来ているのかもしれません。しかし物置きの場合、あふれたものの置き場所というよりも、外に置いたほうが便利なものの収納場所という意味もありそうです。マンションやアパートに住んでいたときには必要なかったが、戸建てに住むことになって必要となってくるもの、ですね。
物置きはできれば置きたくないとネガティブに考えるのではなく、あるべき物置き像とはどんなだろう、という視点で今回は考えてみたいと思います。
その考察をするにあたり、少し実態調査をしてみました。
まず、一般的な住宅の「物置き」のイメージは、以下のような感じではないでしょうか。
市販の鋼製物置き(幅1.6m×高さ1.8m×奥行0.7m)を庭の片隅に置く、というケースです。中をのぞいてみると、①脚立、②引き出しボックス(中は剪定鋏や、ノコギリなどの日曜大工工具)、③ペット用お風呂、④すだれなどが入っています。いずれも外で使うもので、大きく汚れやすいものが多いので、やはりこれらは、家の中に置くよりもこのように外に置いてある方が使い勝手が良さそうです。
では、なぜ「物置きを置きたくない」と思う方が多いのでしょうか?
市販の鋼製物置きは、比較的安価で気軽に設置できますが、デザイン的には、こだわって建てたお気に入りの家本体となかなか相性が合いにくそうです。
また、物置きは内部に湿気がこもらないための配慮から、完全に密閉されていないものがほとんどです。一方で、物置きの扉の開け閉めは年間に数回、ということが多いので、錆びや狂いでなかなか扉が開けにくくなっているうえに、やっと開けて中をのぞくと、埃や蜘蛛の巣だらけという苦い経験がある方も多いのではないでしょうか?
このように、物置きのデザインと使い勝手に対してはネガティブな印象を持たれている方も多く、それが今回のアンケート結果の要因かもしれません。
しかし、「外で使うもの」は「外に置く」方が使い勝手は良いに決まっています。デザイン的に共感できて、かつ使い勝手の良い物置きは、ないものでしょうか。
鋼製物置きではなく、カーポート脇に、密閉性の高い収納ボックスを置いている方もいらっしゃいました。これだと置き場所の自由度も高く、埃や虫も入りにくいので、使い勝手は良さそうです。ただ、大きいものが入らないので、比較的使用頻度の高い脚立などが入りません(写真では脇に置いてあります)。
しかし実際には右の写真のような大きな物置きがあるのに、シャベルやほうきなどは外に置いてあるケースも散見されます。大きい物置きほど、経年変化で扉の開閉がしにくくなる傾向にあり、そのために使用頻度の高いほうきや脚立は外に置いておく、ということのようです。
以下は、二つとも同じお宅ですが、庭仕事など日常的によく使う洗剤やブラシ、じょうろなどはさっと取り出せるところに「置いておく」もの、使い勝手がよさそうな小ぶりの物置きにしっかり「格納」するものとを明快に分けている例です。
少し発想を変えると、「外で使う用具」は、もともと風雨に強い素材のものも多いので、必ずしも物置きなどに収納しなくても、すぐに取り出せるところに上手に置く方法もありそうです。つまり室内では最近よくある「見せる収納」です。
「用具」の寿命は、「頻繁に使う」ことで逆に長くなるとも言えます。常に使っていれば、自然にお手入れが行き届くからです。
「使用頻度の高いもの」は、すぐ使える場所に機能的に置いておくことで、より使用頻度が高くなるという好循環を生み、雨風をさえぎる工夫を少ししておけば、しまい込んでおくより劣化が進まない、ということもあり得るのです。
逆に使用頻度の高くないものは、「物置き」よりも密閉性の高い収納ボックスなどに「格納」しておく、という考え方が良いかもしれません。
このように「外で使うもの」は全て物置きに入れてしまうよりも、知恵と手間はかかるかもしれませんが、使用頻度や使う場所によって、それぞれに適した「置き方」をすることで、見た目もすっきり、使い勝手が上がるかもしれません。
みなさんは、「物置き」についてどのようにお考えですか? また、「外で使うもの」をどのように収納されていますか? 今回は、物置きについてのアンケートを通じて、ぜひ皆さんのご意見をお聞かせいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
(アンケートは終了しました。たくさんのご回答ありがとうございました。こちらでアンケート結果をご報告しています。)