都市に住む(前編)

コラム | 2014.3.4

この住まいのコラムでも何回か取り上げて来ましたが、「都市に住む」それも「戸建てに住む」という選択肢を選ぶ方がいま増えています。都市部では、どうしても地価が高く、広さのある土地を取得することがなかなかできませんが、少々の狭さを我慢すれば、そこには郊外では得がたい「利便性」が待っています。
「都市に住む」というと、「狭い」けど「便利」。とよく対比されます。都市部の土地は狭いだけでなく、多くの場合、陽が当たりにくく風も抜けにくいので、日本人の先人からの知恵である、開放的に家をつくり自然と上手に付き合いながら暮らす、快適さ・楽しさを得ることは難しいと思われがちです。
(快適温度の暮らし方:コラム「日本の家はずっと無暖房住宅でした。」参照)

土地の価格が高く、狭く、陽も風も通りにくい都市部の土地。それでも多くの人がそこに住みたくなるのはなぜでしょう。そこには、単に通勤やショッピングの利便性だけではなく、お気に入りのカフェでリラックスしたり、様々な国のレストランで料理を楽しんだり、休日には映画や美術館めぐりを気軽に楽しんだり~ という、様々な魅力的な暮らしがあります。
しかし、それらの魅力的な暮らしを得るために、狭さや陽当りの悪さを「我慢する」のでは面白くありません。「地価が高い」「狭い」「陽が当たらない」というデメリットを物理的に変えることはできませんが、それらを「解消」する家のかたちや暮らし方もあるのではないでしょうか。

では、「狭さ」について考えてみましょう。
そもそも私たちは、どういうときに家を「狭い」と感じるのでしょうか? 私たち日本人の家族4人のための住宅は、「3LDK」という間取りがスタンダードになっています。この「nLDK」という間取りの標準化は、戦後の圧倒的な住宅不足の時代に多くの人が、一刻もはやく欧米に肩を並べる暮らしを手に入れよう、という強い思いの中で生まれた知恵と努力の成果であり、近年まで日本人の暮らしの質の向上に貢献してきました。
「3LDK」とは、家族4人のうち夫婦は同じ寝室なので、これに2人の子ども部屋を足した3つの個室と、リビング・ダイニング・キッチンという間取りのことです。そして個室の大きさは、各個室で5~6畳、リビングは8~10畳、ダイニングとキッチンで6~8畳が標準となり、これにトイレ(1畳)・洗面(2畳)・浴室(2畳)と、廊下・玄関(5畳)がついて48畳(≒80m²)というのが「標準的な大きさ」となるようです。
この「nLDK」という間取りの標準化が見事に行き渡ったために、それぞれのスペースがこの「標準的広さ」を下回ると、どうも私たちは「狭い」と感じる傾向にあるようです。例えば「4.5畳の子ども部屋は狭い」とか、「リビングは10畳は欲しい」などです。
しかし、本当にそうでしょうか? 「起きて半畳、寝て一畳」という言いまわしがあるように「日常生活を送るために、本来それほど大きなスペースは要らない」のです。

例えば、4.5畳の子ども部屋。そもそも個室として仕切ってしまうから狭いこともありますが、そこで寝て、勉強して、着替えもして… と考えると、ベッドも机も本棚もクローゼットも必要になり、それらを全て置くスペースとしては確かに狭いかもしれません。でも、もし勉強や読書は家族共通の大きな空間で行なうことにすれば、「寝るだけ」の子ども部屋としては、4.5畳はむしろ広いとも言えます。
リビングはどうでしょう? そもそも「リビング」って必要なの?という議論もありますが、それはさておき、8畳のリビングを家族4人の団らんの場として、ソファとテーブルとテレビを置くと確かに狭そうです。しかし、その「リビング」の天井が高かったり、「ダイニング」や「キッチン」と隣接し、視線が通る空間が倍くらいにあれば、「狭い」と感じることはないでしょう。
物理的な平面スペースは変えられませんが、縦に、あるいは斜め上、斜め下に視線を通すことは、縦に空間(フロア)を積み上げる戸建ての家では可能かもしれません。

「nLDK」という間取り構成が、もともと平面的な繋がりから生まれたものだとすると、限られた広さの土地に建つ3階建ての戸建て住宅は、空間が「縦につながる」わけですから、「nLDK」と全く異なる暮らし方の家が出来そうです。
すでに無印良品の家は、「木の家」という2階建ての家に、大きな吹き抜けを配し、間仕切りを設けないことで、「一室空間」とする暮らし方を提唱してきました。
もっと狭い土地に建つ3階建ての場合、吹き抜けを設けて一室空間にすることは難しくても、緩やかに縦につないで、狭い空間を賢く使う新しい暮らし方が出来そうです。

「都市に住む」コラム後編では、狭くて陽の当たりにくい場所でも、明るく暖かく暮らす工夫をもう少し考え、快適に暮らす方法を具体化していきたいと思います。
皆さんのご意見もお寄せください。