集合住宅の中で部屋を住み替える

住まいのかたち | 2012.8.14

今回は、賃貸住宅の「住み替え」について考えてみます。

間取りの自由度を高めたい、そのためには余計な壁や仕切りをなくして、家族の成長や住まい方の変化にあわせて後から仕切れる家がよい、そういうコラムを何度かお伝えしたことがあります。
しかし最近のシェアハウスの人気は、個室の広さは寝るだけで充分、トイレやお風呂などは共同、キッチンやみんなで使うリビングも共同にして、広い快適な空間をみんなで共有しよう、という考え方が支持されています。

こうした家のつくり方をみていると、いろいろな世帯の人たちが住まうことができる、たくさんのバリエーションをもった部屋がひとつの大きな集合住宅にあり、その集合住宅の中で「住み替える」という考えもあるのではないか、と思います。家族の成長にあわせて家の間取りを変えるのでなく、変化にあわせて家を「住み替える」という発想です。

単身、ふたり暮らし、子供がいるファミリー、仕事場として借りる人、お店として持つ人、カフェなどの飲食店などを運営する人など、ひとつの大きな集合住宅の中に、さまざまな家族形態、さまざまな目的に対応できる大きさや間取りのタイプがたくさんあったらどうでしょうか。

例えば、貸し倉庫などもあり、普段使わないものは部屋とは別の場所にしまっておくのです。部屋は最低限必要なものだけを置ける空間にしておき、共有部分として大きなキッチンやお風呂、またホテルのようなきれいなトイレなどが備わっていれば、一人一人、または家族ごとに持たなくてもよいかもしれません。
車や自転車も共同で持った方がよいでしょう。他にも、共有で持った方がよいものはたくさんあるはずです。

さらに自分たち家族だけでなく、年老いた両親や親戚兄弟と同じ集合住宅内に住むことも可能です。大型の集合住宅であれば、医者も介護施設も持つことが可能でしょう。介護施設だけでなく、子供の世話やペットの世話など、集まって住むことによってさまざまなサービスを共同で持つことができます。
また、住人の中からそこで働きたいと希望する人もでてくるでしょう。住むところと働くところ、買い物をするところ、食事をするところを同じ集合住宅で持つことができたら、とても便利だと思うのです。

1,000人、2,000人という人が一緒に住むことで、今までの集合住宅ではできなかったことができるかもしれません。集合住宅の中で「住み替える」という考え方は、住まい方そのものをもっと変えていく可能性がとても広がるかもしれないのです。
必要な時に必要な部屋に、集合住宅の中で住み替えていくという住まい方、皆さんはどう思いますか。