ひとつながりの空間 ~部屋を仕切らないということ~

住まいのかたち | 2011.5.24

成長時代が終わり、経済も人口も下り坂の時代にいやがおうでもなりつつあります。しかし、それはある意味時代が成熟したとも言えるかもしれません。
今まで働き詰めだった時代から解放されて、やっと自分達の暮らしに向かい合い、豊かさとは何か、またどんな暮らしをしたいかということを考えられるような時代になりつつあるとも言えるのではないでしょうか。

そんな豊かな暮らしを考えた時、誰もが大きな空間をつくりたい、そう思うはずです。しかし家の大きさは限られているもの。そこで小さな家を大きく使う工夫のひとつは、「なるべく部屋を仕切らないこと」です。

仕切らない空間にはいろいろなデメリットが思い当たるかもしれません。プライバシーが守れないとか、落ち着かないとか、親が来た時どこに寝てもらおうか、とかです。しかし考えてみるとそれは暮らしの中のほんの一時のこと、そうしたことを考えずに、自分たちの暮らしを中心に考えることが大事と言えないでしょうか。

そして、もうひとつ大事なことが「ものの持ち方」です。それは、ものをなるべく持たずにすっきり暮らすことです。ものを持たないことで、ものに優先順位がうまれ、本当に必要な物を長く使う、こうした考え方が大事と言えます。
そのための工夫は大きな収納を一カ所つくることです。必要なものは全部しまって、必要な時に出して使ったら片付ける。いつも日常の空間を整えておくことは、小さな家を広く使う大事な工夫のひとつです。

できるだけあるもので間に合わす、ものを買わない、増やさない。そんな暮らしの知恵と工夫が、日々の生活を楽しく豊かにしていきます。ものの量と豊かさとは反比例すると言う人もいます。

そして始めから多くのことやものを手に入れない、最低限のものやことでスタートすることも必要です。すっきりとした空間を住みながら本当に必要な物だけを足していくことです。間取りだって、子供ができた時、また老後夫婦二人になった時、孫ができた時、その時々に考えていけばいいのです。大事なのはそうした家族の成長にあわせて変化を許容できる住まいであることなのです。

小さくても大きな空間を持つこと。どこにいても家族の気配を感じることができるような家。個々がそれぞれのことをしながらも、家族がつながっていると感じている住まいというのが理想かもしれません。

無印良品の家がずっと考えてきた「一室空間」という暮らし方。あらためてみなさんと考えてみたいと思います。
「一室空間」という暮らし方についてご意見お聞かせください。