「リノベーション」という言葉を聞いたことがありますか?

住まいのかたち | 2008.12.16

「リノベーション」という言葉を聞いたことがありますか?
中古物件を改装・改築して住むことです。多くの場合、いったん建物をはだかの状態にした上で、自分たちの暮らしの理想に合わせてデザインや間取りを自由に設定し、作り直していきます。
古くなった配管や設備を直すこともあります。もちろん、まだ使えるものはきちんと使う、という考え方が前提です。
外装を塗り直したり、壁を作り直したりすることもあります。それまで住んでいた家をリノベーションで生まれ変わらせることもありますし、中古物件を探して内外装を作り直しこともあります。

私たちは、リノベーションを合理的な住まい方の一つだと考えています。
素敵な住まいを手に入れたいとは誰もが思うこと。でも住宅はとても高い買い物です。庭付きの一戸建てに住みたい、快適な新築マンションに住みたい……理想の住まいは人それぞれです。
でも、お金に不自由しなければ希望はすんなりかなうのでしょうが、少ない資金でなるべく素敵な暮らしをしていきたいと考えたとき、中古物件をリノベーションして住む、という選択肢もあるのではないでしょうか。

ヨーロッパでは、古い建物を何代にも渡って、時代にあった内装に変えながら住み続けている住まいをよく見かけます。
アメリカでは自分の住まいをいずれ別の人に売っても価値が変らないように(あるいは価値が高くなるように)改装しながら住み続けることは普通なのです。
日本では、地震が多かったり建物が木造であるから、という理由で、土地は不変だけれども建物は建て替えて常に新しくするという考え方が一般的です。
でもちょっと待ってください。これからの時代、環境にもやさしく合理的な住まい方として、いまある建物を再利用して住む、という考え方が、日本でももっと広まってもいいはずです。

日本には1980~90年代に住宅がたくさん建てられました。いまではこれらは「中古物件」と呼ばれています。でも2007年をピークに人口は減りはじめており、1980~90年代に建てられた住宅は人口の減少に伴って、余りはじめるでしょう。これらの建物の価値をきちんと見極めて再利用すれば、実は新築物件よりも安価に、理想の住まいを手に入れられるのです。

永く使える建物の骨格を「スケルトン」と呼び、内装の壁や間取りなど後から変えられるものを「インフィル」と呼びますが、スケルトンを見極めて自在にインフィルを作り変えれば、「中古物件」は、魅力的な自分らしい住まいに生まれ変わる大きな可能性を秘めているのです。

キッチンを中心とした広いワンルームでお客をもてなすパーティをしたいという人もいれば、日当りのよいゆったりとしたバスルームでのんびりしたいという人もいるでしょう。壁一面の書棚が欲しいという人もいれば、趣味のオーディオルームを広く持ちたいという人もいるでしょう。
新築住宅を買うという発想を切り替えて、そんな自分らしい暮らしに合わせて改装して使うという考え方について、これから「みんなで考える住まいのかたち」では考えていこうと思います。

2008年12月16日配信 無印良品の家メールニュース Vol.115より