スケルトン、インフィル、家具の役割
住まいのかたち | 2008.9.23
可変性のある家づくり
建築というのはいったん作ってしまうとなかなか後から間取りをかえることはできません。
かつては20数年だった木造家屋の平均建て替え年数ですが、今では50年、更には100年以上使える住宅を目指そうという時代になってきています。
永く使うためには、家族の成長に合わせて間取りの可変性が必要になります。また設備や配管類のメンテナンス性も大事になります。
昔の日本の木造建築の作り方は、間取りの可変性が高いものでした。動かすことのできる襖や障子といった、引き戸を多く使ってきたためです。その結果、ひとつの空間が多目的に使われてきました。たとえば冠婚葬祭などの集まりごとの時に、襖や障子をとって大空間を作ることができました。また、昼間は客間や書斎であったところに夜は布団を敷いて寝るという、一日の中での変化にも対応できるように作られていました。
しかし戦後60年以上が経ち、西洋化の波の中で、建築の作り方も変わっていきました。プライバシーの確保がテーマになり、部屋数を重視した間取りの作り方が主流になってきたのです。さらにその壁が建築の構造そのものになり、後から壊すことが難しい壁になったりもしました。こうした時代を経験して今、もう一度昔の日本のように可変性の高い、永く使える家づくりをしようという時代になりつつあるのです。
スケルトン&インフィル
スケルトン&インフィルという考え方を知っていますか?
後から動かすことのできない壁や建築の骨格の部分を「スケルトン」、建築の一部ではありながら後から組み替え可能な部分を「インフィル」と呼び、この2つを分けて考えることによって間取りの自由度を高くしようということをいいます。
後から動かすことのできる壁を多く設置するには、丈夫な大空間が必要です。かつての日本の家屋のように、必要に応じて後から自由に仕切るという暮らし方はどうでしょうか。
無印良品は、家でも、マンションでも、リノベーションでも、このような暮らしの自由度を上げていくための考え方を基本にし、「永く使える、変えられる」を家づくりの基本理念としています。
家具について
家に住むのには、しつらえが必要になります。しつらえの中心は「家具」です。家具はインフィルではありません。インフィルとは、動かせるけれども、建築の一部になっているもの。それに対して家具とは日常的に移動できるものをいいます。
ちなみに、家具はイタリア語ではmobilie(モビリエ=動くもの)とも言います。まさに言葉通り、動くものという意味です。
部屋をどうしつらえていくか、それは暮らしを考えていくことにほかなりません。家具だけ選んでも、家の間取りが理想の暮らしにあったものでなければ、しつらえは思い通りにはなりません。
スケルトン、インフィル、家具といったそれぞれの役割の違いをもう一度意識して、永くつかうためには、家族の成長にあわせた可変性のある家を選ぶことが大切です。
2008年9月23日配信 無印良品の家メールニュース Vol.103より