未来につなぐ家-日本住宅の寿命、長期優良住宅について
住まいのかたち | 2009.6.16
家の寿命
今、日本の住宅が大きく変わろうとしているのをご存知ですか?
これまでの日本の家は、平均30年で壊され、建て替えられてきました。これは、アメリカの平均55年やイギリスの平均77年と比べても、非常に短い寿命です。
このことは、多くの問題を抱えています。30年で壊されるということは、30年ローンを組んでやっと払い終わったときに、壊されてしまうということです。これではせっかくの新築住宅が「資産」ではなく、ただの「負債」ということになってしまいます。
そして、家の寿命が30年ということは、子供たちが生まれ育った懐かしい我が家は、その子が30歳になったらもう存在しないということです。これはあまりに悲しくありませんか?
これでは家を建てた本人も報われませんが、地球環境も全く報われません。30年のサイクルで住宅の解体や新築が繰り返されることで、毎年1,400万トン、東京ドーム7個分(!)の容積の住宅関連産業廃棄物が捨てられているのです。
さらに建材の生産時、運搬時、加工時などに発生するCO2を考えると、短い期間で建て替えられることが、いかに大きな環境負荷となっているか考えさせられます。
量から質へ、住宅から住生活へ
戦後しばらくの間、日本は大変な住宅不足の時代でした。狭くてもなんでも、とにかく家族が一緒に暮らせる住宅の確保が最重要課題でした。質より量の時代と言っていいかもしれません。早く安く、見栄えの良い家が求められ、次々に建てられた住宅の中には確かに耐震性、耐久性に問題があるものもありました。
そしてその後の高度成長時代、多くの人が家を建てることを半ば人生の目的とし、寝る時間を惜しみ働き、建てた後もそのローンの返済のために働きづくめで、家のメンテナンスをする暇などありませんでした。
これでは、せっかく建てた家が長持ちしなくても当たり前かもしれません。それどころか、30年経って家が古くなったら、車を買い替えるように、また建て替える…それで良いと思っていた節もあります。世の中全体が使い捨て社会だったとも言えるでしょう。
ところが近年、地球温暖化問題が顕著になり、国際的にCO2発生量を抑えなければならない時代に入って、我々日本人が本来持っている「もったいない」精神が、見直されています。
もちろん住宅も例外ではありません。フロー型(消費型)住社会から、ストック型(蓄積型)住社会への大転換が求められています。
未来につながる家
そんな中、この6月4日に「良いものをつくり、きちんと手入れをし、長く大切に使う」というストック型住社会のあるべき姿を示すものとして、「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が国土交通省より施行されました。長期優良住宅に認定されるとローン金利や減税控除額、補助金などさまざまな優遇措置を受けることができるようになったのです。
この長期優良住宅として認定される家は、きちんと手入れをし続ければ200年もつと言われています。これから建てるあなたの家は、200年後の未来につながっているということです。
今から200年前と言えば、テレビドラマで人気を博した篤姫が生まれるちょっと前の江戸時代です。そのような今と全く違う時代に発展した数奇屋造りや書院造りは、現代まで受け継がれ、私たちは今もその美しさと精神性に感動します。さらに前の約400年前に建てられた桂離宮は、世界中からその素晴らしさを称えられています。
無印良品は、100年後200年後の未来に住み継がれる家とは、どんな家かを考え続けています。
単に「丈夫」なだけでは、いつかきっと壊されてしまうでしょう。
どのような住まい方を未来に継承していけば、私たちの子供、孫、ひ孫たちが幸せになれるのか。そんな視点で考えてみてはいかがでしょうか。
あなたはどんな家を未来に残したいですか。