回遊性のある間取りのメリットはなんですか?

リノベーションなんでも相談室 | 2025.7.8

ご質問

最近、回遊できる間取りという言葉を見かけるようになりました。行き止まりのない間取りは暮らしやすそうだなと思うのですが、実際どのようなメリットがあるのでしょうか

ライフスタイルや家族構成の変化にあわせて、住宅の間取りもさまざまな移り変わりを見せています。夫婦共働きが当たり前になった現代においては、家事動線の改善やそれによる時短効果が求められるようになり、回遊性のある間取りが増えてきているのかもしれません。リノベーションで実現できる回遊性のある間取りとはそもそもどのようなもので、どのように暮らしが変わるものなのでしょうか。

今回は、自身も3度のフルリノベーションの経験を持つ、マンション管理士で宅地建物取引士の”こっしー”が、回遊性のある間取りについて解説してまいります。

回遊性のある間取りとは?

まずは、回遊性のある間取りとはどのようなものなのか、というところから考えていきましょう。一般的な間取では、玄関からリビングに向かう長い廊下があり、そこから寝室や洗面室にアクセスするような、一方向の動線となっています(図1)。リビングと隣り合うキッチンも行き止まりとなっており、2人でキッチンに立っていると狭くて困るというケースも珍しくないでしょう。

図1. 一般的な間取の一方向の動線

一方で、回遊性のある間取りを見てみると、図2-(a)のような部分的に動線がつくられているものや、図2-(b)のように大きくグルっと回れるものまで、さまざまなパターンが考えられます。一般的な間取りと比べて、多様な動線を確保することができますから、なんとなく暮らしやすそうだな、という印象を受ける方も多いのではないでしょうか。

図2. 回遊性のある間取りの例

回遊性のある間取りのなかでも、図2-(b)のようなレイアウトは馴染みがないと思いますから、もう少し詳しく見てみましょう。構造的に無理のない範囲で水回りを移動させ、通常端っこに追いやられている風呂や洗面室を部屋の中心に移動させています。そうすることで、主動線と裏動線といった複数のルートを確保することができたり、玄関を開けた時にアイキャッチとなる壁を設けることができたり、リビングの中心に大きな壁面を設けることができたりと、マンションらしからぬ要素を導入することができるのです(図3)。

図3. 大きく回遊できる間取の例

回遊性のある間取りのメリット

それでは、このように回遊性のある動線をつくることで、具体的にどのように暮らしがよくなるものなのでしょうか。いくつかのポイントに絞ってご紹介いたします。

メリット(1)家事動線が向上する
たとえば図2-(a)のような「廊下→洗面脱衣室→LDK」という動線が設けられているケースでは、洗濯機を回しながらキッチンで料理をし、洗濯が終わったらすぐに洗濯物を干しに行く、というような動線ができており、家事のために行ったり来たりすることが減るのです。また、図4のように「寝室→WIC→洗面脱衣室」という動線を設ければ、洗濯・乾燥が完了したものをすぐに片付けることもできますから、毎日の家事の負担を軽減することができそうです。

図4. 寝室・WIC・脱衣室の動線

メリット(2)生活の渋滞を減らせる
家族で暮らしていると、朝の支度時間には洗面室が混みあうということも珍しくないでしょう。通常の一方向の動線の場合は、どうしても洗面室の入り口が渋滞してしまいがちですが、回遊性を持たせていれば、渋滞の無いスムーズな移動が可能になります。キッチンでも同様に、冷蔵庫に麦茶を取りに行きたくても、誰かがキッチンで作業をしていると狭くて通りにくいという小さなストレスが生じることもあります。回遊性のあるレイアウトとなっていれば、そのようなストレスとも無縁になりますね。

メリット(3)光や風が通りやすい
壁や扉で空間が仕切られてしまうと、光が届かず、風が通らない環境になってしまいます。一般的な間取では、たとえば夏場において、「キッチンが暗いし、とにかく暑いな」「脱衣室がとても蒸し暑いな」などと感じる方も多いのではないでしょうか。人や空気が通る動線が用意されていれば、家の中の温湿度のムラが小さくなり、局所的に暑い・寒いという状況を減らすことができるのです。光の入り方や風の流れが変わることで、家の中に居心地のよい場所が増えそうですね(図5)。

図5. 風が通りやすい、回遊性のある間取り

メリット(4)暮らしに「余白」や「豊かさ」が生まれる
図3のような大きくグルっと回れる住まいを想像してみてください。ひとつひとつの空間が小さく仕切られた一般的なマンションとは、まったく違う暮らし方が思い浮かぶはずです。小さなこどもがいる方であれば、こどもが歩き回る姿が浮かんでくるでしょうし、犬を飼っている方であれば、ワンちゃんが嬉しそうに駆け回る姿が想像できるでしょう。また、玄関やリビングに面してプレーンな壁があれば、そこにプロジェクターで映画を写してみたり、好きなアートを飾ってみたりと空間の演出の幅が広がりますから、より豊かに感じられる住空間になることでしょう(図6)。

図6. プレーンな壁の活用例

回遊性のある間取りの実例

最後に、言葉では伝わりにくい部分もあると思いますから、私たちが設計施工した回遊性のある間取りの実例をご覧いただきましょう。動線の設け方はご家庭ごとに特色がありますから、自分だったらどのような間取りが理想的かな、などと想像しながらそれぞれの事例を見てみてください。

実例(1)水回りを中心に配置した、大きく回れる動線
こちらのお宅では、ひとかたまりの水回りを中心に、キッチン側を通る主動線と収納がまとめられた裏動線が確保されています。キッチン側と収納側も行き来できるように設計されていますので、行き止まりがなく広がりを感じるお部屋になっています。

2025.4.8
「自分たちが住みたいのは、こういうところなんだろうな」と直感しました
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実例(2)寝室・洗面・収納がまとまった、時短動線
寝室・廊下・LDK、どこからでもアクセスしやすい場所に家事室を設けた事例です。洗面脱衣室、ウォークインクローゼット、家事用のカウンターを一か所にまとめることで、家事の負担を小さくできるような工夫をしています。

2023.3.14
生活動線を考え抜いて、回遊できる空間をつくりました
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実例(3)玄関と寝室をつなぐ、たっぷり収納のある動線
こちらでは、玄関の広い土間から、ウォークスルークローゼット、寝室をつなぐ動線を設けています。アウトドアグッズなど屋外で使うものが片付けやすくなりますし、また、空気の抜けるつくりになっているのでクローゼットがジメジメすることも無さそうです。

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今回は、回遊性のある間取りについて解説しました。あまり見慣れない間取りかもしれませんが、生活動線や空気の流れなどを具体的に考えてみると、とても合理的なつくりであることがわかります。新築マンションやリフォーム済みのマンションではお目にかかることのない間取りですから、リノベーションを行う際には、ぜひ候補の一案として検討してみてください。

無印良品のリノベーション「MUJI INFILL 0」では、暮らしやすい間取りと確かな性能を両立させた住まいづくりを行っています。物件探しから設計・施工まで、ワンストップでサービスを提供しておりますので、ご興味をお持ちの方は、リノベーションセミナーや相談会にお越しください。

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“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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