
借地権のマンションとはなんですか?
リノベーションなんでも相談室 | 2025.4.1
マンションを探すなかで、少し割安なものを見かけました。不動産屋さんからは借地権のマンションだから安いという説明を受けましたが、借地権とはどのようなものなのでしょうか
ポータルサイトやマンションの販売図面を見ると、必ず書いてあるのが「土地権利」という項目。あまり意識をしてみることもないかもしれませんが、実は、マンションを選ぶ際の重要な判断材料のひとつにもなります。借地権のマンションとは、一体どのようなものなのでしょうか。
今回は、日ごろからマンション購入のお手伝いをしている、マンション管理士で宅地建物取引士の”こっしー”が、借地権のマンションについて解説してまいります。
所有権と借地権
まずは、マンションの「土地権利」について考えていきましょう。一般的なマンションでは、建物も土地も所有者全員で共有することになります。仮に全室同じ専有面積の100戸のマンションがあったとすれば、それぞれの区分所有者が、土地も建物も1/100の持ち分を持っているというようなかたちです(図1)。日本のマンションの多くは、このような「所有権」を持つものになります。
一方で、建物は区分所有者全員で共有するのだけれど、マンションが建つ土地については借り物であるというものもあります(図2)。これが「借地権」のマンションであり、今回のテーマとなります。土地の持ち主は個人であったり、お寺さんであったり、自治体であったりとさまざまなケースがありますが、いずれにしても、借りた土地の上にマンションが建てられ、分譲されたものなのです。
無料で土地を借りられるということはありませんから、借地権のマンションの場合は、毎月管理費や修繕積立金と一緒に「借地料」も引き落とされ、全住戸分をまとめて土地の所有者に支払われます。借地権のマンションの物件情報をよく見てみると、「地代」あるいは「借地料」についての記載がなされているのです。
借地権マンションの注意点
今回のご質問にもあったように、借地権のマンションは所有権のものと比べて割安になります。ただし、借地権のマンションならではの注意点もありますから、マンション選びの際には下記のような点も意識するとよいでしょう。
注意点(1)借地期間満了後も所有権にはならない
借地権のマンションの場合、借地期間というものが設定されており、ポータルサイトなどの物件情報にも借地期間や残存期間についての記載がなされています。借地期間が満了しても、土地が自分たちのものになる(=所有権になる)ということはなく、土地所有者から権利を買い取ることをしなければ所有権にはならないのです。
注意点(2)建て替えのハードルが高い
借地権のマンションにおいては、後述する定期借地権を除いては、借地期間満了後に期間を延長する権利が認められています。ですから、建物の劣化にあわせて建て替えを行っても、そこから長く暮らしていくことはできます。ただし、建て替えを行う際には、ただでさえ難しい区分所有者間の合意形成に加えて、土地の所有者の協議により同意を得る必要があり、所有権のマンションよりも建て替えのハードルは高くなるといえます。
注意点(3)住宅ローンがつきにくい
金融機関が住宅ローンの貸付を行う際には、対象となる物件の担保評価を行います。借地権のマンションの場合、建物の持ち分はあるものの土地の持ち分はありませんから、その分の評価が下がり、所有権のものほどは高い金額を借りることができないというケースがあります。借地権の取り扱いについては金融機関によってまちまちですが、土地の所有者が自治体である場合などは比較的審査が緩いこともあるようです。
注意点(4)定期借地権の場合は期間満了後に解体される
平成4年に借地借家法が制定され、定期借地権という制度が創設されました。通常の借地権では正当事由なく更新を拒否することができず、貸し手からするといつまでたっても土地が戻ってこないリスクがあったため、更新ができないかたちの借地権が設けられたのです。定期借地権の設定された土地に建つマンションでは、期間満了後に解体し、土地を更地に変換する必要がありますから、残存期間10年のものを中古で購入した場合は、10年しか住めないということになります。購入時点では十分な残存期間があったとしても、将来売却をする際に残存期間が短くなっていれば、売却価格が大きく値下がりするリスクもありますから、定期借地権を選ぶ場合は十分な検討を行いましょう。
安さを理由に借地権のマンションを選ばない
所有権のものと比べれば心配の多い借地権のマンションですが、地域によっては借地権のマンションばかりというところもあります。住みたい場所に借地権のマンションしかないということであれば、今回解説した注意点を理解した上で、借地権のものを選ぶということでもよいでしょう。ただし、なんとなく割安だからという理由だけで借地権のマンションを選ぶのはおすすめできません。地域を限定する必要が無いのであれば、立地条件を緩和して、予算内で購入できる所有権のマンションから探しはじめるとよいでしょう。
今回は、借地権のマンションについて解説しました。将来的な建替えや敷地売却まで念頭に入れるのであれば、できれば所有権のマンションを選びたいところではありますが、長く住むことを想定していないケースでは土地権利を強く意識しなくてもよいという考え方もあります。土地部分の固定資産税がかからないなどのメリットもありますから、ご自身が住まいに求めることを整理したうえでマンション選びを行ってみてください。
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“こっしー”プロフィール
無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。