
追い焚きができないマンションもありますか?
リノベーションなんでも相談室 | 2025.3.18
リノベーションを検討するにあたり、できれば追い焚き機能のあるお風呂を採用したいと考えています。条件によっては、リノベをしても追い焚きができないマンションもあるのでしょうか
いつでもお湯を沸かし直せる追い焚き機能付きのお風呂は、最近の新築マンションであれば当たり前に採用されるものになっています。ところが、リノベーションの対象となる中古マンションにおいては、追い焚き機能が備わっていないケースも珍しくありません。リノベーションをする際には、どんなマンションでも追い焚き機能付きに変更することができるものなのでしょうか。
今回は、これまで数百の中古マンションの調査をしてきた、宅地建物取引士でマンション管理士の”こっしー”が、マンションの追い焚きについて解説してまいります。
追い焚きの仕組み
ご質問にお答えする前に、そもそも追い焚きとはどのようなものなのか、というところからお話を始めてみましょう。みなさんは「追い焚き」と聞くとなにを想像するでしょうか。おそらく多くの方は「お風呂」が頭に浮かぶでしょうし、まったくもってその通り、お風呂に張ったお湯を再度温めるための機能になります。それはそうなのですが、より正確に見てみると、お風呂というよりは給湯システムに備わった機能といえます。
図1では、メーターボックスに給湯器がある場合のお湯と水のルートを模式的に示しておりますが、お風呂に注目すると、水(青線)と給湯器からのお湯(赤線)が届けられていることがわかります。加えて、追い焚きができる場合は、お風呂のお湯を給湯器で温めて戻すための、「往き」と「戻り」それぞれの配管が必要になります(緑線)。ぬるくなったお風呂のお湯を給湯器に送り(往き)、再加熱して高温になったお湯をお風呂に戻す(戻り)という仕組みですね。一度お風呂に張った、いわば汚れたお湯と、きれいなお湯とが混ざってしまっては困りますから、このように給湯配管と追い焚き配管が明確に分けられているのです。
追い焚き無し→有りへの変更は難しい
追い焚きの仕組みについてはなんとなくお分かりいただけたかと思いますので、ここからはリノベーションで追い焚き機能を導入することができるのか、というご質問にお答えしていきます。結論からお伝えすると、「リノベーション前の時点で追い焚き機能が無い場合については、リノベーションをしても追い焚き機能を導入できない場合が多い」ということになります。もともと追い焚きがあるマンションについては、給湯・追い焚き(往き・戻り)配管のルートが確保されている状態ですからほとんどの場合で問題ありません。一方で、新築分譲時に追い焚き配管を考慮されていないものについては、新規で追い焚き配管を通すことができるか否かがポイントとなります。
図2には、もともと追い焚きをすることが想定されていない場合の模式図を示しています。メーターボックス内にある給湯器からの給湯配管が、コンクリート躯体を貫通し、室内に飛び込み、お風呂・キッチン・洗面へとつながっています。このようなケースで2本の追い焚き配管を通したい場合、コンクリート躯体に追い焚き配管用の穴を開けることができれば、追い焚き機能を導入することができます。ところが、コンクリート躯体への穴あけについては管理規約で許可されていない場合も多く、新規で穴を開けられないのであれば、追い焚きは諦めざるを得ません。もちろん、穿孔位置が指定されるなど管理規約や細則で穴あけを許可しているマンションもありますが、残念ながら多くはありません。
バルコニーに給湯器が設置されているマンションもありますが、その場合も同様で、コンクリート躯体への穴あけが認められるようであれば、追い焚き配管を新設することができます。あるいは、管理組合への確認は必要になりますが、エアコン用のスリーブ(冷媒管等を通すための穴)を追い焚き配管用に使える可能性もあります。リノベーションで間取が変わることで必要なエアコンの台数も減るということもありますから、余ったスリーブの転用ということは考えられるかもしれません。
また、追い焚きと似た仕組みで、高温差し湯型の給湯器が採用されているマンションもあります。図3のように、給湯器から高温のお湯を送り込み、お風呂を温め直す仕組みですが、追い焚きとは異なり、湯量が増えることになります。お風呂が溢れないように湯量の調整をするひと手間が増えますが、きれいなお湯が足されますので、衛生面という点では追い焚きよりも魅力的かもしれません。もともと高温差し湯が採用されている場合、給湯・差し湯の2本の配管を通す穴は開いているはずですが、追い焚きをしたい場合はさらにもうひとつ穴が必要になるのです。
追い焚きの必要性も含めた検討を。
追い焚きが絶対条件ということであれば、もともと追い焚き機能が備わっているマンションや、規約等で追い焚きのための穴あけが許可されているものを選ぶとよいでしょう。そうでないマンションでも、すでに開いている穴に追加の配管を通すことさえできれば追い焚きを導入することができるのですが、既存の穴を利用できるか否かについては、解体してみないとわからないというのが正直なところです。これからマンションを購入する方であれば、内覧する際などに「現状追い焚きがついているか」、「高温差し湯型か」などをリノベ会社の担当者や不動産屋さんに質問してみましょう。
また、最近は保温性の高い浴槽など、一度張ったお湯が冷めにくいようなユニットバスも増えています。希望の立地・広さ・予算に合致するけれど、追い焚きNGのマンションが見つかった場合などは、改めて優先順位の整理をしてみてください。賃貸アパートのお風呂のようにすぐに冷めてしまうものでなければ問題ないという結論にいたることもあるかもしれません。
今回は、マンションの追い焚きについて解説しました。共用部であるコンクリート躯体に穴を開ける場合には管理組合の許可が必要になりますから、追い焚きが欲しいからと勝手に躯体に手を加えるわけにはいきません。追い焚きを採用したいという希望が強ければ、それを前提としたマンション選びをするように意識してみてください。
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“こっしー”プロフィール
無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。