フローリングNGな物件もリノベーションできますか?

リノベーションなんでも相談室 | 2024.11.19

ご質問

現在住んでいるマンションは管理規約でフローリングが禁止されています。そのようなマンションでもリノベーションはできるのでしょうか

なんでも自由にできるイメージがあるリノベーションですが、マンションの場合には管理規約に則って工事を行う必要があります。多くの人がひとつの建物で暮らす集合住宅ですから、秩序を守るためにルールが定められているのです。管理規約でフローリングの使用が禁止されている場合には、どのように対処すべきなのでしょうか。

今回は、多くのお客様のリノベーション前提の物件探しをお手伝いしてきた、宅地建物取引士でマンション管理士の”こっしー”が、フローリングNGのマンションでのリノベーションについて解説してまいります。

管理規約の内容は、いろいろ。

まずは管理規約でどのような制限を受けるのか、というところから考えてみましょう。国土交通省が作成している「マンション標準管理規約」には、専有部分の修繕において、下記のような記載があります。

(専有部分の修繕等)
第17条 区分所有者は、その専有部分について、修繕、模様替え又は建物に定着する物件の取付け若しくは取替え(以下「修繕等」という。)を行おうとするときは、あらかじめ、理事長(第35条に定める理事長をいう。以下同じ。)にその旨を申請し、書面による承認を受けなければならない。
2 前項の場合において、区分所有者は、設計図、仕様書及び工程表を添付した申請書を理事長に提出しなければならない。
3 理事長は、第1項の規定による申請について、承認しようとするとき、又は不承認としようとするときは、理事会(第51条に定める理事会をいう。以下同じ。)の決議を経なければならない。
4 第1項の承認があったときは、区分所有者は、承認の範囲内において、専有部分の修繕等に係る共用部分の工事を行うことができる。
5 理事長又はその指定を受けた者は、本条の施行に必要な範囲内において、修繕等の箇所に立ち入り、必要な調査を行うことができる。この場合において、区分所有者は、正当な理由がなければこれを拒否してはならない。

このように、管理規約のひな型ともいえる「マンション標準管理規約」においては、設計図等の提出や理事長による承認の必要性などが明記されておりますが、詳細なルールについての記載はありません。リフォーム時の床材等の制限については、マンションごとに作成される管理規約や細則(使用細則やリフォーム細則)に明記されることになるのです。マンションによっては詳細な規定がないところもありますが、多くのマンションでは「LL-45等級を満たすこと」など、遮音等級についての規定が存在します(表1)。

表1. 遮音等級の概要

さらに厳しいマンションになると、遮音等級を満たしたうえで、近隣住戸の承諾が必要になるというところもあります。真下の住戸のみ承諾が必要だったり、自室の周囲8住戸の承諾が必要だったりと、詳細についてはマンションによって異なりますが、1件でも近隣の承諾が得られない場合にはフローリング施工ができないケースもあります。

そして、最も厳しいケースでは、今回のご質問のようにフローリングの施工が完全に禁止されているということもあります。フローリングNGのマンションにおいても、リノベーションができないということはないのですが、床材の選択についての大きな制約があるのです。

リノベ検討は、詳細なルールの確認から。

そのようなマンションでリノベーションを検討するときには、管理規約や細則の詳細を知るところから始めてみましょう。管理規約の保管場所については、マンションのわかりやすい場所(エントランスや管理室の近く)に掲示がありますから、最新の規約を確認することは難しくありません。一般的には管理人さんが窓口となって対応することになるので、まずは管理人さんに専有部分を改修する際の制限について問い合わせてみましょう。管理人さんでは詳しいことがわからない場合、管理会社の担当者などをつないでもらえますので、下記の項目についてヒアリングを行ってみてください。

確認項目(1)規約通りの運用がされているか
本来的には管理規約や細則に記載された通りの運用がなされることが望ましいものの、実際にはそうなっていないこともあります。たとえば、フローリング禁止が分譲時から規約に書かれているものの、実際は遵守されていないというケースです。規約の改定はされていないが、暗黙の了解のもと、一定の条件下でフローリング使用の許可が得られるマンションも稀に存在しますから、実際の運用がどのようになっているかについて、確認してみるとよいでしょう。

確認項目(2)例外的にフローリングが認められる可能性
フローリングの使用が原則として禁止されていても、例外的にフローリングの使用が認められる場合もあります。たとえば、喘息等の健康上の理由によりカーペットでの生活が難しい場合などは、診断書を提出することでフローリング施工の許可が得られるケースも見たことがあります。管理規約や細則にそこまでは明記されていないことも珍しくありませんから、管理人さんや管理会社の担当者等に詳しく話を聞いてみるしかありません。そのほか、原則は禁止でも、遮音性や工法などに特段の問題がなければ許可がおりるマンションもありますから、例外事項について確認してみてください。

確認項目(3)どのような床材なら使用できるか
フローリングが絶対に使用できないマンションであれば、当然ながらそれ以外の床材を選択することになります。代替の床材として許可が得らえるものと得られないものがあるでしょうから、あらかじめ確認しておきましょう。

フローリング以外の床仕上げ。

フローリングの使用についてはどう転んでも許可がおりない場合には、どのような床材を使えばよいのでしょうか。フローリング以外にもいろいろな床材がありますから、代表的なものをご紹介いたします。なお、いずれの場合も遮音二重床を利用するなど、遮音性が担保できていることを前提としてお考え下さい。

床材(1)コルクタイル
ワインの栓などで使われる、コルク樫の樹皮を圧縮加工し板状に成形した床材です。足触りの柔らかさや木質の雰囲気を楽しめるというメリットがありますが、木質の床材ということで、フローリング同様に使用の許可がおりないこともある点に注意が必要です。

床材(2)磁器質タイル
水回りなどで使われることも多い、焼き物のタイルです。木質の床材とは異なる質感があり、お部屋全体で使用すると、ホテルライクな雰囲気であったり、より高級感を感じられたりと魅力的な床材のひとつです(図1)。

図1. 磁器質タイル貼りの事例

床材(3)リノリウム
亜麻仁油・石灰岩・木粉・松脂などを混ぜてつくる天然素材です。塩化ビニル製の床材の登場によって需要が減少していたのですが、昨今の環境意識の高まりや抗菌・抗ウイルス性を持つという特徴によって再注目されています。配色やデザインの幅があることも魅力のひとつといえるでしょう(図2)。

図2. リノリウム貼りの事例

床材(4)ビニル系床材
塩ビタイルやクッションフロアなど、新築・リフォーム問わず住宅の内装材として非常によく利用されるものになります(図3)。比較的安価であることに加えて、一見するとフローリングと見分けがつかないくらい精巧な加工ができるなど、デザインの幅の広さが特徴的です。

図3. ビニル系床材(長尺シート)貼りの事例

床材(5)カーペット
掃除のしにくさなどでネガティブなイメージを持たれることもあるカーペットですが、高級感のある質感や、足触りの柔らかさ・暖かさは他の床材では実現できないものになります。素材や毛足の長さ、織り方などさまざまな種類がありますから、選ぶ楽しみもありそうです。

今回は、フローリングNGのマンションでのリノベーションについて解説しました。フローリングの施工が絶対的に禁止されているのか、例外として認められることがあるのかなど、マンションによって対応がわかれるという現実があります。ご自身の住むマンションの管理規約や細則にフローリング禁止の記載があった場合には、実際はどこまでのことが認められるのかについて確認するところから始めてみてください。結果的にフローリングの施工ができない場合でも、いろいろな代替案がありますから、リノベーション会社に相談してみてください。

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“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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