タワーマンションのリノベについて教えてください
リノベーションなんでも相談室 | 2024.10.22
タワーマンションを購入してリノベーションしたいと考えています。タワーマンションならではの制約やリノベーションの注意点はあるものなのでしょうか
マンションのなかでもとりわけ人気のあるタワーマンションですが、気がつけば築20年を超えるものも増えてきました。新築時から未改装のタワーマンションを購入するケースも今後増えていくことが予想されますが、リノベーションする際にはどのような点を気にする必要があるのでしょうか。
今回は、団地からタワーマンションまで幅広くリノベーションのお手伝いをしている、マンション管理士で宅地建物取引士の”こっしー”が、タワーマンションのリノベーションについて解説してまいります。
タワーマンションもリノベ適齢期に
都心部や湾岸地域など、最近ではいたるところに高さが60mを超える(20階建て以上に相当する)超高層マンション、いわゆるタワーマンションが立ち並ぶようになりました。1997年の建築基準法改正をきっかけにタワーマンションの建設が年々増加し、ピークとなる2007年には、首都圏だけで58棟ものタワーマンションが分譲されています(図1)。
2000年代前半に建てられたたくさんのタワーマンションは、すでに築20年を迎えていることになりますから、設備の劣化や間取の使いにくさなど、リノベーションで解決したい課題が出てきている頃ではないでしょうか。充実した共用部や幾重にわたるセキュリティなど、新築時から変わらない魅力がある一方で、専有部分の劣化については一般的なマンションと同じように進んでいくのです。実際、私たちも築20年前後のタワーマンションのリノベーションをご依頼いただくことも増えてきており、今後もこの流れは続くのだろうなと想像しています。
タワーマンションならではの制約
タワーマンションは一般的なマンションと異なる構造でつくられていることもあり、リノベーションをする際にはいくつかの制約も出てきます。高層マンション全般で共通する特徴も含めて、代表的なものを見ていきましょう。
制約(1)戸境壁がコンクリートではない
通常のマンションの場合、既存の床や天井を解体していくと、全面が鉄筋コンクリートで囲まれた空間が見えてきます(図2)。一方で、多くのタワーマンションでは、建物自体の重量を軽くする必要があることから、隣住戸との境の壁(戸境壁)についてはコンクリートが使われないのです。
タワーマンションの戸境壁は、図3のように、石膏ボードと防音材で構成されています。コンクリートの壁で仕切られていないと聞くと不安に感じるかもしれませんが、もちろん、十分な防音性や耐火性を持たせたつくりにはなっているのでご安心ください。
ただし、たとえば図3のような構成で耐火性等の認定を受けていることもあり、表面の石膏ボードをはがしとるなどの加工をすることはできません。戸境壁をやり替える際には、壁紙だけを変える、あるいは、部屋内側に改めて壁を組み直すなどの工夫が必要となります。また、コンクリートそのままのラフな質感を取り入れたい人にとっては、それができないという点も制約となってしまいます(図4)。
制約(2)階数によってはスプリンクラーが必要
タワーマンションに限った話ではありませんが、マンションの11階以上の住戸においては室内のスプリンクラー設備の設置が義務化されています。かつては諸条件を満たせば設置が免除されていたのですが、2000年代のタワーマンションの高層階においては、基本的にスプリンクラー設備が設置されています。スプリンクラーの散水が必要な範囲に行き渡ることが求められますから、リノベーション後の間取によっては費用をかけてスプリンクラーの移設をする必要があります。
また、室内から見えるのはスプリンクラーヘッドだけですが、天井の向こう側にはスプリンクラー用の配管が通っています。これを隠すために、リノベーション後にも天井を組んで仕上げることになりますから、壁のお話と同様に、コンクリートの質感を取り入れることは難しくなります。
制約(3)特殊なサッシ形状
タワーマンションでは、間取タイプによっては、ダイレクトウィンドウと呼ばれる大きな固定窓が存在することがあります。景色を存分に楽しめる素敵な窓である反面、方位によっては強い日射などが不快に感じられるかもしれません。窓の性能向上のために、リノベーションの際にインナーサッシを取り付けることも効果的ですが、特殊な窓形状の場合は、インナーサッシの取り付けができなかったり、できたとしても過分な費用がかかってしまったりと、すんなりとはいかないかもしれません。
購入前に確認すること
今回のご質問では、タワーマンションの購入とリノベーションをご検討されているということでしたから、タワーマンションを購入する前に確認すべき点についても簡単に触れておきます。まずは、これまでご説明したような、スプリンクラーの有無や窓の形状について、内覧の際に忘れずに確認しましょう。また、リノベーション工事をする際の細かな決まりがあるはずですから、管理規約や工事細則等を読み込みましょう。工事申請の時期や遮音性など施工内容の制限についても言及があるはずです。最後に、リノベーションの費用がどのくらい必要になるのかを、購入前にある程度明確にするとよいでしょう。通常のマンションよりも費用がかかることは間違いありませんから、その前提でリノベーション費用を見積もり、マンション購入価格も含めた資金計画を立てるようにしてください。
今回は、タワーマンションをリノベーションする際の注意点について解説しました。10年後・20年後には、リノベーション適齢期を迎えたタワーマンションがますます増えてくるでしょうから、タワマンリノベは珍しいものではなくなってくるのでしょう。とはいえ、通常の板状のマンションと比べるとクセのある建物ではありますから、リノベーション前提でマンション選びをする際には、なるべく早い段階でリノベーションのプロに相談することをおすすめします。
無印良品のリノベーション「MUJI INFILL 0」では、タワーマンションも含めたマンションのフルスケルトンからのリノベーションを提供しています。ご興味を持たれた方は、リノベーションセミナーや相談会にお越しください。
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“こっしー”プロフィール
無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。