洗面台のレイアウトに迷っています
リノベーションなんでも相談室 | 2024.9.25
間取りの検討をする中で、洗面台のレイアウトに迷っています。廊下に洗面台を配置するリノベーション事例もよく目にするようになりましたが、使い勝手が気になるところです。なにかヒントをいただけないでしょうか
洗面台といえば、脱衣室とセットになっているレイアウトが一般的です。マンションの場合は洗面脱衣室がコンパクトにつくられることも多く、使い勝手を改善したいと感じる方も少なくないかもしれません。リノベーションで間取りを変えていく場合には、どのようなレイアウトや工夫ができるものなのでしょうか。
今回は、自邸も3度のリノベーションを行うなどさまざまな間取りで暮らしてきた、宅地建物取引士でマンション管理士の”こっしー”が、洗面台のレイアウトについて解説してまいります。
洗面台の3つの配置パターン
洗面台のレイアウトについてはいくつかのパターンが考えられますが、ここでは「洗面脱衣室型」「洗面トイレ一体型」「独立洗面型」の3つに分類して検討してみます。まずはそれぞれのパターンの概要を見ていきましょう。
(1)洗面脱衣室型
多くの方がイメージしやすいのが、洗面と脱衣室が一緒になった洗面脱衣室型の配置だと思います。このパターンの場合は洗面台と洗濯機が同じ空間に置かれるため、汚れ物を洗面台でさっと予洗いしてから洗濯機に放り込むというような動線が可能になります。リノベーション前の状態では脱衣スペースが狭い・収納が足りないなどの不満を感じることもよくありますから、リノベーションをする際には、ゆったりとした空間をつくってあげると使い勝手が向上するでしょう(図1)。
(2)洗面トイレ一体型
ひとり暮らしの場合などは、洗面・脱衣に加えて、トイレも同じ空間に配置することがあります。私自身も過去3回自邸のリノベーションを行っていますが、実はそのうちの2回はこのパターンにしています。洗面トイレ一体型の配置の場合、ホテルライクな空間をつくれることや、余計な壁を減らすことで間取りの無駄を減らすことにも期待ができます(図2)。
(3)独立洗面型
今回のご質問でもあったように、廊下に洗面台を配置するなど、洗面台を脱衣室から独立させた事例が増えてきました。実際、私の現在の住まいも玄関近くに独立した洗面カウンターを設けております。廊下に面して洗面台を配置する際は、たとえば大きなカウンターに大きな鏡という構成にすることで、廊下部分に奥行や明るさを与えることもできます(図3)。
それぞれの特徴や向き・不向き
これら3つの配置パターンについて、もう少し細かく特徴を見ていきましょう。メリット・デメリットやどのような人に向いているか、という点で検討してみます。
(1)洗面脱衣室型
最も一般的なレイアウトですから、誰にとってもイメージしやすく、受け入れやすいというのはひとつの特徴だといえます。また、お風呂上りやドライヤーをかけた際、整髪の際などに抜け落ちた髪の毛が洗面脱衣室の限られたスペースに集中することになりますから、掃除がしやすいという点もメリットとなります。
デメリットとしては、誰かがお風呂に入っているときに洗面台が使いにくいということでしょうか。歯を磨いて寝たいのだけど、家族の誰かがお風呂に入っていると洗面脱衣室の扉を開けにくいということもありそうです。対策としては、洗面台と脱衣室の間を扉やロールスクリーン・カーテンなどで仕切れるようにするということが考えられます。こちらの事例では、普段は洗面室と脱衣室の扉は開け放った状態ですが、必要な時には脱衣室だけを閉じることができるようにしています(図4)。
水回りのことは水回りで完結させたい、というお考えをお持ちの方はこのパターンが向いています。洗面まわりには化粧品やドライヤー、髭剃りなどさまざまなものが置かれることになりますから、それらをあまり表には出したくないという方は、水回りを閉じた空間にするとよいでしょう。
(2)洗面トイレ一体型
このタイプの一番のメリットは、空間を効率的に使えることです。トイレを個室として設ける場合は、幅80cm、奥行130cm程度は必要になりますが、洗面・脱衣と空間を共有することで無駄のない配置をすることができます。また、ホテルライクな空間づくりがしやすくなるという点もひとつの特徴です(図5)。
トイレがオープンであることに抵抗がある方もいるでしょうし、複数人で暮らしている場合は、生活動線がぶつかってしまうという不便もあるでしょう。ある程度割り切ったレイアウトではありますから、向き・不向きは、このレイアウトが好きか嫌いか、という判断でよいのではないでしょうか。
(3)独立洗面型
洗面台を独立させるメリットは、合理性という言葉にまとめられるかもしれません。たとえば、従来は通路としての機能しか持ち合わせていなかった廊下に洗面カウンターを配置することで、新たな役割を持たせることができるのです(図6)。また、誰かがお風呂に入っていても気兼ねなく洗面台を使うことができますから、生活動線においても合理的だといえます。最近では手洗いの習慣が身についた方も多いでしょうから、外から帰ってきてすぐに手洗いができるというのも理にかなっているのです。
一方で、デメリットとしてまずあげられるのは、音の問題です。洗面台の鏡の前でドライヤーをかける場合、廊下などの閉じられていない空間で大きな音が鳴ることになりますから、リビングでテレビの音が聞こえにくくなるなどの影響が出ることがあります。脱衣室を十分に広くとってドライヤーをかけるスペースを用意するなど、間取りの工夫で解決するのもよいでしょう。
こまめな掃除や整理整頓が得意な方は、このパターンが向いています。洗面カウンターがいわば「住まいの顔」として目につきやすいところに配置されるわけですから、ある程度片付いた状態を維持できる方にはおすすめです。逆に、私がそうなのですが、それなりに洗面カウンターにものが出ていても気にならないという方も独立洗面型をお選びいただいてよいでしょう。きれいに整理整頓しなければいけない、という想いがプレッシャーになる方は洗面脱衣室型の方が精神的な負担が少ないかもしれません。
リノベーションならではの、さまざまな工夫
ここまでは3つのパターンに分けて解説をおこないましたが、リノベーションをするときにはその他にも動線や使い勝手を向上する工夫もできます。最後に、ご検討の材料になりそうないくつかの事例をご紹介いたします。
こちらのお宅では、洗面室からWIC、寝室へと続く動線を設けています。洗濯乾燥機から取り出した衣類をすぐ隣のクローゼットにしまうことができますから、家事動線が整っており使い勝手がよさそうです(図7)。
猫を飼育しているこちらのお宅では、廊下に面したオープンな洗面カウンターの下に猫用のトイレを設置しています(図8)。暮らしにあわせてゼロから間取りをつくれるリノベーションの魅力が表れていますね。
洗濯物はすべて室内干しをする方であれば、ランドリールームを兼ねた洗面室を設けるのもよいでしょう。こちらのお宅では、広めに確保した洗面脱衣室に2本の物干しポールをかけ、洗面カウンター下には除湿器を収納するなど、よく考えられたつくりになっています(図9)。
今回は、洗面台のレイアウトについて解説しました。普段の生活において洗面台について深く考えることはないかもしれませんが、洗面台自体、あるいは水回りの動線が改善されると、暮らしの質は大きく改善すると実感しています。既存の排水や排気のルートによっては、やりたくても実現できないレイアウトもありますから、リノベーションをご検討する際には一度プロに相談してみてくださいね。
無印良品のリノベーション「MUJI INFILL 0」では、それぞれの暮らしにあわせたゼロからの間取りづくりを行っております。ご興味を持たれた方は、リノベーションセミナーや相談会にお越しください。
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“こっしー”プロフィール
無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。