マンションの修繕積立金は上がり続けますか?

リノベーションなんでも相談室 | 2024.9.10

ご質問

築年数が経ったマンションは新しいマンションに比べて修繕積立金が高いと聞いたことがあります。築年数が経つごとに、修繕積立金は上がり続けるものなのでしょうか

建物の修繕のために使われる修繕積立金は、新築時は安く設定されているものの、経年によって金額が増えていくケースが一般的です。毎月の支出にかかわることですから、修繕積立金の負担が増え続けるのではないかと不安になってしまう方も多いでしょう。修繕積立金は、建物の経年にあわせてずっと上がり続けるものなのでしょうか。

今回は、自身も築40年を経過したマンションで暮らす、マンション管理士で宅地建物取引士の”こっしー”が、経年による修繕積立金の変化について解説してまいります。

新築から20~30年程度は負担が増えていく

修繕積立金の徴収方法としては「均等積立方式」と「段階増額積立方式」の2種類が存在しますが、ほとんどの新築マンションでは段階増額積立方式が採用されています。国土交通省がまとめた令和5年度マンション総合調査によれば、2015年以降に新築されたマンションのうち段階増額積立方式が81.2%を占めており、均等積立方式の11.0%を大きく上回る数字となっています(図1)。

図1. 修繕積立金の積立方式

国土交通省「令和5年度マンション総合調査」

段階増額積立方式では、比較的築年数が浅い時点での修繕積立金の負担を抑えられる一方で、5年目・10年目・15年目・・・というように、定期的な値上げが行われることになります(図2)。私自身も以前、新築時は5千円程度だった修繕積立金が、30年目には3万円を超える金額になっている…という計画を目にしたこともあり、修繕積立金の変動は無視できないものであると再認識させられました。

図2. 均等積立と段階増額方式のイメージ

ずっと上がり続けるわけではない

それでは、修繕積立金が新築から最期を迎えるまで上がり続けるかというと、そういうものでもありません。さきほどご紹介した図1を改めて眺めてみると、古いものほど均等積立方式の割合が高くなっていることがわかります。これは、ここ十数年で長期的な修繕計画の作成が当たり前になったという背景もあるのでしょうが、新築当初は段階増額積立方式だったとしても、築年数が経ったことでおおむね計画通りに修繕積立金が上がりきったマンションが含まれているということも一因だとも考えられます。

マンションの修繕工事としては、数年単位の短いスパンで行うもの(鉄部の塗装など)、15年程度のスパンで行うもの(大規模修繕など)、30~40年程度のスパンで行うもの(給排水管やサッシなど)が存在し、支出のピークがやってくるのが第3回目の大規模修繕や配管更新などが重なる築40年前後となります。そこまでに計画的な修繕積立金の値上げを行っておけば、その先は値上げがなされた水準で資金を積み立てることができますから、経年による修繕費用の増加を見込んだとしても、比較的安定した財政状況を保ちやすくなるはずなのです。

それでも、今後は上がるかもしれない

計画的に修繕積立金の値上げを行うことで安定した財政基盤をつくっていたとしても、この先は修繕積立金のさらなる見直しも行わなければならないかもしれません。令和5年度マンション総合調査の別のアンケート結果によれば、長期修繕計画上の修繕積立金の積立額に対して実際の積立額が不足しているマンションが36.6%となっており、計画よりも収入が増えていない(=値上げが計画通りにできていない)あるいは支出が増えている(=物価高騰の影響を受けている)などの問題が起こっていることが推測できます(図3)。

図3. 修繕積立金積立額の計画と実際の差

国土交通省「令和5年度マンション総合調査」

外部要因である工事価格の高騰に目を向けると、エネルギー価格を含む物価の高騰、働き方改革による人件費の増加など、値上げ圧力が強い状態となっています。建設工事費デフレーターは右肩上がり(=工事費が上昇)になっており、数年前に立てた計画では収支が成り立たなくなってしまうという事情が見えてきます(図4)。長期修繕計画作成のガイドラインでは5年程度ごとに計画を見直すことが推奨されていますが、インフレ局面では毎年計画の見直しを行うのもよいかもしれません。

図4. 建設工事費デフレーターの推移

修繕積立金の適正額を聞かれたときに、大雑把な目安として250円/平米という数字をお伝えすることが多いのですが、そもそもこの数字は新築時から均等積立方式が採用されていることが前提となります。実際には段階増額積立方式が採用されていることや最近の物価の高騰も考慮すると、300円/平米くらいを目安と考えても決して過剰ではないでしょう。

今回は、修繕積立金の値上げについて解説しました。経年にあわせてどこまでも高騰を続けるわけではないものの、マンションによっては慢性的な修繕積立金不足などに悩まされているところもあります。加えて、昨今の物価高騰はどのマンションにおいても影響を与えておりますから、計画的に資金を積み立ててきたマンションでも近い将来に見直しが必要になるかもしれません。マンションを選ぶ際には、修繕積立金も含めた総合的な角度からの判断が求められそうです。

無印良品のリノベーション「MUJI INFILL 0」では、リノベーション向きのマンション探しや資金計画からのサポートを行っております。ご興味を持たれた方は、リノベーションセミナーや相談会にお越しください。

みなさんからのご質問もお待ちしています!/

リノベーションなんでも相談室

“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

開催予定の「イベント・相談会・物件見学」