スキップフロアのマンションはどうですか?

リノベーションなんでも相談室 | 2024.7.16

ご質問

購入を検討しているマンションが、エレベーターが止まらない階がある、いわゆるスキップフロアの構造になっています。エレベーター非停止階のお部屋でも選んでよいものでしょうか

最近のマンションでは、エレベーターがすべての階に止まるのは当たり前といえるでしょう。ところが、少し築年数の経ったマンションでは、1階・4階・7階しかエレベーターが止まらないというような「スキップフロア」の構造をもつものもあります。風変わりなつくりのように思えるスキップフロアのマンションですが、どのような特徴を持つものなのでしょうか。

今回は、自身もスキップフロア型マンションのエレベーター非停止階で暮らす、宅地建物取引士でマンション管理士の”こっしー”が、スキップフロアのマンションについて解説してまいります。

スキップフロアのマンションとは?

まずは、あまり聞きなれないであろう「スキップフロア」について概要を見てみましょう。一般的なマンションでは、図1(a)のようにエレベーターで自分が住む階までのぼり、そこから共用廊下を歩いて自室にたどり着くこととなります。スキップフロアの場合は、たとえば図1(b)のようなつくりとなっているため、1階・4階・7階に住んでいる方は一般的なマンションと同じ道をたどりますが、その他の階に住む人は必ず階段室を通ることになるのです。3階の住人の中には、エレベーターを使わずに階段でのぼる人もいるでしょうし、4階までエレベーターを使い、1階分おりて自室に向かう人もいるでしょう。

図1. スキップフロア構造の概略図

エレベーターがどこの階に停止するかはマンションごとに異なり、たとえば私の住んでいる13階建てのマンションでは、1階・5階・8階・11階が停止階になっています。これまで私が見てきたマンションを振り返ると、停止階の間隔は概ね1~2階飛ばしということが多く、エレベーターが止まらない階に住んでいたとしても、階段を1~2階分のぼりおりすれば自室にたどり着けるケースが多いようです。なお、一括りでスキップフロアといってもさまざまなバリエーションがあるため、今回は図1(b)のような、比較的シンプルなつくりのものを念頭においてお話を進めます。

スキップフロアのメリット

スキップフロアのマンションでは、一般的にはエレベーターが止まる階の方がより人気があります。ポータルサイトなどで物件情報を見ていると、エレベーター停止階のお部屋は決まってそれが売り文句になっているので、物件情報に触れる際には少し気にしてみてください。とはいえ、エレベーター”非”停止階にも特有の魅力がありますから、ここからはスキップフロアのエレベーター非停止階のメリットについて考えていきましょう。

メリット(1)両面にバルコニーがある
一般的なマンションの中住戸であれば、バルコニーはひとつしかないことが多いでしょう。南向きのマンションであれば、南側にバルコニー、北側が共用廊下になるというのが基本的なつくりです。一方で、エレベーター非停止階の住戸の場合は、両面がバルコニーとなる場合が多いのです。図2は私のいまの住まいの間取図になりますが、北側と南側の両面にバルコニーがあることがわかります。南北両面に掃き出し窓があるので、窓を大きく開放して風を通すこともできますし、サブのバルコニーは不用品を仮置きするなどの目的でも活用することができるのです。

図2. スキップフロアの間取の一例

メリット(2)窓の近くを他人が歩かない
上記の内容と重なる部分もありますが、両側がバルコニーになっているため、窓のすぐ横を人が通らないというのもメリットのひとつといえるでしょう。一般的なマンションでは共用廊下に面した位置に1~2つの寝室が設けられることがよくありますが、窓のすぐ近くにベッドを置くのは人目が気になるから避けたいとおっしゃる方もいらっしゃいます。そのような心配なく寝室などの配置を考えることができるので、リノベーションの自由度もますます高くなりそうです。

メリット(3)プライバシーを確保しやすい
エレベーター非停止階を平面的に見てみると、ひとつの階段室に面して2つの住戸が向かい合う形状になっています(図3)。自分のお部屋の前を通るのは向かいのお部屋の住人か、同じ階段室を利用する上下の住人に限られますので、人の往来が少なくプライバシーを確保しやすいという安心感につながります。

図3. エレベーター非停止階の平面図

メリット(4)廊下の少ない間取りをつくりやすい
こちらはエレベーター非停止階に限った話ではないのですが、スキップフロアのマンションの多くはお部屋の長辺側に玄関のあるつくりになっており、図4のように室内の廊下を短くすることが可能になります。その分、ゆったりした玄関ホールを設けることができたり、十分な収納をつくることができたりと、空間を効率的に使うことができるのです。

図4. 一般的なマンションとの間取の比較

スキップフロアの注意点

今回は「スキップフロアの非停止階を選んでもいいか」というご質問ですが、結論としては非停止階を選んでも構わないと考えております。上記のようなメリットもありますし、私自身も特に不満もなく暮らしております。ただし、デメリットもないわけではありませんから、最後にスキップフロアのエレベーター非停止階を選ぶ際の注意点についてもご説明しましょう。

注意点(1)引越しなどが大変
階段を使う必要があるということは、エレベーターがないマンションの2~3階のようなものですから、引越しなどの際に苦労するということはあるでしょう。特に階段室が狭い場合などは、長さのあるものが搬入できないなどの問題が発生することもあるかもしれません。また、引越しや工事の際には運搬費用が追加でかかることもあります。

注意点(2)バリアフリーではない
ケガをした際や年を取って足腰が弱くなった際には、日々の階段の上り下りに不便さを感じることもあるでしょう。マンションのエントランスから階段室の手前まではフラットな道を歩けますが、最後に必ず階段が登場することになりますから、それが心配な方は非停止階を避けるという選択もよいのではないでしょうか。

こうして考えてみると、スキップフロアのマンションのエレベーター非停止階を選ぶことに決定的な問題はないのかもしれませんね。小さなこどもがいる家庭ではベビーカーの上げ下げや、寝てしまったこどもを抱っこしての上り下りなどで苦労することもあるでしょうが、数年間だけの問題ともいえます。私も以前はエレベーターなしの3階に住んでおり、こどもを抱えて階段を上り下りしておりましたが、振り返ればいい思い出です。どうしても階段はつらいということでなければ、スキップフロアの非停止階も気にせず選んでよいのではないでしょうか。

今回は、スキップフロアのマンションについて解説しました。スキップフロアの独特な外観は非常に魅力的ですから、中古マンションに携わる人の中でもファンは多いのではないでしょうか。一般的にはエレベーターが止まらないということで候補から外してしまう方もいると思いますが、エレベーター停止階より価格が抑えられる場合も多いですし、実は狙い目の物件といってよいのかもしれません。

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“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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