リノベーションで熱中症対策はできますか?

リノベーションなんでも相談室 | 2024.7.2

ご質問

夏を迎えると、家の中での熱中症が心配になります。リノベーションでなにかしらの対策はできるものなのでしょうか

梅雨が明けると、真夏日(最高気温30℃以上)や猛暑日(同35℃以上)が続く夏がやってきます。冬の寒さだけでなく、夏の暑さも意識した家づくりをしなければ、健康で快適な日々を送ることはできなくなってしまいます。熱中症にならないようにするために、リノベーションではどのような工夫をするべきなのでしょうか。

今回は、自身も性能向上リノベーションをしたマンションで暮らす、宅地建物取引士でマンション管理士の”こっしー”が、熱中症対策について解説してまいります。

熱中症の基本

まずは、日本の中心地である東京の夏場の温熱環境について確認してみましょう。ここ数年、極端に暑い日が増えたと感じる方もいるかもしれませんが、気象庁の統計によれば、夏の平均気温は上昇傾向、猛暑日の日数も増えていることがわかります(図1)。

図1. 東京都の夏季の気候変化

熱中症の発生状況については、令和5年の消防庁の発表を見てみます。熱中症といえば、学生が体育の授業や部活中に校庭で倒れてしまうイメージもありますが、図2を見ると、熱中症で救急搬送される方の約55%が高齢者で、家の中での発生が約40%ということがわかります。高齢者においては、体内の水分量が若年層と比べて少なく、そもそも熱中症の被害にあうリスクが高くなっています。そのうえで、積極的なエアコンの利用をせずに高温多湿な室内で過ごすことになれば、さらに熱中症リスクを高めることにつながるのです。

室温の目安としては28℃以下が推奨されており、特に暑さを感じにくい高齢者においては皮膚感覚ではなく温湿度計を用いて温度を確認することが求められています。その他、室内環境を改善する工夫として、扇風機などをつかって気流を生んだり、室内の温度ムラを無くしたりすることも推奨されています。もちろん、適度な水分・塩分の補給もお忘れなく。

家の中での、熱中症対策

熱中症の対策としては、当然ながら適切な室温を保つことが効果的です。外気温が高いと通風だけでは室温を十分に下げることはできませんから、エアコンを使い28℃以下の室温になるように運転させましょう。リビング・キッチン・寝室などの滞在時間が長い場所には温湿度計を設置し、適正な温度になっているかをこまめに確認できると理想的です。

日中と比べて外気温が下がる夜間においては窓を開けての通風も一定の効果がありますが、夏場の外気は水分を多く含んでいることに気をつけなければいけません(図3)。室温が下がっても、湿度が高くなることで熱中症リスクが高まってしまいますから、窓開け換気をする場合でも、エアコンや除湿機を併用して、40~60%程度の湿度を維持するように心がけましょう。

図3. 東京の月別絶対湿度(2021年)

リノベーションでできる対策

以上のように、家の中での熱中症対策としては、温度と湿度を適正な範囲で保つということになります。リノベーションをする際には、下記の工夫も参考にしながら、いかに効率的に温湿度コントロールを行うかという観点で間取や仕様の検討をしてみてください。実際、私の以前の住まいでも、これらの工夫を取り入れることで、約71平米のお部屋をエアコン1台で賄うことができていました。

工夫(1)日射を遮る
夏場においては、なるべく直射日光を室内に入れないことで、冷房負荷を小さくすることができます。窓の外側に「よしず」や「すだれ」を取り付けたいところですが、マンションによっては窓の外側(=共用部)へのものの設置はNGとなることもあります。その場合は、カーテンの代わりにハニカム構造のブラインド(図4)を利用したり、東西の窓には遮熱型Low-Eガラスのインナーサッシを取り付けたりと、日射を遮る工夫をするとよいでしょう。

図4. ハニカムブラインド

工夫(2)断熱性能を高める
マンションの構造体であるコンクリートは、熱を蓄えやすい性質を持っています。十分な断熱をしない状態では、日中の日射しで暖められたコンクリートが、夜になってもじわじわと室内に熱を伝えることになりますから、外気と接する壁面については断熱材を取り付け、熱の侵入を抑えることが効果的です。壁面の断熱改修は比較的大規模な工事にはなりますが、日射を遮る窓まわりの工夫とあわせて行うことで、冷房のための電気代をおさえることにもつながります。

工夫(3)風の抜ける間取をつくる
高温多湿な日本の夏では、窓から風を通して涼をとることは得策ではないかもしれませんが、風の抜けるつながりのある間取をつくることで、居室間での温湿度の差を小さくすることは期待できます。たとえば、リビングだけ適正な温湿度を維持していたとしても、寝室が蒸し暑いと睡眠の質の低下や熱中症の発生につながることもありますから、家の中のどこにいてもさらっとしていて心地よい環境をつくれるとよいでしょう。もちろん、外がジメジメしていない日があれば、窓を開けて部屋中に風を通してくださいね。

今回は、熱中症への対策について解説しました。家の中で熱中症にならないようにするためには、とにもかくにも室温と湿度のコントロールが重要です。夏場はエアコンを常時オンにしていつでも快適な空間をつくれると理想的ですから、リノベーションをする際にはそれをサポートできるような間取や性能を意識してみるとよいのではないでしょうか。

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“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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