北向き住戸は寒いのでしょうか?

リノベーションなんでも相談室 | 2023.11.21

ご質問

中古マンションを探していると、北向きの住戸に出会うことがあります。日当たりのよくない北向きのお部屋では、とくに冬の寒さが心配になります。やはり北向きの住戸は寒いのでしょうか

マンションで人気の方位といえば、なんといっても南向きですが、午前中からたっぷりと陽が入る東向きや夕方まで暗くならない西向きも捨てがたい。どの方位にもそれぞれの魅力がある中で、なんとなく敬遠されがちなのが北向きのお部屋です。日当たりの悪さなど、心配事もパッと浮かんでくる北向き住戸ですが、やはり冬の寒さには弱いのでしょうか。

今回は、これまで多種多様なマンションでのリノベーションを経験している、宅地建物取引士でマンション管理士の”こっしー”が、北向き住戸の特徴について解説してまいります。

北向き住戸のメリット

北向き住戸の懸念点を語る前に、まずはいいところに目を向けてみましょう。「なんだか暗そうだ」などの理由で避けられることもある北向き住戸ですが、下記のように、他の方位にはないメリットもあるのです。

北向きのメリット(1)紫外線の影響を受けにくい
夏場でも直射日光が入りにくい北向き住戸では、太陽からの紫外線による内装・家具などの劣化が起こりにくいというメリットがあります。フローリングの焼けや、樹脂製のスイッチプレートの黄ばみ、ファブリックの傷みの主な原因は紫外線ですから、劣化が気になる方は北向き住戸に向いているかもしれません。

北向きのメリット(2)夏の暑さに強い
太陽の光は、冬は味方となり、夏は天敵になります。室内の温度を下げたい夏季においては、窓から侵入する太陽の光をなるべく遮へいすることが肝心ですが、北向き住戸であれば、そもそも直射日光が入りにくいため、夏でも暑くなりにくいお部屋になるのです。タワーマンションなどの庇やバルコニーがない形状の建物においては、とくに夏季において北向きの魅力を感じることでしょう。

北向きのメリット(3)マンション価格が安い
新築でも中古でも、マンションの販売価格を決める際に、お部屋の方位は重要な要素となります。人気の高い南向きと比べたとき、北向き住戸は一般的に1割程度価格が下がるといわれており、とくに北向きであることが気にならない人にとってはお得な買い物になります。

北向き住戸は、寒い。

ここからは本題に入りましょう。今回は「北向きの住戸は寒いのか?」というご質問でしたが、結論としては、他の方位の住戸と比べると冬は寒いといえます。思いのほかメリットもある北向き住戸ですが、冬の寒さについては、どうしても弱点となってしまうのです。

北向き住戸のメリットとして、夏に日光が入りにくいことをご紹介しましたが、冬はこの特徴が裏目に出てしまいます。お部屋の暖かさを決める要素は、おもに「日射取得」「断熱性能」「気密性能」「暖房」の4つとなりますが、北向き住戸においては「日射取得」があまり見込めないという問題があるのです。南面の大きな窓から太陽光を取り込み、冬場でも無暖房で過ごせるようなパッシブ設計の住宅が人気を博していますが、マンションの北向き住戸はその真逆ということになります。具体的なデータとして、建築物省エネ法に基づく温熱計算の際に使用する方位係数(表1)をみてみましょう。

表1. 暖房期の方位係数

人口の多くが集中する6地域(東京・大阪など)では、南面の方位係数が0.936であるのに対して、北面は0.261となっています。暖房期においては、数字が小さいほど日射の力を借りにくいということになりますが、北面は南面に対して30%弱という心細い数字となっているのです。太陽から降り注ぐ熱エネルギーの恩恵を享受することがむずかしいため、他の方位と比べて寒いお部屋となってしまいます。

北向き住戸で快適に暮らすための工夫

お部屋の暖かさを決める4つの要素のなかで「日射取得」についてはあまり見込めないということですから、もうひとつの熱源である「暖房」を効率的に動かすことについて検討してみましょう。そこでカギとなるのが、残りの2つの要素である「断熱性能」と「気密性能」です。最近の新築マンションであれば、断熱性能・気密性能ともに高い水準であることが多いのですが、20年前のマンションでは、断熱性能が不十分であったり、窓サッシの劣化によって気密性能が低下していたりと、解決しなければいけない課題を抱えています。

断熱性能の向上のためには、壁や窓といった建物の外皮の断熱施工を十分に行う必要があり、具体的な対策としては壁面(場合によっては天井面や床面も)への断熱材の施工、開口部である窓へのインナーサッシの設置(気密性能も向上します)などがあげられます。暖房に頼らざるを得ない北向き住戸ほど、これらの性能向上を強く意識しないと、室内上部の温度差による不快感に悩まされたり(図1)、光熱費の大きな負担に苦しむことになるかもしれません。

図1. 断熱性能と上下温度差のイメージ

また、断熱性能の低い状態では、外気温の低下とともに、壁や窓の表面温度も下がっていきます。周囲が冷え切った状態で、暖房や加湿器をしっかりかけてしまうと、高温多湿の室内空気が冷たい窓や壁に触れ、結露やカビ、ダニの発生に悩まされるリスクも高まります。断熱性能を整えることはどの方位でも大切ですが、太陽の力を借りにくい北向き住戸では、とくに気をつけてみてください。

今回は、マンションの北向き住戸について解説しました。夏でも涼しいという強みを持つ北向き住戸ですが、冬を乗り越えるのは得意ではないようです。それでも、性能を整えることによって、無駄が少なく快適な空間をつくることはできますから、北向きであるという理由だけで、物件探しの検討候補から外すということはしなくてもよいかもしれませんね。

無印良品のリノベーション「MUJI INFILL 0」では、高性能で心地よく暮らせる空間を、マンションリノベーションを通じて提供しています。ご興味を持たれた方は、リノベーションセミナーや相談会にお越しください。

みなさんからのご質問もお待ちしています!/

リノベーションなんでも相談室

“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

開催予定の「イベント・相談会・物件見学」