角部屋のデメリットはありますか?

リノベーションなんでも相談室 | 2023.10.24

ご質問

マンションを購入するなら角部屋がいいなと思っています。明るく気持ちよさそうなイメージのある角部屋ですが、デメリットもあるのでしょうか

光が入りやすく風が抜けやすい、角部屋はマンションの中でも人気のある部屋位置です。マンションを買うなら絶対角部屋がいい、と強く望む方もいるかもしれません。一方で、中部屋に比べると、暑さや寒さには弱いという話を聞くこともあります。角部屋のデメリットとは、実際どのようなところなのでしょうか。

今回は、これまで2度の角部屋のマンションの購入・リノベーション経験を持つ、宅地建物取引士でマンション管理士の”こっしー”が、角部屋の特徴について解説してまいります。

角部屋は、魅力的

たくさんの窓から光が差し込み、室内を明るく照らす。窓を開ければ心地よい風が通り抜け、部屋中に新鮮な空気がいきわたる。多くの方にとって、マンションの角部屋というのは、このように魅力的に映るのではないでしょうか。もちろん、お部屋の向きや周辺環境、間取りによって差がありますが、角部屋は中部屋よりも採光・通風面で勝るというケースは多いでしょう。まずは、言わずもがなですが、角部屋の魅力を以下に簡単にまとめてみます。

 ・室内の日照時間が長くなる
 ・複数の窓を開けての換気がやりやすい
 ・個室に十分な採光を確保しやすい
 ・片一方には隣住戸がない安心感がある

角部屋は窓が多くなりますから、中住戸と比べて陽が入る時間が長くなります。方位にもよりますが、たとえば南東・南西の角部屋という条件であれば、朝から夕方までリビングの照明をつけなくてもよいくらい明るくなるかもしれません(図1)。また、マンションでは、通常は上下左右・斜めの周囲8住戸に他の世帯が暮らすことになりますが、角部屋においては隣接する住戸数が5つに減るというのも、ささやかながら安心感につながるのではないでしょうか。

図1. たくさんの陽が入る角部屋のリビング

角部屋の3つのデメリット

ここからは本題に入りましょう。たくさんの魅力がある角部屋ですが、そのデメリットについても検討してまいります。「角部屋なら快適なはずだ」と思って暮らしてみると、意外な落とし穴にはまるおそれもありますから、気をつけたいところです。

デメリット(1)家具のレイアウトが難しい
角部屋の持つ魅力と比べたら小さなデメリットともいえますが、窓が多いため家具が置きにくい場合があります。掃き出し窓などの出入りをする窓の前に家具を置くと邪魔になってしまいますし、窓のすぐ下にテレビを配置すると逆光で画面が見えにくくなることもあります。

デメリット(2)外部の騒音が聞こえやすい
鉄筋コンクリートでつくられたマンションの壁は音を通しにくいという性質がありますが、ガラスの窓についてはコンクリートほどの遮音性を持ちません。角部屋で窓が多くなる分、外部の騒音も取り込みやすくなってしまうという特徴があります。大通りや線路に面したマンションではとくに注意が必要となります。

デメリット(3)暑さ・寒さに弱い
個人的には、これが一番のデメリットだと感じています。私が初めて購入したマンションが角部屋だったのですが、当時は性能を無視したリノベーションを行ってしまったこともあり、冬の寒さや夏場の冷房の効きにくさに悩まされました。2014年に「独立行政法人建築研究所」が発表した基礎調査の結果を見ても、角部屋の暖房負荷は中部屋の1.6倍になるということがわかります(図2)。シングルガラスの窓が使われていれば、たくさんの窓が結露するというのも無視できない問題となります。

図2. 部屋位置による冷暖房負荷の違い

リノベーションで、解決できる

ご紹介した角部屋のデメリットは、大きく括ると「間取」と「性能」に分けることができますが、いずれもリノベーションによってある程度の解決が可能です。角部屋の魅力はそのままに、課題を解決する方法について見てみましょう。

解決策(1)間取の工夫
窓が多いと、窓に干渉するような背の高い家具が置きにくいという問題がありますが、それならば、背の低い家具を横並びにできるようなレイアウトをつくってみるのはどうでしょうか。余計な壁を取り払い広々とした空間をつくることで、窓の魅力をより引き立てることができます(図3)。

図3. 腰窓を活かす間取の工夫

家具や家電の配置に悩むようであれば、プレーンな白い壁を用意するというのもいいかもしれません。使い方は住まい手の自由ですから、壁一面の本棚としてもよいでしょうし、図4のようにテレビを壁掛けにしてすっきり見せるというのもよいでしょう。

図4. プレーンな白壁

解決策(2)性能向上の工夫
以前のコラム「UA値とは、なんですか?」でも解説したように、暑さ・寒さへの対策としては、壁と窓の断熱改修が有効です。外気と接する3面の壁には、リノベーションの際に新規の断熱材を追加するとよいでしょう。分譲時に断熱材が施工されていたとしても、性能としては不十分な場合が大半ですから、きちんとした対策が必要となります。

窓については、リノベーションの際にインナーサッシを取り付けることで気密性能・断熱性能を高めることができ、暑さ・寒さに強くなります。同時に、通常の環境においては窓の結露もほとんど発生しなくなりますし、外部の騒音も聞こえにくくなります。コンクリート壁(+断熱材)ほどの断熱性能・遮音性能にはならないとしても、窓の持つデメリットを大きく低減することができるのです。

今回は、角部屋のデメリットについて解説しました。私自身、2度目のマンションリノベーションでは、角部屋であることを踏まえた対策・工夫を行った結果、暑さ・寒さなどのストレスを感じることなく暮らすことができました。工事のボリュームが中部屋よりも大きくなり、必要な費用も増えましたが、やってよかったなと実感しています。角部屋の購入を検討する際は、デメリットにも目を向け、住み始めてからがっかりすることが無いようにお気を付けください。

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“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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