小規模マンションの注意点を教えてください

リノベーションなんでも相談室 | 2023.8.29

ご質問

購入を検討しているマンションがあるのですが、世帯数が20戸程度と少ないことが気になります。小規模マンションを選ぶ際の注意点はあるのでしょうか

マンション選びにおいては、立地や広さや価格などさまざまな検討項目がありますが、マンションの規模もそのひとつといえます。小規模なマンションでは、住人たちが顔見知りになり安心して暮らせる一方で、管理費などの負担が重たくなるという事実もあります。小規模なマンションを選ぶ際には、どこに気をつければよいのでしょうか。

今回は、自身も3度の中古マンション購入経験を持つ、マンション管理士で宅地建物取引士の”こっしー”が、小規模マンションの注意点について解説してまいります。

小規模マンションとは?

そもそも小規模マンションとは、どのくらいの戸数をさすのでしょうか。明確な定義は無いのですが、平成24年度に東京都が実施した「マンション実態調査」の結果を参考に、戸数について検討してみます(図1)。少し古いデータにはなりますが、マンションが林立する東京都において、一棟あたりの平均戸数は34.7戸という調査結果になっています。調査時の分類としては、「1~20戸」「21~40戸」「41~60戸」「61~80戸」「81~100戸」「101~200戸」「201戸~」「不明」となっており、平均以下の区分である「1~20戸」のマンションを、小規模として捉えてみましょう。

図1. 分譲マンションの戸数別棟数

また、図1からわかるように、棟数ベースで見ると「1~20戸」の小規模マンションが40%以上を占めており、今回のご質問者のように購入検討物件が小規模マンションということは珍しくないようです。ますます、小規模マンションを選ぶ際のポイントが気になるところですね。

ランニングコストが大きくなる

マンションを購入する際に多くの方は住宅ローンを利用しますが、毎月の支払いは住宅ローンの返済額だけではありません。マンションでは管理費・修繕積立金も必要となりますから、ローン返済額+管理費+修繕積立金が毎月の支出となるのです。小規模マンションを購入する場合に特に気をつけたいのが、管理費・修繕積立金が大規模マンションに比べて高くなるという点です。図2は、国土交通省作成の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」からの抜粋ですが、タワーマンションを除いては、規模が小さなマンション(建築床面積5,000平米未満)ほど修繕積立金の負担が大きくなることがわかります。さらに、小規模マンションでは維持管理にお金のかかる機械式駐車場が採用されているケースも多く、修繕積立金の更なる負担増につながることもあります。

図2. マンション規模別修繕積立金の目安額

図2の規模別平均値を70平米に換算した場合の毎月の修繕積立金負担額は、小規模なマンションでは約2.3万円、大規模なものでは約1.8万円ということになりますから、毎月5,000円程度は修繕積立金の差が発生することになります。国土交通省の「平成30年度マンション総合調査」によれば、管理費についても20戸以下のマンションでは平米あたり177円、101~150戸では130円ということですから、70平米に換算すると毎月3,000円以上の負担増につながります。小規模マンションでは、ランニングコストの負担が大きくなることを念頭に置いて、資金計画を立てるようにしましょう。

長期的な計画を必ず確認する

ここまで解説したように、小規模マンションであればランニングコストが大きくなることは間違いありません。逆にいうと、小規模にもかかわらずランニングコスト、特に修繕積立金が低いマンションについては一段と注意が必要となります。例えば、すべて70平米の総戸数20戸のマンションがあるとして、新築分譲時から30年間に渡り335円/平米の修繕積立金を徴収していれば、1億6,884万円の積立ができることになります。もしも同じマンションで20年に渡り200円/平米しか集めてこなかった場合、築20年時点での累計積立額は約6,720万円となります。そこから10年で、前者と同様の金額を集めようとすると、各戸42,350円(605円/平米)への修繕積立金の改定が必要になります(図3)。大幅な修繕積立金改定には反対も出るでしょうから、このモデルケースの場合では将来的な修繕費不足に陥ってしまうかもしれません。

図3. 修繕積立金改定シミュレーション

中古マンションを購入するということは、そのマンションの新築時からの歴史も含めて手に入れるということですから、過去にどのようにお金を集め、どのような修繕をしてきたのか、その結果として現在の財政状況はどのようになっているのか、ということを忘れずに確認しましょう。具体的には、共用部の修繕履歴や重要事項調査報告書を見せてもらえるように不動産仲介の担当者に問い合わせてみるとよいでしょう。それだけでなく、これからの長期的な修繕計画についても必ず確認してください。長期修繕計画を見ると、いつ修繕積立金の不足が発生するのか、それを回避する対策としてどのような修繕積立金の改定案が議論されているのか、ということが見えてきます。

どのような中古マンションを購入する場合でも、マンションの過去・現在・未来の確認はしてほしいのですが、小規模なマンションにおいては特に慎重にそれらをチェックするようにしましょう。一歩間違えると、資金計画の破綻につながってしまうかもしれません。

今回は、小規模マンションの注意点について解説しました。落ち着きや趣のある低層の小規模マンションには、大規模なものにはない魅力もあります。その魅力を維持するためには、住まい手たちのマンション管理に対する興味関心の高さも必要ということになりそうです。

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“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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