エアコンが設置できないマンションはありますか?

リノベーションなんでも相談室 | 2023.7.18

ご質問

古いマンションでは、エアコンが取り付けられない場合があると聞いたことがあります。本当にエアコンが設置できないマンションはあるのでしょうか

日本の暑い夏。エアコンなしで乗り切るのは、もはや不可能といってもよいでしょう。いまとなっては身近な存在であるエアコンですが、その昔は一家に3台も4台も設置されているものではありませんでしたから、古いマンションはエアコンをつける前提でつくられていないということもあるのかもしれません。

今回は、マンション選びでも重要な要素となる、エアコン設置の可否や制限について、マンション管理士で宅地建物取引士の“こっしー”が解説してまいります。

エアコン設置の基礎

まずは、エアコンがどのような構成になっているのか、基本的なところからみていきましょう。エアコンの主要なパーツを抜き出してみると、図1のように室内機と室外機が冷媒管でつながれ、室内機には結露した水(ドレン水)を排水するためのドレン管がつながっています。マンションの場合、建物の構造躯体は鉄筋コンクリートでつくられていますから、冷媒管やドレン管を通すための穴(エアコンスリーブ)があらかじめ開けられているというわけです。ドレン管は、図1のようにバルコニーなどに開放されている場合もあれば、キッチンなどの排水管と接続されている場合もあります。

図1. エアコンの構成

図1をもとに考えると、マンションにエアコンを設置できるか否かのポイントは、主に以下の3つにまとめられることがわかります。

・冷媒管を通すためのエアコンスリーブがあるか
・室外機を置く場所があるか
・ドレン水を処理できるか

これら3つのポイントを意識しながら、古いマンションとエアコン設置の関係について、このあと説明していきます。

古いマンションはエアコンが設置しにくい

これまで数多のマンションを見てきましたが、エアコンを1台も取り付けることができないというものにはほとんど出会ったことがありません。「エアコンが設置できないマンションはあるか」という今回のご質問への回答としては、「エアコンが全く設置できないマンションは、中古といえどもほとんど無い」ということになるでしょうか。一方で、3LDKなのに1台または2台しか設置ができないケースは、築年数の経ったマンションや団地ではよく目にしますから、そのあたりの実態をみていきましょう。

図2は、よくある「田の字型」の間取で、和室を含めたそれぞれの個室にひとつずつ、計3か所のエアコンスリーブがあると仮定しています。エアコンスリーブの数だけでいえば3台のエアコンが付けられそうなのですが、共用廊下に出っ張るかたちで室外機を置くことができないため、エアコンが付けられるのはバルコニー側の個室と和室ということになります。共用廊下に面する窓の下に室外機置場が設けられていれば3台の設置ができるのですが、古いマンションほどそのようなつくりになっていないことが多いのです。

図2. 一般的なマンションの間取

さらに、もしも図2の和室にはエアコンスリーブが無い場合には、エアコンは1台しか設置できないことになります。そのような条件の下でエアコンの設置台数を増やしたい時には、ひとつの室外機でふたつの室内機を動かすことができるマルチタイプのエアコンを使うという方法があります。また、共用廊下側の個室にもエアコンを付けたいということであれば、窓に取り付けるウィンドウエアコンという商品も存在します。

エアコンスリーブが足りないのであれば、新たに穴を開ければいいじゃないか、と考える方もいるでしょう。マンションによっては、ルールを設けてエアコンスリーブの新設を許可するところもありますが、コンクリート躯体への穴あけは絶対にNGとしているマンションの方が多い印象です。窓の一部を加工して配管ルートをつくるならOKというところもあったりしますので、中古マンションを購入してリノベーションを行いたい、という場合には、そのあたりの規約もしっかりと確認した方がよさそうです。

エアコン1台でも快適に暮らすコツ

構造や規約によって、エアコンの設置台数を増やすことができないということであれば、その条件の中でいかに快適に暮らすかを考えることになります。以前のコラム「マンションの暑さ対策はありますか?」でご紹介したとおり、リノベーションによって断熱性能を強化し、空気の流れるひと続きの空間をつくることによって、少ないエアコン台数でも快適な暮らしが実現できます。

一般的な間取りである図2では、バルコニー側の2室でエアコンを運転していると、扉さえ開けていればLDKまでは涼しくなるでしょう。ところが、廊下とLDKの間の扉は通常閉めた状態にしているでしょうから、廊下や水回りと共用廊下側の個室については空調が効かない蒸し暑い環境となることが想像に難くありません。

それならば、例えば図3のようにリノベーションしてみたらどうでしょうか。たった1台のエアコンをつけるだけで、お部屋全体が涼しくなりそうだと感じられると思います。個室や水回りの引戸を普段は開けた状態にしていれば、家中どこにいても温度差の無い快適な環境で過ごすことができそうですね。もちろん、この間取でエアコンを効率的に運転するためには、断熱・気密性能を高めるという技術的な下支えが必要ですから、性能と間取のバランスは常に意識しておくとよいでしょう。

図3. ひと続きのリノベーション例

今回は、中古マンションとエアコンについて解説しました。最近では3LDKのマンションであれば、3~4台のエアコンを設置するのが当たり前になっています。ところが、そんなにたくさんのエアコンがあるにもかかわらず、玄関や廊下、トイレは蒸し暑いという不思議な状況も珍しくありません。リノベーションの工夫次第で、少ないエアコン台数でも快適な空間がつくれますから、エアコンの増設が難しそうなマンションでも、諦めずに検討してみてください。

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“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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