暖かい家は、お得でしょうか?

リノベーションなんでも相談室 | 2022.12.13

ご質問

リノベーションについて学ぶなかで、断熱の重要性を知りました。断熱改修はお金もかかるようですが、冬でも暖かい家をつくるのは、お得といえるのでしょうか

間取りや見た目が重視されてきたリノベーションですが、このところ少しずつ性能向上に興味を持つ人が増えてきたように思います。ところが、いざリノベーションをするとなると、住んでみないと効果が実感できない断熱については、つい後回しになってしまうもの。実際、断熱改修を行った方がお得と言えるものなのでしょうか。

今回は、自身も断熱改修を行ったマンションで暮らす、宅地建物取引士でマンション管理士の”こっしー”が、断熱改修の効果について、解説してまいります。

創エネできないから、省エネを徹底

冬でも暖かい家の損得についてお話するまえに、そもそもマンションにおいてなぜ断熱が重要なのか、というところから話をはじめてみます。みなさんは、ZEH(ゼッチ)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。ZEHとは、net Zero Energy Houseの頭文字を取ったもので、省エネと創エネを掛け合わせることで、正味のエネルギー消費をゼロ以下にする住宅のことを指します。①省エネルギー性能の向上で使うエネルギーを減らす、②太陽光発電などによりエネルギーを創り出す、というふたつを実現することで、環境負荷の少ない住まいをつくっていこうという取り組みです。

戸建住宅の場合は、屋根などに太陽光パネルを設置することで②の創エネルギーが実現できるのですが、マンションの場合は各戸単位で太陽光パネルを設置するわけにもいきません。そのため、マンションで環境にやさしい住まいを実現するためには、①の省エネルギーに頼ることになるのです。ZEH-M(ゼッチマンション)にはいくつかのパターンが用意されていますが、実際に広がりを見せているのは、やはり再エネ規定のないZEH-M Orientedとなっています(表1)。

表1. ZEH-Mの種類

また、日本では、住宅建築物をつくる際に省エネルギー基準に適合させる義務がなく、全住宅ストックの約9割は性能不足の状態で建っているといわれています。2025年から新築住宅においては省エネルギー基準適合が義務化されますが、リノベーション対象となるようなマンションでは大半が性能不足ですから、断熱改修をしっかりと行いたいところです。

暖かい家の、経済的メリット

冬でも暖かい住まいをつくることは、地球環境だけでなく、もちろん家計にとってもメリットがあります。ここからは、断熱性能を高めることの経済的な価値について見ていきましょう。

(1)光熱費を抑えることができる
断熱性能の向上によって、光熱費、主に電気料金を低減することができるというのは、比較的わかりやすいですね。エネルギー白書2021によれば、家庭で消費するエネルギーの約1/4は冷暖房(冷房2.7%、暖房24.7%)によるものですから、断熱性能を高めることによって空調の電気代を抑えることができます。図1の例では、断熱改修によって年間5万円程度の光熱費を下げることができるというシミュレーション結果となりました。

図1.光熱費削減効果の一例

(2)各種補助金を受け取ることができる
2022年12月現在、「こどもエコ住まい支援事業(国土交通省)」「住宅の断熱性能向上のための先進的設備導入促進事業等(経済産業省)」など、いくつかの助成制度が発表されています。契約・工事時期や予算の消化状況によっては使えないこともありますが、国としても住宅の高断熱化を後押しする姿勢が見て取れます。断熱改修も含めた全面的なリノベーションの場合、「こどもエコ住まい支援事業」で20~30万円程度の助成が見込まれます(家族構成や施工内容等により増減します)。

(3)住宅ローンの金利優遇を受けることができる
中古マンションの購入と合わせてリノベーションをする場合、【フラット35】リノベという住宅ローン商品を利用することができます。比較的基準の緩い金利Bプランでは当初5年、基準の厳しい金利Aプランでは当初10年間にわたり金利が0.5%優遇される制度となっています。仮に5,000万円の借入れ、優遇前の金利1.5%、期間35年とすると、金利Bプランで約130万円、金利Aプランで約240万円の利息を減らすことができます。

健康維持という、暖かい家の価値

調査によれば、断熱性能の高い家に引越すことで、風邪をひきにくい・アトピー性皮膚炎の症状が出にくいなどの良い影響につながることがわかっています。慶應義塾大学の伊香賀氏の研究結果では、温暖な家で暮らすことで血圧の低下や健康寿命が延びるといった効果が認められています。以前のコラム「寒い家は、体に悪いのでしょうか?」でも触れておりますので、そちらも合わせてご覧ください。

また、このような健康維持がもたらす経済的な効果を伊香賀氏・岩前氏らの研究チームがまとめており、興味深い結果が出ています。戸建住宅の断熱改修を対象とした研究にはなりますが、高断熱・高気密化によって健康が維持されることで、中所得世帯で年間約27,000円の間接的便益(光熱費削減以外の便益)を得られるという結果が出ています。

ここまでに出てきた数字をまとめると、表2の通り、冬でも暖かい家はお得と言ってよさそうな結果となりました。今後、電気代・燃料価格の上昇も見込まれますから、断熱改修による光熱費削減効果はより大きくなることも考えられます。断熱材施工やインナーサッシの取り付けでざっくり100万円程度をかけたとしても十分に回収可能ですから、スケルトンからリノベーションをする機会があれば、断熱改修はケチらずに行うとよいでしょう。

表2. 暖かい家の金銭的メリット

今回は、冬でも暖かい家の経済的メリットについて解説しました。光熱費のようなわかりやすいものから、健康であることの価値まで幅広くご紹介しましたが、断熱改修はコストパフォーマンスがよいと断言して問題ないでしょう。ほかにも、窓が結露しにくくなることで窓掃除の手間が減るなど、今回触れなかったメリットもまだまだありそうですね。

無印良品のリノベーション「MUJI INFILL 0」では、住まい手が自由で快適に暮らせるよう、断熱性能の向上を標準的に提供しています。ご興味を持たれた方は、リノベーションセミナーや相談会にお越しください。

物件探しからリノベーションをお考えの方は、12月16日(金)より大相談会を開催します。

みなさんからのご質問もお待ちしています!/

リノベーションなんでも相談室

“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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