リノベ失敗談を聞かせてください

リノベーションなんでも相談室 | 2022.9.20

ご質問

中古マンションのリノベーションをしたいのですが、はじめてのことで不安もあります。みなさんの失敗談を聞いて参考にしたいと思います

「家は3回建てないと満足したものがつくれない」という言葉があるように、住まいづくりは簡単なものではありません。私自身も、2度の中古マンション購入・リノベーションを行いましたが、はじめてリノベーションした際には「失敗した!」と感じることも多々ありました。これからリノベーションをする方が同じ轍(てつ)を踏まないためには、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。

今回は、これまで多くの住まいづくりをお手伝いしてきた経験と、2度の自邸リノベの経験を持つ”こっしー”が、失敗しないリノベーションのコツについて解説してまいります。

「つくり過ぎ」に気をつける

リノベーションでは、間取や設備・仕様をゼロから決めることができますから、やろうと思えば大抵のことはできてしまいます。そこがリノベーションの魅力であり、厄介な点でもあります。たとえば、過去にリノベーション経験された方から、以下のようなお話を聞いたことがあります。

10年ほど前にリノベーションで小上がりをつくったが、50歳を迎えて小上がりの昇り降りがしんどくなってきた。
キッチンまわりはこだわりの造作収納をつくったが、新しく買いたいオーブンレンジがそこに収まらない。
キッチン前にカウンターをつくり、そこで食事をする計画をしていたが、物置状態になってしまっている。

いずれも、つくり過ぎてしまった失敗例といえますね。いざリノベーションをするとなると、住まい手はとことんこだわりたくなりますから、「あれもやろう、これもやろう」とたくさんの要望が湧き出るものです。つくり手がきちんと要望の整理や適切な提案ができればよいのですが、それがうまくいかないと、先ほどご紹介したような後悔の声につながるのです。つくるにしても、可変性を持たせるなどの工夫があるとよいですね(図1)。

図1. 可変性を持たせた造作棚もおすすめ

長く暮らしていく住まいですから、いま必要なものと10年後・20年後に必要になるものとは異なるはずです。時間の経過とともに、幼い子供は大人へと成長しますし、大人はだんだんと衰えていきます。働き方の変化やテクノロジーの進歩もありますから、いま、この瞬間の暮らしにフォーカスしてつくり込み過ぎてしまわないように気をつけましょう

「見た目重視」に気をつける

リノベーションというキーワードで画像検索をすると、たくさんの素敵な事例が画面に映し出されます。住宅とは思えないカフェのような空間や、レンガ調のタイルを多用したブルックリンスタイルの住まいなど、見ているだけでワクワクしてきますよね。ところが、ここにも落とし穴がありますから、実際の失敗談を見てみましょう。

雑誌を見て素敵だと思うものを寄せ集めてつくったが、自分にとって住みやすい空間ではなかった。
ホテルライクなタイル貼りの浴室をつくったが、目地の掃除に苦労している。

スクラップ帳をつくるように、好みや流行りをやたらと詰め込んでしまうと、全体として統一感がなかったり、自分たちの暮らしに合わなかったり、時代とともに古臭く感じられてしまったりと、あとから後悔することもあるでしょう。パッと見た印象が素敵だという理由で素材を選択したものの、思ったよりも手入れが大変だというのもリノベーションでよくあることです(図2)。

図2. タイル貼りのお風呂は手入れも大変

満足度の高い生活を送るために、好きなデザインで仕上げることは重要ですが、人の好みや世間の流行りは移ろうものです。衣服のようにシーズンごとに買い替えるわけにはいかないのが住宅ですから、リノベーションでは見た目はほどほどに、使い勝手や性能についてもしっかりと目を向けるとよいでしょう

「コスト重視」に気をつける

無限にお金をかけられるわけではないですから、リノベーションをする際には、常に「コスト」がついてまわります。本来は「コスト」「パフォーマンス」両方のバランスを取ることが大切なのですが、つい「パフォーマンス」はないがしろで「コスト」に意識が向きすぎてしまうものです。この点については、以下のような声があります。

工事費を抑えるため断熱改修は行わなかったが、古い無断熱のマンションなので、冬は寒く、夏は暑い。

じつは、これは私の一度目のリノベーションでの失敗談です。いま思えば、断熱改修をすれば、光熱費も下がり、エアコンの台数を減らすこともでき、風邪もひきにくくなり、医療費も減り、冬場の毎朝の窓ふきがなくなり…など、メリットがたくさんあったはずです。恥ずかしながら、当時の私はこのようなパフォーマンスの向上に目が向かず、「コストが抑えられるなら」と断熱改修はまったく行いませんでした。二度目のリノベーションではその反省を生かすことができましたが、はじめから考えておくべきだったと反省しています(図3)。

図3. 二度目のリノベーションでの断熱改修

私のケースに限らず、コストを意識するあまり、やるべき工事をやらなかったという方も多いのではないでしょうか。繰り返しになりますが、住まいはこの先何十年間も使いつづけるものです。それを踏まえて、住まいづくりに対してどのような投資をすべきか、じっくりと考えてみてください。家庭ごとに、住まいにかけられる適正な金額もあるでしょうから、ファイナンシャルプランナーなどの客観的な意見も参考にしてみてください。

今回は、実際の声を交えながら、失敗しないリノベーションのコツについて解説しました。間取のつくり方や設備・仕様の選定については、住まい手それぞれにとっての最適解がありますが、大きな考え方としては、「つくり過ぎない」「見た目にこだわりすぎない」「掛けるべきコストは掛ける」ということを意識するとよいでしょう。私自身の一度目のリノベーションでの失敗談も参考にしてみてください。

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“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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