ペアローンはありですか?

リノベーションなんでも相談室 | 2022.5.17

みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問に、趣味=中古マンションの“こっしー”がお答えする「リノベーションなんでも相談室」のお時間です。

今回お答えするご質問は、こちら。
「購入を検討しているマンションの価格が高く、ペアローンの利用も考えています。少々背伸びをした資金計画となり心配もありますが、ペアローンの利用はありでしょうか」。

マンション価格の高騰が続くなかで、借入額を伸ばすためにペアローンを検討する人も増えているかもしれません。夫婦共働き世帯が大半を占める世の中ですから、夫婦で協力してマンションを買おうと考えるのも当然のこと。一方で、ペアローン特有のデメリットもありますから、それも踏まえて借り方を選びたいものです。今回は、夫婦それぞれが住宅ローンを組む「ペアローン」について解説してまいります。

ペアローンとは?

住宅ローンを組む場合、ご夫婦であれば、「単体」「収入合算」「ペアローン」の主に3つの選択肢があります。「単体」は、夫または妻どちらか一方が主債務者となってお金を借りる方式です。「収入合算」は、「単体」同様にどちらか一方が主債務者となりますが、他方が連帯保証人となります(連帯債務者となる方式もあります)。「ペアローン」では、夫婦それぞれが主債務者となり、ローンを組みます。それぞれの特長を表1にまとめました。

表1. それぞれの借り方の特長

単体 収入合算(連帯保証型) ペアローン
契約者 夫 または 妻 夫 または 妻 夫・妻 それぞれ
諸費用 1人分 1人分 2人分
借入上限金額
住宅ローン控除 主債務者のみ 主債務者のみ 夫・妻 それぞれ
団体信用生命保険 主債務者が死亡した場合にローン全額がなくなる 主債務者が死亡した場合にローン全額がなくなる 死亡した方のローン残高は0になり、他方は残る
合算者の条件 パートなど正社員以外でも収入合算可能

※団体信用生命保険の特約や合算者の条件などは、金融機関によって異なります

3つのタイプの中でもっともたくさんのお金を借りることができるのが「ペアローン」です。夫婦それぞれの収入を使ってローン審査をすることができるので、目一杯まで借入額を増やすことが可能です。表2に、夫を主債務者、妻を収入合算者(連帯保証人)として、いくつかの年収パターンでの借入可能額をまとめましたが、いずれの場合もペアローンでの借入可能額が格段に大きいことがわかります。

表2. 借入上限額の比較

夫婦の年収パターン
(世帯年収:1,000万円)
借入可能額
単体 収入合算 ペアローン
夫:700万円 妻:300万円 5,600万円 6,800万円 7,700万円
夫:600万円 妻:400万円 4,800万円 6,400万円 8,000万円
夫:500万円 妻:500万円 4,000万円 6,000万円 8,000万円

※借入期間35年、審査金利3.5%、返済比率40%(年収400万円未満は35%)で計算
※収入合算では、収入合算者(連帯保証人)の収入の1/2を計上

ペアローンのメリット・デメリット

借入上限額が伸びることは大きなメリットですが、家計としての返済能力以上の借入ができてしまうという怖さもあります。ここからは、ペアローンのメリットとデメリットについて考えていきましょう。

メリット(1)借入額を伸ばせる
これまでのご説明の通り、夫婦それぞれの収入を見てもらえるため、借入額を伸ばすことが可能です。夫婦それぞれの与信という貴重な資産を最大限に生かして、より資産価値の高いマンションを購入することも狙えるのです。

メリット(2)2人分の住宅ローン控除を受けられる
夫婦それぞれが住宅ローンを組むので、2人分のローン控除を受けることができます。中古マンションの場合、1人が受けられる控除上限が、2,000万円(省エネ等認定住宅は3,000万円)×0.7%=140万円(同210万円)となりますが、ペアローンであれば、2人分=最大280万円(同420万円)が所得税から控除されることになります。

デメリット(1)返済能力以上の借入ができてしまう
借入額を伸ばせるというメリットの裏返しになりますが、返済能力以上の借入ができてしまうというデメリットがあります。以前のコラム「借りられるだけ借りていいのでしょうか?」でも触れた通り、「銀行が貸してくれる金額」≠「無理なく返せる金額」ですから、今後の子育てなどで家計の収支が読みにくい方は、とくに慎重に予算の検討が必要といえます。

デメリット(2)どちらか一方が亡くなっても、他方のローンは残る
住宅ローンを組む際には、団体信用生命保険に加入します(一部を除く)。主債務者に万が一のことがあった場合にローン残高が0になる仕組みですが、ペアローンの場合、たとえば夫が亡くなっても妻のローン残高は何も変わりません。夫の死亡による妻の働き方の変化・収入減少なども予想されますから、ペアローンを選択する際には、万が一に備えた計画が必要となります。

デメリット(3)離婚した場合の後処理が面倒
ペアローンを使う場合は、必然的に夫婦共有名義でマンションを持つことになります。もしも離婚した場合は、それぞれが返済をし続ける・一方が他方の持分を買い取る・夫婦共同で売却するなどの対処が必要になりますが、いずれも簡単にまとまるものではありません。

背伸びのペアローンは、避けたい

今回のご質問のなかに『少々背伸びをした資金計画』とありましたが、個人的には「背伸びのペアローン」は避けた方がよいと考えています。もちろん、レバレッジをフルに効かせて資産価値の高いマンションを購入するという考え方もありますが、目利きを間違えてしまうと、ローン返済に追われるだけの毎日になってしまいます。よほど目利きに自信がある方を除いては、地に足の着いた資金計画をおすすめします。

背伸びでなく、「賢い選択としてのペアローン」には大賛成です。夫婦ともに安定した収入があり、「単体」または「収入合算」で十分買えるけれど、よりよい金利条件や住宅ローン控除などの税制優遇を得るためにペアローンを選択するというのは合理的であると考えています。

今回はペアローンついて解説しました。マンション価格高騰によりペアローンの利用が増えるかもしれませんが、リスクを理解し、背伸びしない範囲での利用をおすすめします。無印良品のリノベーション「MUJI INFILL 0」では、資金計画から物件探し、設計・施工までワンストップでサービスを提供しています。ご興味を持たれた方は、リノベーション講座や相談会にお越しください。

持家のある方でリノベーションをお考えの方には、5月20日(金)より大相談会を開催します。

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みなさんからのご質問もお待ちしています!/

リノベーションなんでも相談室

“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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