ヴィンテージマンションが気になります

リノベーションなんでも相談室 | 2022.3.8

みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問に、趣味=中古マンションの“こっしー”がお答えする「リノベーションなんでも相談室」のお時間です。

今回お答えするご質問は、こちら。
「中古マンションのリノベーションに興味があります。とくに、歴史を感じるヴィンテージマンションと呼ばれるものが気になっています。ヴィンテージマンションを選ぶ際のポイントや注意点などはあるのでしょうか」。

新築・築浅マンションでは見られない個性的なデザインや、長い間丁寧に手入れされ続けたからこそ感じられる上品な雰囲気など、ヴィンテージマンションならではの魅力はたくさんあるものです。私自身も名のあるマンションに住んでいたこともありますから、その魅力がよくわかる一方で、築年数が経っているがゆえの注意点も多数存在します。今回は、ヴィンテージマンションを購入する際に気を付けたいポイントについて解説してまいります。

ヴィンテージマンションとは?

そもそもヴィンテージマンションとは、どのようなものを指すのでしょうか。明確な定義があるわけではないので、築年数を経てもなお高い評価をされ続けるマンション自体やマンションシリーズが、一般的にヴィンテージマンションと呼ばれています。あくまで一例ですが、白い塗り壁と青い瓦が特長的な秀和レジデンスシリーズ(図1)、圧倒的な好立地と高級感を誇るホーマットシリーズやドムスシリーズ、コープオリンピアやコープブロードウェイ(中野ブロードウェイ)を代表とする東京コープの分譲マンションなど、歴史と個性を併せ持つものがヴィンテージマンションと称されることが多い印象です。

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図1. 代表格の秀和レジデンス

今回のお話のなかでは、狭義のヴィンテージマンションとして、勝手ながら下記のような定義づけをしたうえで、選ぶ際の注意点などについてご紹介します。ちなみに、(株)東京カンテイのリリースでは築10年以上・100m²前後・坪300万円以上をヴィンテージマンションと定義づけていますが、リノベーション前提で考える方にとっては、築10年というとかなり新しい印象を受けるのではないでしょうか。

●狭義のヴィンテージマンション
・1960年代から1980年代に建てられたマンション
・管理の行き届いたマンション
・現在の中古市場での流動性が高いマンション
・特長的なデザインを有したマンション

ヴィンテージマンション選びの注意点

ヴィンテージマンションを好む人の中には「このマンションに住みたい!」とマンションやマンションシリーズをご指名で物件探しをする方もいるかもしれません。好きなマンションに住む幸せは計り知れませんから素晴らしいお考えではあるのですが、築年数が経過しているマンションを選ぶ上では、これからご紹介する注意点を頭に入れたうえで検討を進めてみてください。

注意点(1)法規的な問題はないか
時代の変化とともにマンションを取り巻く法律も変わっています。マンションを建てたときは問題がなかったけれども、現行の法律のもとでは不適格になってしまうものもありますから、それも理解したうえでマンションを選ぶ必要があります。主な項目を表1にまとめましたが、現行の法律に適合しないことで、住宅ローンが組みにくい、税制の優遇が受けられないなどのデメリットも存在します。今後銀行の見方がさらに厳しくなることで、市場流動性が低下するリスクもあるかもしれません。

表1. 法規的な問題の一例

項目 概要
耐震性 1981年5月31日以前に建築確認申請が受理されたものは”旧”耐震基準となる。
建ぺい率・容積率 建築当時からの都市計画の変更等により、現在の規定よりも建物が大きすぎることがある。
避難経路 火災時に備えた二方向避難が必要であるが、制定以前のものでは二方向の避難経路が確保されていないことがある。
敷地売却 マンションの敷地の一部(駐車場等)を売却しており、違法建築となっていることがある。

注意点(2)構造的な問題はないか
以前のコラム「古いマンションのデメリットを教えてください」でもご紹介しましたが、古いマンションではコンクリートスラブ厚が薄い、スラブ下配管(図2)でメンテナンスがしにくいといった、構造的な問題を抱えている場合もあります。そのほか、古い年代のマンションでは水まわりがコンクリートで囲まれているものもあり、お風呂の位置変更やサイズアップができないことも多々あります。

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図2. 築古マンションでよく見られるスラブ下配管

注意点(3)管理面での問題はないか
このコラムでも度々お話しておりますが、適切な修繕計画・資金の積立・修繕の実施がなされていれば、築年数の経過したマンションでも気持ちよく暮らすことができます。管理の良し悪しについてはマンションごとに大きな差がありますから、同じマンションシリーズであっても、こちらはよいがあちらはダメ、ということも当然あります。個性的なデザインを維持するために余計に修繕の費用がかかってしまうこともありますので、修繕履歴・修繕計画・財政状況などは個別にきちんと確認してください。

注意点(4)機能・性能面での問題はないか
お風呂にはバランス釜、キッチンの壁には瞬間湯沸かし器、壁や窓の断熱性能は乏しく、冬場は結露もひどい。40年以上前と現代とでは暮らし方が大きく異なりますから、ヴィンテージマンションを選ぶからには、いまの暮らしに合うようにお部屋の持つ機能・性能を刷新したいところです。いくら共用部の管理が丁寧になされていても間取や設備、断熱性能では新築に大きく劣ってしまいますから、ここはリノベーションが本領発揮するところですね。

購入するなら、長期的な視点で

ご質問者のようにこれからマンション購入を検討する方におかれましては、上記の注意点を踏まえたマンション選びをしてみてください。憧れのヴィンテージマンションに住んではみたものの、購入時には気づいていなかった問題が次々に出てきてしまい安心して暮らせない、ということになっては本末転倒です。賃貸ではなく購入して住むのであれば、20年後・30年後にこのマンションがどうなっているか、自分自身の暮らしがどうなっているか、中古マンション市場がどのように変わっていくかなど長期的な視点で物事を考えてみてください。

今回は、ヴィンテージマンションについて解説しました。長く丁寧に使われ続けているものを、時代にあわせて変えながら使い続けていく。そのような住まい選びが、ますます当たり前になるとよいですね。無印良品のリノベーション「MUJI INFILL 0」では、専門スタッフがマンション選びから設計・施工までワンストップでサービスを提供しております。ご興味を持たれた方は、リノベーション講座や相談会にお越しください。

持家のある方でリノベーションをお考えの方には、3月18日(金)より大相談会を開催します。

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みなさんからのご質問もお待ちしています!/

リノベーションなんでも相談室

“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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