リノベーションできないマンションはありますか?

リノベーションなんでも相談室 | 2020.7.14

みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問に、趣味=中古マンションの“こっしー”がお答えする「リノベーションなんでも相談室」のお時間です。

今回お答えするご質問は、こちら。
「中古マンションのリノベーションに興味があるのですが、そもそもリノベーションができないマンションもあるのでしょうか?」

普段お客さまとお話するなかでも、この質問はよくいただきます。中古マンションの購入後に、実はやりたいリノベーションができないことが発覚したら悲しすぎますものね。今回は、マンションの規約や構造に触れながら、リノベーションでできること・できないことについて解説してまいります。

リノベーション禁止のマンションはあるか?

分譲マンションの場合、「絶対に、何があっても、どんな内容でもリノベーション禁止」というケースはほとんどありません。マンションを購入すれば自分の持ち物になりますから、釘一本打たせてもらえない賃貸とは異なりますね。ただし、リノベーションを行える範囲は自分の持ち物である専有部分(室内の床・壁・天井や設備機器など)に限られ、みんなの持ち物である共用部分(躯体や窓、共用配管など)は工事が行えないということが一般的です。更には、マンションごとにさまざまなルールや構造上の制約がありますから、「リノベーションなら何でもできる」と考えるのは少し危険です。

管理規約による制約

まず考えるべきは、それぞれのマンションの管理規約です。マンションの憲法ともいわれるもので、このルールに基づいて集合住宅での生活が営まれるのです。例えば、国土交通省が作成しているマンションの標準管理規約第17条の第4項には、以下のような記載があります。

第1項の承認(注:理事長の書面による承認)があったときは、区分所有者は、承認の範囲内において、専有部分の修繕等に係る共用部分の工事を行うことができる。

実施予定のリノベーション工事について、管理組合に申請を行い、理事会の決議を経て許可を得ることができると、晴れて着工できるというわけです。マンションごとの細かな決まりについては、管理規約のほかにリフォーム細則等で定められることもあり、その遵守が求められます。規約による制約の一例を下の表にまとめます。

規約・細則によるリノベーションの制約例

躯体の穿孔 共用部分であるコンクリート躯体への穴あけは基本的に禁止されています。鉄筋を切らないような手法を用いることを条件に、追い炊きのための穴あけ等が許可されるケースもあります。
遮音性能 スプーンを落としたような些細な生活音が下の階に響かないように、遮音等級(LL-45など)を満たすことが多くの管理規約で規定されています。
床材 床の仕上げ材が規定されることもあります。例えばフローリング不可というマンションもありますが、1階のみフローリング可、喘息などの診断書があればフローリング可などさまざまな規約が存在します。
水まわりの配置 細かく規定されているケースは多くありませんが、キッチン・風呂・トイレなどの移動を制限されることもあります。
電気容量 マンション全体で引き込んでいる容量によって、各戸40Aまでなどと上限が規定されることがあります。IH調理器を使いたい場合などは注意が必要です。
ガス容量 電気同様に、各戸20号までなどと上限が規定されることがあります。ガス式の床暖房を使いたい場合などは注意が必要です。

構造による制約

マンションのリノベーションを行う際には、構造による制約も考慮する必要があります。リノベーション工事によって、建物の強度が著しく低下してしまうということは避けなければなりませんからね。構造による制約の主なポイントは、躯体と排水・排気です。

コンクリート躯体については、許可を得ている特別な場合を除き、穴を開けたり、壊したりすることはできません。建物の強度に関わりますから、当然です。なので、「窓を大きくしたい! 窓を増やしたい!」という希望は叶えることができないわけです。また、下図のようにマンションはラーメン構造と壁式構造に分けられ、壁式構造の場合には室内側にも壊してはいけない躯体壁が存在します。

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排水と排気はそれぞれ出口が決まっているため、リノベーションで間取りを変更したとしても、もともとの出口に接続しなければいけません。排水については、逆流することのないように勾配をつけて配管する必要がありますから、もとの位置から離れすぎてしまうと、床の高さを上げるなどの影響が出てきます。排気も同様にもとの出口に接続する必要がありますが、梁をまたぐようなルートは推奨できませんので、これもまた間取りをつくる上での制約となってきます。

今回は「リノベーションできないマンションはあるのか」というところから始まり、規約や構造によるリノベーションの制約について解説しました。リノベーションと聞くと、自由な間取りがつくれそうだというイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、実際にはさまざまな制約のなかで、パズルを解くように空間づくりを行うことになります。無印良品のリノベーション「MUJI INFILL 0」では、理想の暮らしに合わせた中古マンション探しからご相談いただけますので、ご興味を持たれた方は、リノベーション講座や相談会にお越しください。

みなさんからのご質問をお待ちしています!/

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“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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