第一回「少し無茶な依頼も多いです(笑)」建具づくりの現場を訪ねて|株式会社ハウテック
MUJI INFILL 0「100のこだわり」が生まれる場所 | 2026.9.14
無印良品のリノベーションを形作る、数多くの細かいこだわり。住まいのかたちで公開している「DETAIL100」では、そのこだわりの数々を一つずつご紹介しています。
今回ピックアップするのは、さらに深く掘り下げて話したい【建具】について。無印良品のリノベーションが考える建具のあり方について、そして建具製作を依頼している株式会社ハウテックさんへのインタビューを通して、「こだわりすぎ」な建具の話をお届けします。
MUJI INFILL 0が建具にこだわる理由
そもそも建具とは、扉や窓、襖など、出入り口や仕切りに使われるパーツのこと。一般的には決まったサイズで量産され、シート張りで仕上げられることが多いものです。しかし無印良品のリノベーション「MUJI INFILL 0」に使用する建具は、サイズも色もオーダーメイド。1点ずつ職人さんが塗装しています。まずは、なぜここまで建具にこだわるのかをご紹介します。

空間を仕切るパーツは重要度が高い
無印良品のリノベーションの大きな特長として挙げられるのが、個室を作らず、建具を間仕切りとして空間を仕切ることで、自由に間取りを変えられるプランが多いこと。したがって、部屋の中央部など目立つ部分に壁(間仕切り)として建具が存在することも多く、使用頻度も人目に触れる回数も増える。だから一般的な建具よりも、MUJI INFILL 0にとっては重要性が高いと言えます。
リノベーションは決まったサイズがない
決まったサイズ・素材で量産される建具は、基本的に新築や簡易リノベ用。新築は一般的に寸法が揃っているので、サイズを変える必要がありません。でもMUJI INFILL 0では、基本的に間取りを1から作るフルリノベーションを行っています。物件ごとに天井高などが違うので、ぴったりと合わせるにはオーダーメイドするしかないのです。
シンプルな内装だからこそ、美しさに気を配る
私たちが提案する住空間はあくまでも暮らしの背景なので、とにかくシンプルな内装が特長。壁面と建具のバランスをとる、塗装の壁と質感を合わせるなど、なるべく存在感を消すような作りにしています。だからこそ建具のパーツ一つひとつに至るまで、ノイズにならないよう美しさに気を配る必要があります。空間を邪魔しない工夫として、建具にこだわっています。
一物件ごとに試行錯誤。株式会社ハウテックが思う「MUJI INFILL 0の建具」
岐阜県下呂市に本社を構える株式会社ハウテック。MUJI HOUSEの細やかなオーダーに応え、一軒一軒の建具を作り上げている協力先の一つです。無印良品の建具を作るようになった経緯、そして製作している現場の声などを、無印良品のリノベーション担当者も交えて話してみました。

話したのはこの3人
株式会社ハウテック 西日本営業部 特需グループ グループ長 小林昌親さん
株式会社ハウテック 西日本営業部 特需グループ スーパーバイザー 杉山雄一さん
無印良品のリノベーション 工事部責任者 川上幸一郎
――工場を見学させていただきましたが、リノベーションの建具というのはハウテックにとってどういった位置付けなのでしょうか。

レーンに乗った建具の最終的な計測は人の手で
小林さん
弊社は住宅メーカー様のOEM生産が主体ですので、製品の仕様をデータ化し、品名と納期など必要なデータが揃えば生産可能なシステムで動いています。品質と技術力と生産効率を追及することで、多くのお客様に長期的な信頼関係を築いてまいりました。そのような中で、MUJI HOUSE様がデザインに重きを置かれる姿勢に、新たな視点と学びを与えていただきました。
杉山さん
新築の場合はハウスメーカーさんとのやりとりの中で、材料も“このメーカーのこれを使ってください”という指示があったり、支給されることがほとんどです。でもリノベーションの場合は、いただいた平面図から何が必要かを拾い出し、材料から探していくものですから。経験がないことばかりだったので、非常に勉強になりました

表面が平滑になっているか目視と手触りで確認しながら
川上
弊社の設計担当者は設計に熱い思いを持っていますが、施工のしやすさまではなかなか考慮するのが難しいんですよね。だから時には少し無茶なリクエストもありますが、ハウテックさんは実現に向けて試行錯誤してくださるので、本当に助かっています

鋳造品をぴったりはめ込むため、職人さんがノミで削っていく
――MUJI INFILL 0の建具を作っていただくようになるにはどういった経緯があったのでしょう?
川上
3年ほど前、無印良品のリノベーション事業を拡大していくにあたって、関西で建具を作ってくださる会社を探していたんです。でもなかなか引き受けてくださるところがなく、片手では足りない数の会社に断られました。ここがダメならもう塗装は諦めてシート張りにするしかない、と思ってお声がけしたのがハウテックさんだったんですよね
小林さん
お声がけいただいたタイミングが、ちょうど我々が所属する特需グループが動き始めたところだったんです。今までの新築戸建の商品だけではなく、いわゆる“特需”案件の受注拡大に向けて活動していたところに、川上さんからご相談があって。リノベーションもこれから需要が増えると言われていた時期でもあったので、挑戦してみよう!という感じでした

一つひとつ手作業で梱包
川上
戸建とリノベーションでかなり違いますよね
杉山さん
全く違いますね。特にMUJI HOUSEさんはデザインや塗装といった他にはないこだわりも多いですし、今でも一物件ごとに“これはどう納めようか”と悩む箇所があります。型にはまっていない分、臨機応変に対応していく必要があって、オーダーメイドの難しさを感じますね
川上
いつも無茶を言ってしまいすみません……(笑)
小林さん
いえいえ、MUJI HOUSEさんと培った経験でかなり自信がつきました(笑)。それこそ建具はシート仕様が増えて、塗装の建具は減少傾向にありましたが、MUJI HOUSEさんから塗装の建具のお引き合いをいただいたことでそのラインも活気を取り戻しました。ほかにも框戸のダボ(パーツをはめ込む凹凸部分)や接着剤の量など、一から考えて作ったものばかりです。長年培ってきた技術を創意工夫しながら活用できるので、弊社としても嬉しいことです

復活した塗装レーン
ーーそういった少し無茶な注文に対して、工場で働いている現場のみなさんはどういった反応をされていますか?
小林さん
実は実際に手を動かしている社員たちの方が、とても積極的に取り組んでいるんです。難しい依頼が来ても、なんとか実現できないかと真剣に考え自主的に試行錯誤してくれるので、私の方が驚かされます

1点ずつ均等に色がつくよう塗装していく
川上
今日工場を見学させていただいて、みなさんの熱意を肌で感じられました。忙しい中で何度も試験したり、専用の道具をオリジナルで作ったり。本当にありがたいですし、こんなふうに応えてくださって嬉しいです
杉山さん
結局みんなものづくりが好きなんでしょうね。効率重視ではないMUJI HOUSEさんからの依頼は、社員たちも嬉しいのだと思います

細い箇所へ接着剤を塗布できる道具は、工場の職人さんオリジナル
無印良品のリノベーションは、このように現場の方の努力や、知識や経験から積み上げられたさまざまな技術によって成立しています。
連載中の「DETAIL100」では、そのこだわりの数々を一つずつご紹介していますので、ぜひ合わせてご覧ください。

