ドアノブについて-ありそうでなかった”普通”のドアハンドルです
寄稿・インタビュー | 2007.10.1
ありそうでなかった”普通”のドアハンドルです。
「窓の家」の真っ白な建具にはアルミ製の端正なドアハンドルが付いています。このドアハンドルの製作を担当したアトリエユニオンの須藤慶一さん曰く。
「これは、ありそうでなかった形です」。
今回、無印良品が、建築金物の製品開発で定評のあるアトリエユニオンとのコラボレーションで開発したアイテムは、ドアノブが2点を含め、トイレのペーパーホルダーやフックなど全16種類。それらの建築パーツは「窓の家」の標準装備になっています。
私たちは、住まいの中に取り付けられた同種類のパーツの、質感やデザインの共通項を、無意識のうちに関連づけてとらえ、日常生活を送っています。そこに調和があると、整ったハーモニーを持つ心地良い環境と感じるのです。
だから「窓の家」は、ディテールの整合性にも心が配られました。ドアハンドルやフック、ペーパーホルダーのデザインや質感を揃えて設えたのも、そうした配慮から。
「ドアのレバーハンドルは、通常は2回くらいの試作で完成します。しかし無印良品から求められる品質のレベルは高く、今回はその”普通の”形をつくりあげるまで試作を5、6度も繰り返しました。それがありそうでなかった形のわけ。これまでになかったものをつくりあげた満足感がありますね」と須藤さん。
プロの目からも「このまま高級ホテルで使われても不思議ではない使用感」という感想が。
「日常、意識しないで触れているドアノブなどのフォルムや質感を研ぎ澄まし、その本当に良いモノを使い続けることが、本質的に暮らしを豊かにしていくのだと思います」。
やっと完成したフォルムには普遍性が宿り、ドアノブを握るとすっと指が吸い付くような自然な感触が感じられます。日本人には手触りで品質を判断し、自分にふさわしいモノを察知する能力があると言われています。例えば目を閉じて、たくさんの指輪の中から自分の結婚指輪を探し当てることも。
「現場では、建築金物は結婚指輪をつくるのと同じ気持ちでつくるものと言われています。大事に長く使ってほしいという私たちの気持ちを託した自信作です」。
2007年10月発行 無印良品の家カタログより