他人の家をのぞき見(4) コンクリート造の注文住宅
初心者が家を買う | 2010.8.31
男性・独身。30歳代後半。 私が「実際に家を購入するまで」の顛末記を連載することになりました。 アタマの中で考えているだけではラチがあかないので、他人が買った物件を見に出かけます。 いずれ、他人の家ではなく、自分の家の候補を見に行かなくては…。 |
そうなんですよね…。私もそれは感じました。Hさん夫妻は、一般的な感覚からすると、「かなり家にお金をかけている」と思います。ただ、Hさん夫妻が、いわゆる「お金持ち」かというと、そうでもありません。これは、Hさん夫妻の考え方によるものだと思います。「自分たちが満足できる家に住みたい。そのためには、他のことにかかるお金を削ってでも…」という考え方です。
Hさん夫妻も、当初の予算よりはかなり多くの額を、この家を建てることに費やしたそうです。また住宅ローンも、夫であるHさんひとりでは、銀行から予算額を借りることができず、夫婦の共同名義でローンを利用したそうです。
何にお金を使うか、というのは、人それぞれだと思います。ただ、私個人の話をすると、Hさん夫妻ほどには、とてもじゃないが、予算がありませんので…、Hさんの家がどれほど自分の家づくりの参考になるかというと…、難しい部分もあるんですが、一方で非常に参考になった部分もあるんですよ。
コンクリート造で、広い空間が実現できる?
さて、前回の続きです。まずはHさん夫妻の家の間取りについてです。
Hさんが設計士に設計を依頼するにあたって、条件として挙げたのが、
○ 外壁も部屋の壁も、白壁にする
○ 一室空間にする
○ シンプルで飽きないものにする
ということだそうです。このうち、「一室空間」と「シンプルで飽きない」というテーマは、個人的にも興味深いものです。
Hさん夫妻の家は、4階建てです。間取りは、こんな感じです。
1階にはキッチンを除く水まわりを集めてあります。また、フリースペースは収納のために使っています。1階のフリースペースは、さらに半地下の収納スペースにも繋がっています。
2階は、リビングダイニングルームです。テーブル、ソファ、テレビなどが置かれています。2階は1階よりも床面積が広くなっています。2階は階段部分以外に壁を設けず、一室空間になっています。
3階はほとんど床を設けず、壁も腰までの高さにしています。その結果、2階のリビングダイニングルームは、天井高が4mの吹き抜けになっています。3階のフリースペースにはデスクを置き、家でも仕事ができるようにしています。
4階は寝室です。このフロアだけ、鉄骨を使っているそうです。寝室は3方向にぐるりと窓を設けたかったから、という理由だそうです。こちらも一室空間になっていて、特に壁で仕切ってありません。ちょっとだけ壁を設けてあるのですが、これは、収納家具を隠すための壁だそうで、必要に応じて取り払ってしまうことも可能なんだそうです。
Hさんに「子どもが生まれたらどうするの?」と尋ねたところ、「それは子どもが生まれたときに考えればいいことでしょ。3階に新たに仕切りとか壁とかをつくれば、個室を増やせるでしょ」とのこと。「収納家具を隠すための壁もそういう考えでつけてある」んだそうです。
Hさんが一室空間にしたのは、「細かく仕切られた間取りよりも自由度が高いから」ということもあるのですが、もうひとつ、「部屋が明るくなるから」という理由もあるのだそうです。
この一室空間を実現するために、設計士と話して、鉄筋コンクリート造の家にしたのだとか。もちろん、コンクリートの家の「直線的な印象」が好きだ、ということもあったそうなんですが。
ただし、鉄筋コンクリート造の特徴として、「壁が家を支えている」ので、あまりたくさん開口部を設けることができず、好きなだけ窓を設けることはできません。この条件下で外光を生かし、明るい室内にするためには、やはり壁で仕切られていない一室空間がよい、ということもあるのだそうです。
明るい空間を実現するために、他にもいろいろなアイディアが盛り込まれています。
2階の窓のそばにある扉は、ガラス製になっています(間取り図の赤線部分)。3階のトイレにいたっては、扉だけでなく壁も、すりガラスにしています(間取り図の赤線部分)。これによって、窓から入った外光が、扉や壁でさえぎられることなく、リビングダイニングルームにも届く、というわけです。
2階から3階への階段、3階から4階への階段は、どちらもスケルトン階段になっています。
階段がスケルトンになっているのも、部屋の明るさを確保するためです。こうした工夫の結果、ほんとうに明るいリビングダイニングルームになっています。
コンクリート造の家の満足度は?
いろいろとこだわってつくった家ですが、Hさん夫妻の満足度はどうなんでしょう? 高い費用をかけて、注文住宅を建てたかいはあったのでしょうか?
「いや、あらかじめ言っておきたいんだけど…、これは土地探しのときに会った不動産店の人のことばなんだけどさ、『注文住宅は、100%満足する、ということはないものですよ』ってさ」というのがHさんの弁です。「あるアイディアを採用すると、あるアイディアはどうしても捨てなくてはならないことがあるからね」。
さらにHさんはいいます。
「ほら、建売住宅を販売してる大手のハウスメーカーって、同じような家を何十棟も何百棟もつくっているわけじゃない? そうした家をつくって販売していく中で、お客さんの声をフィードバックしながら、商品である家を少しずついいものにしていっているわけ。だから、最大公約数的な、生活動線を考えた間取りとか、けっこういい線で実現されているはずなんだよね。
でも一方で、そうした建売住宅って、あくまでも『最大公約数的な家』でしかない。誰が買って住むのかがわからないうちに家をつくらなくてはならないわけだから、そうなるのはしかたないことなんだけど。
僕は家にはこだわりたかったから、注文住宅にしたんだけど、一般論として、注文住宅のほうが建売住宅よりもいい、とは言い切れないと思うよ。
例えば、この家って、幅木(壁が床に接する箇所につけるもの)をつけていないんだよね。幅木って、掃除のときなんかに壁が汚れないようにするためにつけるんだけど、個人的に、あんまり幅木って好きじゃなかった。安っぽい壁紙と並んで、最大公約数的な建売住宅の象徴っぽい感じがして。結果、掃除のときに壁の下のほうが汚れがちだから、ときどききれいにしなくちゃいけないんだけど、それはそれでいいと思ってる。そういう『細かいところまで、自分好みにできた』っていう意味では、今の家にはほんとうに満足してるよ」。
なるほど…。「最大公約数的ではない家」ですか。それは納得ですね。
さて、次回なんですが、また私の別の友人が、先日家を買ったらしいので、それを見にいってきます。
冒頭に紹介したように、Hさん夫妻の家は…、かなりの予算がかけられた、ほんとに素敵な家です。しかし、私の家づくりの予算とはだいぶかけはなれていますので…、次回見に行くのは、木造の狭小住宅です。
ちょうど今週、地鎮祭をするタイミングらしく、まだ家はできあがっていないのですが、設計などは終っているらしいので、いろいろと話を聞いてこようと思います。