空き家と多拠点居住

築200年団地 | 2019.1.15

今回は、空き家と多拠点居住について考えてみたいと思います。
多拠点居住とは、住むところ、仕事をするところ、家族や仲間と過ごすところ、趣味やアトリエなどの活動場所などの複数の場所を持ち、ひとつの場所に定住するのではなく、都心と郊外や別荘地などを行き来する暮らし方で、新しいライフスタイルとして注目されています。

日本の人口は、2008年の1億2,808万人をピークに減少に転じており、いまから約30年後の2050年には、9,515万人になるといわれています(出典:国土交通省)
日本の住まいに目を向けてみると、空き家率は2013年現在で13.5%でしたが、人口の減少とともに2033年には30%を超えるといわれています(出典:NRI)。つまり7戸に1戸程度だったのが、3戸に1戸程度が空き家になっていくということです。

適切な管理をしていない傷んだ空き家は倒壊の危険があったり、屋根材や壁材といった建材が飛散したりする危険があります。不法侵入や不法占拠が増える可能性があり、周辺の治安にも影響することがあります。このような課題を改善しようと国や自治体が法律や制度を定めており、建物の修繕工事や解体工事などに補助金が出る場合もあります。また、空き家バンクと呼ばれる空き家の紹介サービスが多くの自治体や民間団体で運営されており、空き家を探している人にとっても大きなメリットになっています。
空き家を悲観的になるのではなく前向きに考えてみると、今後、多様な価格の家や、いままでにあまり見なかった特長のある個性的な空き家が登場してくるともいえます。空き家が増えるということは、住まいの選択肢が増えるということでもあるのです。

一方で、これからの暮らし方を考えてみると、働き方改革で自分の時間ができれば、オフタイムの過ごし方がより大切になりそうです。趣味の時間や家族で楽しむ時間の使い方がいままで以上に広がります。また、通信速度がいまより速くなり、通信の時間差が少なくなって遠隔地のWEB会議がスムーズにできるようになったりすると、住む場所と会社の距離はいまほど問題ではなくなるかもしれません。
都会に通勤する利便性を重視した住まいだけでなく、オフタイムの時間を自分らしく過ごせるような住まい。今後は都会と郊外など多拠点居住にする人も増えそうです。そして、買って住むだけでなく、借りて住むという選択肢も増えていきそうです。

住む地域についても多様な選択肢がでてきて、個性も出てきそうです。都会に住んでいる人がいきなり郊外に住む(あるいは、その逆)、いわゆる移住となるとハードルが高そうですが、期間限定で試しに気になる地域に住んでみて、無理をせず徐々にその地域に馴染んでいくやりかたもありそうです。
例えば、既に家具・家電付きで引っ越しにかかる手間やコストをかけることなく、身一つで来られるような住まいがあり、その地域の歴史・食・アート・職等を紹介するようなツアーがあれば、より理解が深まりそうです。

団地でも、そのようなことができたら可能性が広がりそうです。以前のコラム「未来を生み出す団地」でも、集まって住むことの特長を生かした提案をしましたが、住戸リノベーションといったハードだけではなく、試しに住んでみるようなソフト部分も整えることで、古いものに価値を与えてより魅力的なものに変えていける可能性がありそうです。みなさんはどのようにお考えでしょうか。ぜひご意見をいただければと思います。