# 26 わたしのコツ – 最終回 –
2020年 3月 24日
2019年 12月 2日
わたくし、風邪をひいてしまいました。ずびっと鼻水すすりながら、ベッドに寝転んで日記を書いている昼下がり……。
窓から見える金剛団地の公園はもうかなり赤い葉っぱが落ちていて、足元でかさかさ鳴る木の葉たちや、街でひかる赤や緑のイルミネーションを想像するだけでなんだかわくわくしてしまう。季節のはじまりはいつも楽しい。冬がはじまるね。
楽しみな心とは裏腹にからだは重だるくって、この風邪は何が原因かなあ。おととい髪を乾かす前に寝てしまったこと? みかんを最近食べていないこと? 混んだ街でお買い物したこと? 心当たりしかないな。
風邪をひくといつもお母さんが梅干しを出してくれたっけな。小さなわたしの酸っぱい顔を見るのが好きだったんだって。いとしい記憶。
ああ、部屋がちらかってる……。最近忙しくってそうじもできていなかった、久々のお休みなのに、風邪でダウンって、もう。
溜まった洗濯物とホコリを横目に見ながら、ちょっと不安になる。今年もあと1ヶ月。あたらしいこの家で、新年を迎えられるのかな。
新年を気持ちよく迎えるために、なにをすれば良いだろう?
きっと風邪だから弱気になってるんだよね。元気になったらあれもしようこれもしようって考えていたらいつの間にか眠ってた。
昨日は早めに眠ったからか、今朝起きたらからだがすっきり軽かった。睡眠はやっぱり基本のき、だね。
今日はすごいことがあったんだ。日記もたくさん書いちゃいそう。
朝から溜まりにたまった洗濯物を2回ごうんごうんと回して部屋中に掃除機をかけていたら、突然うちのインターホンがピンポン! って元気に鳴った。
宅配便かな、と思いつつドアを開けたらそこには友達のきいちゃんの心配そうな顔。
「あおちゃん! 風邪ひいたって、大丈夫なん?」
わたしが昨日体調崩したってLINEでちょっとこぼしたのを見て、お見舞いに来てくれたんだって。優しい。ちょっとフライングで全快しちゃったけど、うれしい。
きいちゃんが「うちのお母さんが、あんこう持っていきーって。処理済みやから安心して」と袋を開けたら、まるまる1匹のあんこう! すごい、はじめて調理するなあ。唐揚げがいいのかな。
おっかなびっくりしながらあんこうを一旦冷蔵庫に入れたところで、またピンポンとインターホンが。
「あおさん! 風邪、大丈夫ですか?」袋いっぱいに詰まった野菜やみかんを持ってやって来てくれたのは、後輩のキナリちゃんだった。
そのうしろから、「あおちゃん風邪大丈夫ー? あれ、お客さんいっぱい?」と、目をまんまるにした親戚のももちゃん。手には芋けんぴの大きな袋。
きいちゃんもキナリちゃんも、ももちゃんもみんな、お見舞いに来てくれたんだ。うれしくてじんとして、ちょっと泣きそうになっちゃった。
「あ! ねえ、あんこうもあるし野菜もあるし、鍋パーティーできるんちゃう?」というももちゃんの鶴の一声に、わーっと沸き立つみんな(ももちゃんときいちゃん・キナリちゃんは初対面だったけど、一瞬で仲良くなってたからすごい)。
あんこうがある、野菜がある、無印良品の土鍋もある。
でも肝心なカセットコンロがないんだった……。膝から崩れ落ちたわたし。防災の日に、備えないと! って話をしたのに、忘れてたなあ。
鍋はやっぱりちゃぶ台で囲みたいよね。しょぼんとしていたら、絶妙なタイミングで携帯が鳴った。見ると、友達のしろちゃんからの電話だった。
「あおちゃん風邪大丈夫? 今からお見舞い行くけどなんか欲しいものあるー?」
……ある。さっすが、しろちゃん!
しろちゃんが持ってきてくれたミニコンロとガスボンベのおかげで、みんなでぐつぐつ煮えるあんこう鍋を囲むことができたんだよね。一瞬無言になってしまうぐらいおいしくて、お腹がいっぱいになってもまだまだ食べてた。
わたしの鍋レシピは、かつおの出汁パックとあんこうのアラでとった出汁に、お砂糖・みりん・お醤油・お酒を少しだけ。あんこうは別のお鍋で下茹でをして臭み消し。あん肝のおいしさには震えたね。
「わたし菊菜がいちばん好きやなー」「油揚げもおいしいよ」「うどんっていつ入れる?」
鍋っていいな。あんこうも菊菜も油揚げも、集まったひとつひとつの素材が大きな土鍋の中でいっしょにぐつぐつ煮込まれると、みんなが主役になる。
鍋をつつきながら「もう年末かー。ことしはどんな年やった?」っていうしろちゃんの言葉から、2019年じぶんの中のベスト3をひとりずつ発表したりしたよ。
団地にみんなが集まってきてくれた。ことし1年を振り返りながら鍋をつついた。あんこう鍋も漬け物もコロッケも、ぜんぶ最高においしかった。お腹をかかえて笑った。こんなにしあわせなこと、あるんだね。
「そういえばあおちゃん、年末の片付けどうするん?」と、しろちゃん。
「いっぱい遊びに来たから私も大掃除手伝うよー」と、きいちゃん。
「私も来たいです! 片付け終わったら、またパーティーしましょうよ」と、キナリちゃん。
「今日はもうお腹いっぱいやから、そのときに芋けんぴ食べよ」と、ももちゃん。
ことし1年を振り返ったとき、団地に引っ越してよかったな、ってしみじみ思った。去年のわたしには想像できなかった景色が目の前にあって、それがとてもいとおしい。
はじめての年越しも、みんながいるからきっと大丈夫だね。あたらしい年を良い気持ちで迎えるために、今からすこしずつ準備をはじめようっと。
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