# 26 わたしのコツ – 最終回 –
2020年 3月 24日
2019年 7月 9日
朝のニュース番組によると、気温は30度越え。熱中症にご注意ください、だって。
夏って、暑くって、苦手だ。日差しは強くて頭のてっぺんが焦げそうだし、日焼けは恐ろしいし、汗で髪は張り付くし、体調も崩しがち。
金剛団地に引っ越してきてはじめての夏。どこにいたって夏は来る……。
迫り来る暑さに備えてクーラーは買ったけど、電気代も気になるし、できればギリギリまでつけたくない。窓を全開にしてじっと暑さに耐えてたらハッと思い立って、そのままの勢いで友達のしろちゃんに電話をした。
「しろちゃん、暑い! 助けて!」って言うと電話の向こうで呆れながら笑ってくれた。
無印良品のインテリアアドバイザーとして働いているしろちゃんは、私の引越しも部屋づくりも手伝ってくれた恩人。きっと夏を乗り切るコツもたくさん知ってる!
緑のにおいのする風が部屋を通り抜けて、ふわっとキッチン横のカーテンが風に舞った。
春にこの部屋に引っ越してきたんだけど、季節が変わるにつれてだんだんキッチンに差し込む日差しに耐えられなくなってきて。しろちゃんに昨日相談したら、「じゃあカーテンつくろう!」って言ってくれて、家に来てくれて、一緒につくったんだよね。
「カーテンは日差しを遮るだけじゃなくて、部屋の温度を保ってくれる断熱効果もあるから。夏や冬には必需品だね」と、しろちゃん。
家にあったいらない布を採寸して、ハサミで切って、カーテンクリップで引っ掛けて、完成してぱちぱち歓声。発見。カーテンはつくれる。
麻のカーテンは陽の光がやわらかく入ってきて良いな。体感温度がぜんぜん違う。長袖ニットが半袖シャツになるように、煮込み料理が冷たい素麺になるように、部屋だって夏の装いに変えなきゃだね。
洗濯物が乾かないんだよね、としろちゃんにこぼしたら、「あおちゃん、サーキュレーター持ってたよね! あれを洗濯物に当てると乾きやすくなるよ」とアドバイスをくれた。
というわけで、押入れからよっこらしょ。真っ白なサーキュレーターを出すといよいよ夏って感じがするなあ。
しろちゃんの言うとおり、サーキュレーターの風に吹かれた洗濯物はすっかり乾いてさらさらになった。
あとね、このサーキュレーター、真夏にも心強い。できるだけ冷房はつけたくないなって思うけど、暑くて溶けそうなときは弱めに設定して、サーキュレーターを置いて冷房の風を循環させる。冷えた空気は下にたまるんだって。だからサーキュレーターで冷たい空気を上に送れば、室温が均一になって快適なんだって(これもしろちゃん情報だよ)。
家の中でいちばん涼しい場所ってどこだろう? お昼寝する絶好の場所を見つけたくて、夏の昼下がり、枕を抱えて家の中をウロウロした。キッチン、衣装部屋、廊下、玄関、と巡回して、うーん一番涼しいのは……ずばり、寝室!
「団地って風通しが良くなるようにつくられてるよね」って、この前しろちゃんが言ってたけど、この部屋はやっぱりダントツで風通しが良い。団地って窓の上にちょっとした小窓があって、そこからそよそよ風が吹いてくるのもお気に入りだったり。
「やっぱり北から吹く風がいちばん涼しいんだよね」とも教えてくれたしろちゃん。たしかに、うちだとお風呂場のあたりから吹いてくる風がなんとなく涼しいなって思ってた! サーキュレーターを北風の通り道に置いて、あえてベッドじゃなくて床で寝ころんでみる。
床ですごすのってなんだか心が落ち着く。昔の人は、ずっと畳の上で生活してたんだもんね。いつでもどこでもお昼寝したいから、床はきれいにしておこう。
そうそう、季節にあわせた部屋をつくるために香りも変えた。夏の香りは植物系でリラックス。さわやかな香りがするだけで、なんか涼しく感じるな。暑さに疲れた気だるい身体をひんやりした床に沈ませて、きっと起きたら夕焼けだ。ひぐらしはもう少し先かななんて考えつつ、ほんのしばしのおやすみなさい。
今日は畳のイ草の一本一本を、フローリングの床板一枚一枚を、ていねいに拭き上げた。そうじが好きだ。きれいが好きなのかそうじが好きなのかは分からないけど、たぶんどっちも。そりゃあそうじは大変だけど、程よい疲れと引き換えに代えがたい気持ち良さや清潔さを手に入れられるんだよね。
固く絞った雑巾は、もう使わなくなった「その次があるタオル」を切ったもの。よく使ったタオルは、最後まで大事につかいたい。家をきれいにしてくれた後は、ありがとうって言いながらさよならしよう。
床を磨くとつい熱中していろんな考えごともどこかに行ってしまう。終わってみると視界が1トーン明るくなって、より一層この家のことが好きになる。気持ち良いなあ。床の上は涼しいな。
子どものころはお母さんがそうじしているのを大変だなって思いながら見てた。「そうじするからどきなさーい」なんて言われたりして。きっとお母さんも小さいころ、おばあちゃんにそう言われてたりして。ずっと昔から、そうじは絶えず継がれている。とくに1日の大半を床ですごす文化のあるわたしたちにとって、欠かせない大切なものだよね。
いつも通りそうじしたあと、床にごろんと寝ころがって頬をひんやりした床に押し付けるのが好き。このごろんが気持ち良いから、夏こそそうじなんだよね。
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