# 26 わたしのコツ – 最終回 –
2020年 3月 24日
2019年 4月 23日
まるでお母さんのようにしっかり者のしろちゃんに手伝ってもらって、かなり首尾の良い引越しを成し遂げたわけだけど、もちろん失敗もある。忘れないようにメモメモ。
まず、搬入の確認不足。お気に入りだった無印良品の脚付マットレス(セミダブル)が玄関口に入るかどうかを全然考えていなくて、入らないかもしれないと言われたときはギャーって叫んだ。今思うと落ち着けって感じだな。なんとか入ったから良かったものの、家具の大きさと入り口の大きさの確認は大事。
それから、引越しも無事に終わってパーティーも盛り上がり、みんなを見送ってさあ寝るぞ! と思ったら……部屋の照明を消すスイッチがなかった。部屋中のどこにもなかった。人生であんなにスイッチを探したのは後にも先にもあの日だけだと思う。管理人さんに聞けば、昔の団地は紐付きの照明が当たり前だったからそもそもスイッチなんか無かったらしくて、結局、後日家電量販店でリモコンを買うことに。引越し当日の最後の最後までバタバタと慌てるのは、まぁわたしらしいと言えばわたしらしいけど。
もうひとつ、引越し直前の冷蔵庫の中身チェックを忘れてたこと。あと数日で引っ越すというのに、いつも通りおかずをつくり置きしてしまって、大量の大根の煮物を2日でひいひい言いながら食べる羽目になった。引越しが近づいたら、冷蔵庫の中を徐々に空にしていくべきだったんだな。引越しは計画的に。
団地は敷地が広いから桜の木がたくさん植えられていて、満開の今の時期、団地のそこらじゅうに薄いピンクのかたまりが見える。
きのうの昼下がり、仲良しのきいちゃんとキナリちゃんと一緒に団地の公園でお花見をしたのが楽しかったな。レジャーシートの上に、博多のあまおう、大好きな梅のおにぎり、駅前のパン屋さんの惣菜パンと甘いパン。外でみんなで食べるごはんって、どうしてあんなに嬉しくておいしいんだろうね? お花見がキライな日本人っていないと思う。
団地の中では季節の移り変わりを感じられる草木が、大切に丁寧に育てられている。いままで以上に季節を感じながら暮らしていけたらいいな。またひとつ、ここに引っ越してきた良さが見つかった。これからの金剛団地が楽しみ!
「新居の採寸は無印良品の採寸サービスにお願いしたらいいよ。うちの店舗の紺さんに言ってみよう」
しろちゃんが提案してくれたので、採寸は紺さんにお願いすることにした。これも引越しのコツ“引越しはひとりでやらない”ってことだよね。
紺さんは無印良品の訪問サービスを行っているMUJI SUPPORT担当で、おしゃべり好きの人の良いおじさん。「なあんでも言ってください。僕ね、引越し大好きなんです。運ぶのとか、楽しくやらせてもらいますう」って、搬入もニコニコ手伝ってくれた。
しろちゃんの働く堺北花田の無印良品、引越しの採寸もしてくれるなんて知らなかった。忘れがちなカーテンレールもしっかり採寸してもらって、安心して引越しができた。本当にありがたい。
今日の晩ごはんにつくったオムレツがかなりおいしかった。甘い新玉ねぎとブロッコリーをごろごろ入れて分厚く焼いて、仕上げにブラックペッパーをがりがりと。イタリア料理のフリッタータに似てるかな。おいしいごはんはお腹も心もほくほく満たしてくれますなあ。明日はなにつくろうかな。
そういえば、携帯のメモに引越し前夜の日記をみつけた。その瞬間の感情があふれてこぼれ出したような、ちょっとだけセンチメンタルな日記。
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引越しの日が近づけば近づくほど、この窓から見える景色をもっと見ておけばよかったなあと思う。明日、ちょうど4年過ごしたこの部屋に、さようならをする。
この部屋の好きなところはたくさんあって、床がちょっと白っぽいところとか、壁の柄がかわいかったところとか、言えば100個くらい出てきそうだけど、なによりこの小さな窓から部屋に射す、やわらかな陽の光が好きだった。
向こう側には梅田のビル群が見えるし、夏には小さいけど淀川花火も見える。夜は働いている人がつくるビルの灯りが切なくも綺麗だと思ったり。わたしは今まで生きてきた場所にはなかった景色の中で生活をしているんだって、再確認できる場所だった。
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引越しすると決めたのは自分なのに、ひどく寂しかったな。ただ部屋と別れるだけじゃなくて、自分の中にある記憶や思い出ともさようならをするような気持ちになって。あの日見た雨上がりの夕焼けが青っぽかったこと、よく覚えてる。あと、ベッドをどかしたら失くしていたピアスが見つかったことも。
わたしが前の部屋を愛したように、今の部屋ももっともっと好きになりたい。しろちゃんやいろんな人に助けてもらいながら、ときには自分で考えながら、ちょっとずつ頑張ろう。
大好きなベッドにもぐりこんで、今日はこれでおやすみなさい。
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