□　4月10日。え、もう10日なの？

出勤途中、猫のマークの引越しトラックを見かけた。ちょっと遅めの新生活かな？ と、知らない誰かのことなのになぜかわくわくしてしまった。
わたしがこの金剛団地に引っ越してそろそろ2ヶ月になる。時が経つのは早いなーって、おばちゃんか。
引越しの日々はバタバタとしていて日記を書く暇もなかったから、しろちゃんに教えてもらった引越しのコツを走り書きしたメモだけが手元に残ってる。今日は時間があるから、メモを見て思い出しつつゆっくり日記を書こう。

引越しは憂鬱。採寸とか荷造りとか掃除とか配置とか、全部をひとりで……と思うとげんなりする。不安になっていたわたしに、「引越しはひとりでやらないで。周りの人に助けてもらおう」としろちゃんが優しく言ってくれた。
そこで頼りになったのが無印良品で働く職場の仲間たち。みんなが手伝ってくれるというので、思い切って引越し屋に頼むのをやめて、自分たちで全部引越しをしたんだよね。

「まず荷造りのコツは、新しい部屋ごとに荷物を仕分けること。そうすると、段ボールから荷物を出すときに部屋を行ったり来たりしなくてすむ」
「そして、段ボールは部屋ごとにカラフルに色分けする。手伝ってもらうんだから、誰が見てもどの部屋にどの段ボールを置けばいいかわかるように」
寝室に置く荷物は青のテープを。リビングに置くものは緑、キッチンはピンク、水周りは白。さらに、引っ越してすぐ使う段ボールには黄色のテープを目印にぺたり。どの段ボールから片していけばいいか、ひと目でわかる。
白い段ボールがカラフルになって、かわいくって、うれしくなった。
「わかりやすいですね！ あおさんに聞かなくてもどこに運べばいいかわかる」
と、荷運びを手伝ってくれたむらさきさんも褒めてくれた。しろちゃん、天才。
カラフルな工夫のおかげで、荷解きは脅威のスピードで終わった。窓からPLの花火が見えそうだとか、この部屋に似合いそうな無印良品の家具の話とか、みんなでわいわい話しながら作業できたのも良かった。

引越しがあらかた終わったあと、夜はパーティーをしたっけ。むらさきさんが引越しのお祝いにって、人数分のカニとかトロが入っている良いお寿司を買ってきてくれた。しろちゃんとむらさきさんが働く堺北花田の無印良品って、お寿司も売ってるのね。お寿司のほかにもコロッケやローストビーフなんかをおなかいっぱいになるまで食べて飲んで笑って、Bluetoothスピーカーでそれぞれの好きな音楽を順番に流したりして。“引越しのときに聴きたい歌！”とテーマを決めて、そのときのプレイリストがこちら。

「それすごく引越しっぽい！」「むらさきくん、意外な音楽聴くんだね……」なんてケラケラ笑いながら。夜の団地は静かだから、ご近所への気配りは忘れずに、ひそひそ声で語り合ったり。
本当に楽しい引越しだったな。今でも思い出してにやにやしてしまうくらい。

良い感じに眠くなってきたから、続きはまたあした。

□　4月11日。23時11分。

今日は一日中からっと晴れて、風が気持ちよかったから夕方の団地を散歩してみた。春といっても太陽が沈むと寒さがまだ残るから、無印良品のグレーのストールを羽織って。
オレンジの陽がななめに射す坂道を、カントリー・ロードを口ずさみながら歩いていると、どこかの家から晩ごはんのにおいがふわんと漂った。肉じゃがかな？ かつお出汁の良い香り。なんだか懐かしい気持ちになって、ああ、団地って良いところだなって素直に思った。ひとりじゃない感じがして、元気が出て、2回くらいスキップした。

なんだっけ、あ、引越しの話。

「ひとりで引越しをしない」ことのメリットは他にもあった。そのひとつが、人にものを譲ったりもらったりできること。
ちょうど引越しの時期が同じだった職場のキナリちゃんが、二口のガスコンロをくれた。お礼に使わなくなった白い棚とタンスに眠っていた襟付きシャツをあげて、喜んでもらえた。しろちゃんからも使っていない無印良品の壁掛式Bluetoothスピーカーをもらったり、なんというか、この時代に物々交換をしているのが面白くて。昔の人もこんな豊かな気持ちでやりとりをしていたのかな。

「あおさんの冷蔵庫、超かわいい！」と、無印良品の電気冷蔵庫をやたらとべた褒めしていたキナリちゃん。引越しの合間に、カラーテープを貼って遊んだ。

グッドバイ。
ハロー、金剛。

電気冷蔵庫 270L