# 26 わたしのコツ – 最終回 –
2020年 3月 24日
2019年 4月 9日
今日はしろちゃんと、ご近所に住む無印スタッフのきいちゃんが、うちに遊びに来てくれた。きいちゃんは自転車で。ミモザ柄の春色のワンピースを着て。
きいちゃんはこの家をめちゃくちゃ褒めてくれるから、わたしもしろちゃんもかなり嬉しい。鼻高々。
「あおちゃんの家、落ち着くよね。6畳なのに広く感じるの、なんでやろ?」と、きいちゃん。
「大きい家具がないからちゃうかな。あおちゃん、最初はソファ欲しいって言ってたけど、いったん買わずに床にラグ敷いて過ごしてみたら、思ったより心地良いよね」と、しろちゃん。
「床でくつろいでると、窓から空が見えるのも好きなんよね」と、わたし。
この部屋で友達と熱いほうじ茶を飲みながらいろんな話をして過ごす時間が、わたしは大好き。団地は間取りが広々としているから、人を呼ぶのにぴったりだよね。きいちゃんもリラックスして手足をめいっぱい伸ばしてた。ちなみに、お泊まり用の客用布団も常備です。
団地の広さの良いところはまだまだたくさんある。たとえばわたしが部屋をえらぶときに大切にしたいことの一つ、“洋服をたっぷり収納できる場所がほしい”を叶えてくれた。
今まではワンルームだったから、季節外れのものは倉庫サービスに預けたりなんかもしてた。広い団地に引っ越して、4畳半の一室を、大好きな服やかばんを思いっきり置いておける衣裳部屋にしてから、毎日服をえらぶのがとても楽しい。
「住む部屋が決まったら、ものの置き方じゃなくて、すごし方を考えると良いよ」
しろちゃんの言葉。これ、めちゃくちゃ大事。しろちゃんに話を聞いてもらいながら、引越しの前にざっくり部屋の目的を決めた。
食べるための部屋。
くつろぐための部屋。
眠るための部屋。
しまうための部屋。
「新しい家での自分を妄想してみて。朝起きてから寝るまで」
そうすると自然に何のための部屋か、どこに家具を置くか、はっきり決められた。
「細かいことは住んでから、ね。大きな家具もまだ買わんとこ。住みながら考えようね」
と、教えてくれたしろちゃんに感謝。ソファも結局買わなくて良かったもん。
そう、引っ越す前にテンション上がって結局使わないものとか買っちゃうんだよな。しろちゃん、よくわかってる。
今日は起きてから出勤までに時間があったから、ゆっくりお昼ごはんをつくった。旬の菜の花と大好きなツナ缶でオイルパスタを。無印良品の乾燥野菜、ドライトマトをオイル漬けにしているからそれを使って。自分で言うのもなんだけど天才的においしかった。学生のときに取った調理師免許も捨てたもんじゃないな。
食卓って大事だな、と大人になってからつくづく思う。食べることは生きること。衣食住のまんなかにある、人間にとってとても大切な食。わたしのくらしの中心にも、いつも食がある。自分の心を整えたり、みんなとわいわい賑やかに楽しんだりするために、新しい家でも食べることを大切にしたい。
絶好のお洗濯日和だから、布団カバーやシーツまで洗濯してしまおう! と意気込んで洗濯機をまわしてすぐに、事件は起きた。
リビングでテレビを見ていると、じゃばじゃばとやけにリアルな水音が。これはもしや……、と思いながら急いで玄関横の洗濯機を見に行くと、はい、案の定。排水ホースから水がどぼどぼと廊下と玄関に大きな水たまりをつくっていた。膝から崩れ落ちるかと思った。嗚呼。
わたしが部屋をえらぶときに大切にした3つ(洋服をたっぷり収納できる場所がほしい、料理を思いっきり楽しみたい、人をたくさん招きたい)を絶対に叶えてくれる、かなり理想に近い部屋を見つけることができたけど、もちろん妥協したところもいくつかある。
そのひとつが、洗濯機置き場がないところ。これは古い団地によくある悩みらしい。この団地が建ち始めた1970年代前後は、まだ洗濯機は一般家庭にはほとんど普及してなくて、なんとお風呂で洗濯板を使って洗っていたのだとか。ほんの40年前は洗濯機そのものがなかったことにびっくり。
今わたしは可動式の台車をつけて、洗濯するときに排水のホースをお風呂場に逃がしてなんとか洗濯している。
そして今日、その排水ホースをお風呂場に逃がすのを忘れて洗濯機をまわしてしまったというわけで。
玄関の靴までびしょ濡れになってかなり泣きたかったけど、下の階にご迷惑をかけなかったことだけでも良しとしなきゃ。念のため団地保険には入ってるけど、入居早々お世話にならずに済んで良かった……。次からは毎回洗濯の前にホースをチェックだね。
でもこんな事件も、いまは新鮮。玄関に入ってすぐむき出しの洗濯機も、デザインが気に入っているからオッケー。人生、楽しんだもん勝ち。
靴箱がないのが気になるから、またしろちゃんに相談してみようっと。
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