vol.26 理の家
「無印良品の家」で暮らしている方を訪ねて愛知県豊川市へ。
建築家の永山祐子さんが、心地よく整頓された「木の家」に会いに行きました。

施工例 | 2019.7.9

「無印良品の家」に寄せて | 建築家 永山祐子さん

「欲しい家」
~魅力ある生活シーンの集合体~

今回、無印の「木の家」を初めて訪問して感じたのは、新しい生活を築いていこうとしている若い夫婦にはとてもリアリティがあり「ほしい家」と思うだろうなということだった。立体的なワンルームの構成、ダイニングを介して全ての空間が緩やかにつながり、常に家族の気配を感じる。部屋の仕切りが少ないので、閉じた廊下もなく、仰々しい玄関もそこにはない。生活に必要な機能がワンルームの中にコンパクトに配置されている。

南に面した吹き抜けの大きな窓から日の光が差し込み生活の中心となるシーンをつくりだしている。機能によって決められた部屋の集合ではなく、様々な生活のシーンを想起させる魅力的な空間。対面式のキッチンではダイニングの子供達と会話が弾む。子供達はどこにいてもママの気配を感じて安心し、逆にママは子供達の気配をいつも感じている。リビングで遊ぶ子供達、キッチンで遅い夕食をとるパパ、キッチンで食器を洗うママ、皆が別々のことをしていても一緒にいる感覚、など。この家をたずねて来た人は容易にそんな楽しそうな生活シーンをイメージできるだろう。

若い世代は様々なメディアを通じて自分の理想的な生活のイメージを既にもっている。リビング、ダイニング、キッチン、寝室、それぞれのシーンにカテゴライズされた魅力的な事例が並ぶ情報サイトもあるくらいだ。これから家を建てようとする人は特に沢山の情報から自分の生活シーンを疑似体験しているはずだ。だから部屋数、機能スペックなどの情報をいくら羅列しても魅力と感じない。それよりもイメージを想起させるシーンの集合体としての家を見た時に、欲しいのはこれだと思うはずだ。既に多様な経験をリアルにもバーチャルにも得ていて、情報収集とそこからイメージ膨らますのが得意な世代は家の選び方も違ってくるはずだ。そんな世代にイメージの引き出しの多いこの家はリアルに響くはずだ。

今回の取材でT夫妻と話しをしている中で、なぜ無印の「木の家」を選んだのかという話をした。もともと家を持つという欲求はなかったが、下の子が生まれるタイミングでスペースが必要になり家を購入することになった。今までどの家を見てもピント来なかったが無印のモデルハウスを見に行った時に、これだとピンと来たとのこと。少し価格は高くてもこの家なら欲しいと思ったそうだ。そういう選び方をされるのが無印の家なんだなと思った。[2019.7]

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