vol.25 五感の家
「無印良品の家」で暮らしている方を訪ねて福岡県糸島市へ。
東洋文化研究者のアレックス・カーさんが、せせらぎと虫の音を聴く「木の家」に会いに行きました。

施工例 | 2018.10.30

「無印良品の家」に寄せて | 東洋文化研究者 アレックス・カーさん

暮らしへのこだわり

訪問先のご夫婦は、明確な「リンビング・センス」を持っている。二人は元々東京で暮らしていて、まだ若いにも関わらず、意外と日本のものを愛するテーストが備わっている。

彼らは仕事の都合で福岡へ引っ越して、家を建てることになり、まず土地探しを始めた。「家」というと、建物とインテリアだけで考えられがちだが、やはり周辺の景色や、利便性も重要。とはいえ普通なら、そこまで追求することはない。子どもたちが生活に楽しさを感じながら成長のできる場所を求め、最終的に彼らは小さな川の側に土地を見つけた。対岸は田んぼ、丘の上には池があり、ジブリの作品に出てきそうな田園風景だ。

家は自分たちの趣味にMUJIが合うことから、無印良品の家に決めていたようだ。家族が明るく暮らせそうという理由で、3つのパターンから「一室空間」を特徴とした「木の家」を選んだ。

夏の暑い日、この家を訪れた僕をまず迎えたのは、川沿いの真っ黒な住宅だった。黒はしっとりとした味わいで、昔の黒瓦や焼杉の雰囲気を醸し出し、周囲にも馴染んでいた。

「木の家」と言うだけあり、屋内は床や柱を中心に木が多用されている。ひとえに「木」と言っても、様々な樹種があり、昔の家には松や栂、宮殿・神社では檜が用いられた。湿気に弱く柔らかい杉が使われることはなかったのだが、近年の木造建築は杉ばかり。今回も同様に予想していたが、嬉しいことに松材が用いられていた。そのため、柱や梁の表面は松特有のツヤが出て、焦茶色と黄金色の中間のソフトな色合いになっている。

日本の古い大工の技術は世界有数で、部材を繋ぐ精巧な技術がある。新しい木造建築はどうかと、継ぎ目を見ると、独自に開発されたという匠なジョイントで組まれていた。地震にも耐える強度を持ちながら、デッサンとしても洒落た仕上がりになっている。

このような家を使いこなすのにも「技術」が必要だと思う。今回のご家族は、日常の暮らしを大事にしている。「一室空間」のコンセプトを応用し、二階の小さな寝室も開放的なつくりにして、風通しの良いオープンスペースを確保している。

何より感心したのは、厳選された「物」(茶碗、お皿、カゴ、家具など)の数々だ。一つ一つに思いが込められ無駄がない。二階の寝室では、日の差し込む窓の下、2歳の男の子がすやすやと眠っている。その光景に、21世紀の家族の美しい姿を感じた。これがMUJIの家の正しい住み方に違いない。[2018.10]

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