vol.25 五感の家
「無印良品の家」で暮らしている方を訪ねて福岡県糸島市へ。
東洋文化研究者のアレックス・カーさんが、せせらぎと虫の音を聴く「木の家」に会いに行きました。

施工例 | 2018.9.4

ダイアログ1

だから、ここに建てました

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「木の家」
Y邸|福岡県、2017年10月竣工
延べ床面積: 103.50m²(31.30坪)
家族構成: 夫婦・娘・息子

アレックス・カーさんが会いにいった家

農地と住宅地の境には、ハグロトンボが飛び交う水路が流れ、緩やかな坂道の先に、鎮守の森が深緑の葉を広げています。
糸島市は玄界灘と背振山地に囲まれた自然豊かな都市で博多にも近く、近年は移住先としても注目されています。
Yさん夫婦は、久留米の大学で出会い、東京の門前町で暮らし、夫の勤務先の福岡本社に転勤。賃貸住宅の2年の契約期間中に新居の土地を探し、糸島で理想の宅地に巡り会います。
奥様の実家にほど近く、ご主人の少年時代の原風景に近い、緑豊かな立地は、南側に視界が開け、以前、東京で見学した「木の家」にぴったりの敷地。南の木立は桜の林でした。
通勤も快適で「おすそ分け」できる近隣との心地よいつながり。
二人の子供が伸び伸びと育つ家が完成しました。

「こんにちは」
「どうぞ、どうぞ」

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アレックスさん
私の無印良品のイメージは「日本の白」。伝統的な日本家屋の白壁も、純白ではなくオフホワイトの「日本の白」でした。

明るさという価値

アレックスさん
現しの木柱とオフホワイトの壁の質感がいいですね。昔の日本家屋も真壁に漆喰仕上げでした。かつての日本の白布は、藤の繊維を川に晒し、糸を紡んで藤布を織ったので、木綿のような純白にはならない。漆喰の白もそう。真っ白ではなくオフホワイトが日本の白なんです。でも近代以降、人工的で単調な純白ばかりになってしまった。それは日本的な白とは違う世界。純白から少し外れたオフホワイトの白が日本の白なんですよ。
確かに、反射する光も柔らかく心地よい明るさです。

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アレックスさん
この家の良さは明るさですね。吹抜けに面した大開口は、開放的でとても気持ち良い。贅沢ですよ。住宅地の際なので、この先は神社の杜だけ。眺望もすごく良いですね。
目の前の林は桜なんですよ。桜吹雪もすごくきれいでした。
2階に子供たちがいても、吹抜け越しにお互いの声が聞こえるので安心感があります。エアコンは2階に1台だけで、この吹抜けから冷暖気を家中に送るので、機能的にも必要なんです。
アレックスさん
それは、かなりの省エネですね。高気密高断熱だから可能になった設計でしょう。日本の古民家の弱点は断熱と気密性。私が携わる古民家再生では、快適性を高めるため、改修時に断熱材をたくさん使うし床暖房も入れますが、昔の家は寒かったですからね。
実家がそうでしたね。「無印良品の家」は本当に機能的で快適ですよ。建てる前は分譲集合住宅も見学しましたが、仕切りが多く、お仕着せの部屋割りで、機能以前に、自分たちとは価値観が合わないなと思いました。
アレックスさん
そうでしょうね。こんな家を求めた家族には、お仕着せの間取りで天井や壁の圧迫感を感じながら暮らすのは無理でしょう。それに、人が住む前から無駄な飾りが多いですからね。この家は、いらないものはない。当たり前のシンプルさが気持ちいい。
子供と一緒に暮らすのは15年くらい。巣立った後を考えると二人の暮らしに戻りますからね。自由度のあるコンパクトな家が理想でした。

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五感で自然を感じる家

アレックスさん
モノも美しく整理されていて、努力して無駄を排除しないと、こんな美しい生活できないと思うんですよ。子供がいると、とくに大変だと思います。
必要なモノを必要な場所に置くことだけを考え、設計時から収納スペースはあえて増やさずに計画を進めました。いまの収納に収まらないものは整理するという考え方です。
アレックスさん
素晴らしいですね。見た目で立派な家は多いけれど、美しく暮らすのは難しいものです。庭のデッキも楽しそうですね。
そうですね。外までリビング感覚です。
窓はトリプルガラスなので断熱性が高く、閉めると遮音性も高くて、ここを開けると……。

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アレックスさん
ああ、せせらぎの音と虫の鳴き声が。こういう環境は子供には幸せですね。
長女
おとうさん、お砂遊びしたい!
はい、どうぞ(すたすたすた)
アレックスさん
玄関だけじゃなく、デッキからも庭や外に出られるのね。

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都心に暮らしていたころは、子供を遊ばせるために公園にわざわざ出かけていましたが。
アレックスさん
いまは一歩出ると全部公園じゃない(笑)
そうなんですよ。休日にお出かけしなくても、この家は、ただいるだけで十分豊かなんですよ。私は、まわりに山や川や海がある田舎で育ったので、自分自身も落ち着きますし、子供たちにも同じように、自然豊かな環境を体験してほしい気持ちがありました。「あ、蝉の声がする」とか、五感で環境を感じながら育つことは大事だと思っているので。
アレックスさん
なるほど。だからこの場所なんですね。この清流なら、夜、ホタルが飛び交うんじゃないですか。
いますよ。夕方になるとホタルを見に行きたいって子供たちに言われます。

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