vol.24 光の家
「無印良品の家」で暮らす人を訪ねて神奈川県逗子市へ。
建築への造詣も深いKIKIさんが、日向に佇む「窓の家」に会いに行きました。

家に会いに | 2023.2.17

こちらは、2018年2月公開されたものを再編集しています

プロローグ

そのときが来るまで。

高校生のとき、建築家にあこがれていた。きっかけは実家の建て替え。担当してくれた女性建築家の姿に影響を受け、彼女に進路を相談するうちに、美術大学の建築学科を目指すことにした。
初めのうちは住宅建築に一番興味があったけれど、空間プロデューサーのもとでアルバイトをするうちに店舗やランドスケープデザインなど、もっと広く人の目に触れる建築に関心が移っていった。さらに学生時代からモデルの仕事をはじめると、自分の文章や写真で、また少しだけ専門知識を持つナビゲーターとして建築を「伝える」ことができることに気がついた。
そんな経緯もあり、モデルを20年近く続けていても建築から遠くに身を置いたとは思っていない。新築なのか、マンションのリノベーションなのか、別荘なのかわからないけれど、両親が実家を建て替えたように、いつか自分や自分の家族のための空間を作りたい。そしてそのときが来るまで、たくさんの建物を見て、その空間を気に入って暮らす人の話を聞いて、アイディアを蓄えておきたいと思っている。

KIKI|きき
武蔵野美術大学建築学科卒。同大在学中よりモデルとしての活動をスタートさせ、多数の印象的なCF・広告をはじめとして雑誌やカタログ等で活躍。興味の対象は幅広く、建築のほか、アートやデザインにも造詣が深い。モデルの枠にとらわれずさまざまなフィールドで活動中。

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ダイアログ1

だから、ここに建てました

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「窓の家」
N邸|神奈川県、2014年2月竣工
延べ床面積: 105.16m²(31.81坪)
家族構成: 夫婦・娘

KIKIさんが会いにいった家

古寺旧跡の時と自然が織りなす、逗子と鎌倉にまたがる街区は、70年代にガーデンサバーブとして開発された歴史ある住宅地。
この街の、バス通りから一本奥、なだらかな傾斜地の高台に「窓の家」のN邸は建っています。奥様が育った実家が近く、住みやすさや利便性は旧知の場所です。
二人は、長女の誕生を機に、横浜の賃貸高層マンションから、静謐で環境の良い湘南逗子への転居を決めます。

「家づくり」はまず、土地探しからスタートしました。
手掛かりは、折り込みチラシと不動産会社からの情報。
1年以上を費やして見つけた土地は、陽当たりが良く広めの庭が確保できる、角地の、理想の敷地でした。
日向の庭は芝が根付き、長女はここから小学校に通っています。

「おじゃまします」
「どうぞー」

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KIKIさん
「無印良品の家」があることは知っていましたが、私たちに馴染みがある無印良品の衣類や生活雑貨の雰囲気や品質が、住宅にも、ちゃんと受け継がれているのでしょうか。

仕切りがない家

KIKIさん
どうして「窓の家」を建てようと思ったんですか?
僕は、建てるなら子どもが絵に描く、サザエさんのエンディングに出てくるような三角屋根の家がいいなと思っていて。小さい頃、住んでいた街にあった「米軍ハウス」のシンプルな佇まいが好きだったんですよね。
私はデンマーク旅行で訪ねた、家具作家のフィン・ユールが暮らしていた、真っ白でシンプルな家の印象に強く惹かれて、「窓の家」はそのイメージがありましたから。
KIKIさん
もともと暮らしたい「家」のイメージがあって「窓の家」を選ばれたんですね。そこから間取りや設備を細々決めるとき、二人の意見が衝突したりとかは……な、なさそうですね。
ないですねー。基本は妻が全部やってくれたので。
KIKIさん
あ、やっぱり。
玄関の土間は広め、キッチンから庭に出られる……とか、二人で決めた優先順位があって、それと予算のバランスでプランを考えてもらった感じですね。それをまた修正してもらって。
庭の広さから建物の大きさが決まり、キッチンと玄関を広くすると、家族のスペースが狭くなるのでお風呂は2階に、とか。
KIKIさん
住まいを考えるときに優先順位を決めるのは大事ですよね。

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まず、暮らしの優先順位を決めてから

KIKIさんの暮らしの優先順位ってどんな感じでした?
KIKIさん
私は今、鎌倉と東京の二拠点居住なんですが、東京のマンションをリフォームしたときは、私はキッチンにいる時間が長いので、そこは妥協せず、その代わり床材のランクを落としたりして全体のバランスを整えました。
バランスは重要ですよね。「無印良品の家」は良い意味でルールが決まっていて、それをベースに考えられるので、優先順位やバランスも決めやすかったです。
それに、自由にできることの幅も意外に広くて。
KIKIさん
商品住宅としての制限の中で、暮らす人に必要な自由度はあって、無印良品の使い勝手の良さはちゃんと保っているイメージかな。まったくの白紙でフリーの状態からスタートするより、制約があったほうが、考えていて楽しいですしね。
そうそう、お仕着せではない決まりごとが、私たちには良かったと思います。間取りの優先順位がちゃんと決まっていると、素人でもうまくプランニングできる家でした。

KIKIさん
逗子や鎌倉は湿気が多いので、湿度のコントロールが大変なんですが、この家は大丈夫なんだなー、って部屋を見渡すだけでわかりました。籐製品が痛んでいないですもんね。
実際に住んでみると気密性の高さは実感しますね。エアコンも一台だけで家中快適で、光熱費も以前の住まいと比べて安いですよ。
KIKIさん
多くの方は、仕切りがない一室空間の家は、まず、寒さや暑さは大丈夫なのかなと思うし、その次にプライバシーはどうかな、と不安になりがちですよね。
僕は昔ながらの家で育ったので、一室空間での暮らしは想像がつかなかったけど、暑さ寒さに関しては高気密高断熱仕様なので大丈夫と、いろんな方から聞いていて不安はなかったです。

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KIKIさん
そういえばテレビがないですよね。
最初は置き場所に迷っていて、迷っているうちにテレビがなくてもいいんじゃないかと。
テレビ台も必要になるし、周辺機器やリモコンや、どんどん居住スペースを圧迫しますからね。今となっては、テレビがなくてもそんなに困ることはないです。
KIKIさん
お話をうかがうと、ちゃんと自分たちの生活スタイルを理解して建てた家なんだなと思いました。暮らし方が住宅にフィットしてますよね。私がこの家で暮らすと、収納が少なくて困るかもしれないけど、そんな人には、きっとそんな人のつくり方があるんですよね。ちなみに私も、鎌倉の家はテレビは置いていないですよ。

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ダイアログ2

建築を学んだ経験

ダイニングテーブルに座って

KIKIさん
ここは少し奥まったスペースですが、とても明るいですよね。冬なので太陽が低くて光が奥まで差し込みますよね。
ダイニングは天井もそんなに高くないし、照明もたくさん付けてもらったんですが、夜でも全点灯することはないですね。
ペンダントライトを取り付ける場所は用意しているんですが、なくてもなんとかなりますね。
KIKIさん
ないほうがすっきりしていていいですよ。普段はどういうふうに座るんですか。
子どもは、いろんな場所に座りたがるんですよね。
KIKIさん
子どもって大人の椅子に座りたいんですよね。このダイングテーブル、東京の住まいに新しく買ったテーブルに似てて嬉しいです。角がないのは、人が集まったときに座りやすいですから。
そうですね。
KIKIさん
私は「窓の家」は写真でしか見たことがなくて、最初は庇がないことに驚いたんですよ。夏の日射とか大丈夫なのかなって。
それは大丈夫でしたね。夏もエアコン一台だけで全室快適でした。
KIKIさん
高気密・高断熱っておっしゃってましたもんね。
ガラス自体の性能が高いんでしょうね。熱をカットするような……。
KIKIさん
窓は自由に設定できるんですよね。
そうです。仕様もいろいろで、庭に面した開口部はガラスが大きいので、防犯面で少し不安があって、それで強化ガラスにしてもらったり、ここ(ダイニング)は道路に面しているので網入りで曇りガラスにしました。
KIKIさん
無印良品は馴染みがあるブランドですが、雑貨や衣類ではなく、人が住む「家」をつくるとなると、どのくらいちゃんとしてるのか気になっていたんですよ。シンプルでオシャレなだけかもしれないし。でもお話をうかがうと、性能面もしっかり考えられていることがよくわかります。

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KIKIさんは、美大で建築を学んでいたんですよね。大学時代は住宅の課題もありました?
KIKIさん
あんまり覚えてないんですよねー(笑)。えーと、私は自分が生まれ育った街に、長く空き地になっていた場所があって、そこに住宅を建てることがメインのコンセプトで、「こういうデザインの建物を建てよう」みたいな考えはなかったですね。美大の建築学科だったので、建物のプランや構造のチャレンジよりもコンセプトが重視される傾向にもあったので。
歴史や時間の蓄積から、敷地を読み解く感じなんでしょうか。
KIKIさん
そうですね。歴史というよりも、そこに長く暮らしていると土地の特長や人の流れはよく知っているので、そういうことを手掛かりに設計しました。基本といえば基本かな。いかに面白い建築を設計するかではなくて、もっと地味なところで、細かく……。
ある意味、ユーザー目線ですね。とても共感できます。

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KIKIさん
やっぱりその場所にふさわしい建築ってあると思うんですよ。この家も、もっと人通りが多かったら、窓の場所や形も変わっていたと思います。斜面に建てられているので、傾斜を生かしてうまく採光しているなって思いましたよ。
建築って建物だけで成り立っているわけではない、ってことですよね。
KIKIさん
そうですね。そこで暮らす人はもちろん、周辺環境や地形との関係を考えることは大事だと思います。きっと「無印良品の家」も、それぞれの商品に合う環境があるんだろうなと思います。
僕のまわりにも建築を勉強した友人が何人かいるんですが、考え方が、いわゆる文系と理系の文化の良い部分をハイブリッドしている印象があって、建築って最強の学問なんだなと思いますよ。確かに計算だけでは造れないですよね。そこに来てもらう人や、それを眺める人の気持ちなんかも想像できないと、良い建築はできないですよね。建築で学んだことをベースにコンサルティングの仕事をやってる友人は多いですよ。
KIKIさん
実は、建築を勉強しようと思ったのは、受験が実家の建て替えのタイミングと一緒で、設計を担当されたのは女性の建築家だったんですが、いろいろお話を聞いて面白そうだなと。身近にそういう方がいたことも大きかったですね。
ここも建築家にお願いしようと思ったりもしましたが、こちらの希望は伝えられるけど、建築家から提案されたものは、受け入れざるをえないケースが少なくないと言われて、怯んでしまい・・・
KIKIさん
それ、わかります。しっかりとした信頼関係を築くまでは、施主からの注文が多かったり文句を言ったりすると、関係がギクシャクするんじゃないかと不安になりますよね。
「無印良品の家」はそのちょうどいいバランスだと思いますね。ルールはあるけど自由で、ほかの家の見学会でも「優先順位を決めるとうまくプランニングできる」と言われていました。
KIKIさん
「見学会」ってあるんですね!
この家でも何度かやりましたよ。
でも、間取りがシンプルなんで、みんな3分くらいで見学終了(笑)。

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質問されることは多かったです。一室空間で仕切りがないと寒くないですか、とか。あと、建ててから「こうすれば良かった」と思うところはありますかって。
ああ、それ、よく聞かれたね。
KIKIさん
「こうすれば良かった」って思ったところあるんですか。
うーん、ホントに細かいところなんですが、キッチンシンクの水切りかごが……。
KIKIさん
あー!!! それ思いました。位置は左右逆のほうが使いやすいですよね!
そうなんですよー!
すごい! 見ただけでわかっちゃうんだ。
作業の流れを考えると、シンクとワークトップが隣り合わせが理想なんですよ。その間に水切りかごがあると、作業の時に邪魔になることがあるんですよね。
KIKIさん
そういうちょっとしたことが、ストレスになったりしますよね。でも私が鎌倉の家で使ってる水切りかごなら右側に置けるかも。
えええええ、教えてください!!
KIKIさん
えーと(スマホで検索)、コレです!
おお、ありがとうございます。
KIKIさん
ところで、家のプランを考えているときに、2階を暮らしのベースにするアイデアは出ませんでした?
それはなかったかな。友人の家がキッチンからお庭に出られるようになっていて、それがいいなと思っていて、そのイメージからキッチンの場所が決まって、迷ったのはダイニングの場所くらいでしょうか。
KIKIさん
ちゃんともとになるイメージがあったんですね。
玄関の広めの土間も、友人の住まいを参考にしました。そちらはもともと設計事務所だった建物を転用した住まいで、広い土間の使い勝手が良さそうだったので。
玄関に設けた階段をスケルトンに変更することで、視覚的にも「抜け」が生まれて、広い土間のイメージをうまく生かすことができました。

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ダイアログ3

逗子と鎌倉の暮らし

収納と持ち物の関係

KIKIさん
それにしても、テレビがないだけじゃなく、持ち物も少ないですよね。壁もスッキリ広くて気持ちがいいです。
テレビは僕たちはなくても平気ですが、子どもは見たいときもあるみたいです。
KIKIさんって、何か「持ち物」のルールありますか。ワンシーズン着ない洋服は処分するとか。
KIKIさん
そうですね。洋服はフリマで放出することありますが、本は「棚に入るだけ」って決めて買ってます。でも棚自体が大きいので、まだまだいけますね。
大きい本棚いいなあ。どんな感じの本が多いんですか。
KIKIさん
うーん、小説が多いけど、建築を勉強していた頃の名残で、建築の作品集や写真集のような大判の本は捨てられないですね。
大きな本棚ほしいね。
……。
KIKIさん
スペース足りてないですか。
ぜんぜん足りてないです。帰宅してポストを開けると、また新しい本が届いていて。
宅配が便利なんで、つい。
私は食器の収納が欲しいです。いまは置き場所がないからガマンしてます。
ああ、食器棚ねー。
KIKIさん
壁に少しでも空間があると欲張って収納に充てる人は多いと思いますが、この家はちゃんと壁が残されていますよね。一室空間で壁が少ないのに、壁の余白がいっぱい残ってるのは、改めていいなあ、って思います。
最初は大判の絵画を掛けるつもりだったんですが。
まだ丸めてあるね(笑)
KIKIさん
リフォームするときに友人にアドバイスされたのは「収納はつくりすぎないほうがいい」でした。理由は、あればあるほど、モノが増えるから、自分が使う場所を意識してつくったほうがいいって。難しいかなと思ったんですが、いま思うと良いアドバイスいただいたなーと思います。
確かにちょっと意識するだけで、ずいぶん違うと思います。でも、私たちの場合は、モノを減らそうという意識もそんなにないかもしれないです。
KIKIさん
そこを意識しすぎるすると、逆に不自由な暮らしになりそうですよね。
そうですね。

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逗子と鎌倉の暮らし

KIKIさん
この家を建てる前は、どんな暮らし方だったんですか。
結婚して最初の住まいはマンションですね。戸建住宅はここが初めてです。戸建の生活は最初は戸惑いもありました。マンションとは違いますから。
KIKIさん
自分たちの生活は変わっていないはずなのに。住まいのかたちを変えると、いろいろ違ってきますよね。
僕は神奈川生まれで、都内に引っ越してからもずっと戸建住宅で暮らしていたんですが、結婚して初めてマンションで暮らしてみて、それはそれで面白いなと思っていましたね。マンションは10階だったので、まず、景色が違うんですよ。それに、エレベータで乗り合わせるとお互い挨拶したり、みんなで住んでるなーって感じが面白かった。
ここは、実家にも近くて住みやすさはよくわかっていたので、なんとなく土地を探していたら、宅地のチラシが目に留まったんですよ。クルマの通行量が少なくて、バス停やスーパーが近くて。この住宅地の中でも静かで動きやすい場所だと思います。
角地だったことが決めてでしたね。以前からこの辺りで住みたかったけど、賃貸は少ないですから。それなら建てようと。少しランニングすると住宅街に鎌倉時代の史跡があったり、いろんな時代が同時に存在している面白さも感じていました。

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KIKIさんは、鎌倉で暮らして何年になるんですか。
KIKIさん
8年くらいかな。
僕らより先輩ですね。
KIKIさん
私はなんとなく東京を離れたいなあって思ってたころ、もともと友人夫婦が住んでいた家が空き家になったときに見せていただいて、それで一目惚れで……。当時、東京で住んでいた部屋の3倍の広さがあって、家賃は変わらず、平屋で、大家さんがお隣にお住まいで、お庭もあって。それに、山に興味を持ち始めたころで、自然が近いところもいいかなーと。東京にも通えるし。もしも無理なら、また引っ越そうと、気楽な気持ちで移り住みましたね。
東京での暮らしとの違いって、何か感じることありますか。
KIKIさん
そうですねー。例えば、東京では人を家に招くときは、食事もちゃんと準備しないといけないと頑張っていたけど、鎌倉のお友だちは、家に遊びに行くときも、こちらに招くときも、適当に手料理を一、二品持っていったり、持ってきてくれたりするからすごく楽で。きっと、そういうのに慣れてるんですよね。
確かに。時間の融通も利くし、いろいろと寛容だと思いますね。
そうそう。
KIKIさん
それから、鎌倉に越したときにいいなと思ったのは、1日家にいても残念な気持ちにならないことですね。東京では「あー、1日家にいちゃったなー」って損したような気分になるんですが、それがなくなったんですよ。環境のせいなのかな。
あー、わかります。わかります。
不思議だよね。
KIKIさんは、家で仕事することが多いと思いますが、そういうときに気分転換ってどうしています?
KIKIさん
庭いじりです。雑草抜いたり、球根植えたり細々やってます。それがリフレッシュの時間です。
いいですねー。
もうちょっと庭をなんとかしたいよね。素人の手作業だったので、時間だけはかかったんですが。まだ凸凹で。
KIKIさん
でも、日当たりが良くて広い庭はうらやましいです。今日はありがとうございました。また、近所でお会いするかもしれないですね。
妻・夫

そうですねー。こちらこそ、ありがとうございました。楽しかったです。

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エピローグ(編集後記)

白い家

このコラムを読んでいただいている読者の皆さんは、きっと「無印良品の家」のファンの方であろうと思うのですが(笑)。。。。。
まだWEB上で見たことしかない方も、もう実際に見たよという方もいらっしゃると思いますが、皆さんは「窓の家」を初めて見たときの印象ってどんな感じだったでしょうか。
私が初めて「窓の家」第1号のモデルハウスの撮影に行ったときに感じたことは、「とにかくやたらと白い家だなぁ」ということ。

「窓の家」の個性を形成している要素の一つが、この「白」いこと。外観上もインテリア上もこの「白」が目に飛び込んできます。
無印良品で販売されるさまざまな製品に使われている基本色のうちの一つなので親和性も高いですね。

少し専門的な話になりますが、「窓の家」の外壁、内壁色は日本塗装工業の色番号N−93番で指定されています。これは真っ白に近い「白」ですね。
気をつけて住宅街の白い家を見てみると、ベージュやグレーがかった白い家は散見されるものの、意外と真っ白を使った家は少ないことに気がつきます。
微妙な違いですが、ここに普通の白い家ではない「窓の家」の個性があるのです。

今回の取材もお天気に恵まれ、冬晴れの撮影日和でした。毎回思うことですが、窓の家は本当に青空がよく似合います。
真っ青と真っ白のコントラストはいつ見ても清々しく印象的ですし、室内も差し込む陽の光の加減で刻々と白い内装の表情が変わっていく様子はいくら眺めていても飽きないです。

内装についても、「白」が生きていることを感じるのが、対談の中でKikiさんがお話しされていた壁の「余白」についてです。壁が白だからこその「余白」なんだなと改めて気付きました。
「白」という色からは何か可能性を感じますし、この余白が住み手の個性を発揮できるのようなキャンバスのようなものに思えるのです。
これまでお伺いした「窓の家」のオーナーの皆さんはこの「余白」をモノの量とのバランスを考えながら上手に残していらっしゃいます。この余りの白い壁が心地良さを演出するポイントなのですね。

「窓の家」の良さはもちろん他にもたくさんあるのですが、ぜひ一度全国の「窓の家」モデルハウス「入居者宅」見学会でぜひこの「白」に注目しながらご見学いただければと思います。(E.K)

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「無印良品の家」に寄せて | モデル KIKIさん

葉桜の季節に想う

逗子の住宅地に建つ「窓の家」を訪ねたのは、まもなくクリスマス、という時期だった。取材を終えた後に、家主だけでなくスタッフも一緒に皆でクリスマスツリーを組み立て、飾り付けをした(実は撮影のために、もともと飾ってあったツリーを片付けていた)。小学生の娘さんは友だちの家に遊びに出かけていたので、大人ばかりでの作業になったのだけれど、皆、自然と笑顔になっていた。その笑顔でツリーを取り囲んだ数分が、なんと楽しい時間であったことか。家族だけで、最初にツリーを組み立てたときも、わくわくとした幸せな時間だったのだろうと想像できた。
「窓の家」は空間の仕切りがほとんどない作りだ。だから、家の中のいろいろな場所からリビングに置いてあるツリーを見ることができる。玄関、キッチン、ダイニング、階段、そして2階の寝室からも吹き抜けを覗きこむとツリーが見える。

仕切りのない空間というのは、室内の温度を快適に保つことが難しいのでは、と思い込んでいた。けれど、「窓の家」においては無意味な心配だった。そんなことよりも、数時間の滞在中に、それぞれの部屋の空間がどこかでつながっているこの家の快適さをじわじわと感じていた。見えなくても家族の気配を知ることができる。主婦の目線からだと、掃除機をかけるのも楽だろうと思う。そして、窓から入ってきた光は白い壁に道筋をつけながら、隣の部屋まで伸びていく。家の中だけで完結するのではなく、外ともつながっている。季節が変わればその時季ごとの自然の気配も、家にいながら感じることができるのかもしれない。

建築は完成した時が、始まりである。
学生の時に誰かから聞いたこの言葉が、わたしは好きだ。住宅なら、住み手がどのように暮らすかによって、空間は作られていく。家族や植物が成長していくように、家も育っていく。クリスマスツリーだけでなく、季節ごと、年齢ごとに変わっていく楽しみを、この「窓の家」では身近に感じながら暮らしていくことができるだろう。わたしもそういう楽しみがたくさんある家にいつか住みたいと思う。
家を失礼したとき、すでに日は暮れて外は暗かった。手を振りながら見送った窓の向こうで、クリスマスツリーの電飾がキラキラと輝いていた。この家は「窓の家」でありながら、「光の家」でもあるのだ。昼間、外からの光が溢れんばかりに家の中にも届いていたけれど、夜はまたその逆しかり。自分の家にその光を見つけて、笑顔で「ただいま!」と言う娘さんの表情もまた鮮明に思い浮かぶのだった。[2018.4]

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