vol.23 協奏の家
「無印良品の家」で暮らしている方を訪ねて奈良県生駒市へ。
イラストレーターの大塚いちおさんが、職住一体の「窓の家」に会いに行きました。

施工例 | 2017.12.12

「無印良品の家」に寄せて | イラストレーター 大塚いちおさん

僕にとって家とは、父がつくったモノだった

僕の父は大工だった。だから、僕が生まれた家も父が建てたものだった。その後、小学4年の終わりに同じ町の中で引っ越すことになり、新しい家も父が建てた。その現場を時々見に行っては、自分たちがこれから暮らす家が目の前で出来ていく様子に、子供ながらワクワクした。父はたくさんの家を建ててきたから、きっと自分の家はこうしたいと思うところがあったのだろう。そんな職人ならではのイメージやこだわりが詰まった家で僕は育った。

大工という仕事に憧れもあったが、僕は絵を描くことを仕事に選んだ。大工は継げなかったが、モノをつくるという部分だけ継いだつもりだ。依頼があってつくるというところ、最初は何もなかった土地に家が建っていくように、ゼロからモノをつくり始めるところは似ていた。
真っ白の紙やキャンバスから何かを描き始めるのは大変なことでもあるが、僕らのような仕事の楽しいところでもある。
無印良品の家は、まさに白いキャンバスだった。白い外観もそうだが、住む人のライフスタイルによって、さまざまな色がつけられ、思い思いの絵が描けるというところにそれを感じる。

人の家に遊びに行くと、その人らしい家づくりだと感心することがある。それと同時に、自分ならどうするだろうかと、考えることもよくある。ここには何を置くとか、こんな風に使うとか、人の家なのに自分だったらと勝手に想像する。絵を描くのは本人で、人のキャンバスに絵を描き加えることはできないのに。

そもそも、家はその人の生活と絡み合って描き出されるから面白い。
今回のお宅も、仕事と生活が共存しながら、その建物の中に活き活きと、その人たちにしかない暮らし方で、鮮やかに描かれていた。
それはまさに、世界に一枚の絵だ。

大工の父を継がなかったことで、職人の経験からくるアイデアや発想は僕にはない。だから家づくりに関してはゼロからモノをつくる楽しみは僕にはできない。しかし、この白いキャンバスのような無印良品の家を前にすると、そこに何をどんなふうに描こうかと考えると、急に熱が込み上げてくる。暮らし方によって描き加えられていく姿は、キャンバスに色が重ねられていくように、いずれはかけがえのない作品になっていくだろう。そんな家づくりは楽しいはずだ。

僕は、仕事への向き合い方や生活の仕方で、今までいくつかの選択をしてきた。自分がその時々で選んできたことにもちろん後悔はしていないが、今回拝見した家をとても羨ましく思った。父にはできて僕にはできないと思っていた「家」という、かけがえのない作品が自らの手で、そこに生まれていたのだから。[2017.12]

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