vol.23 協奏の家
「無印良品の家」で暮らしている方を訪ねて奈良県生駒市へ。
イラストレーターの大塚いちおさんが、職住一体の「窓の家」に会いに行きました。

施工例 | 2017.10.31

ダイアログ2

暮らし方と働き方

ご主人のソフビ人形の工房にて

大塚さん
しかし、すごいコレクションですよね。僕、そもそもソフビ人形のつくり方がよくわかっていないんですが……。
まずは原型を粘土でつくり、それをシリコン型で複製してロウ型に置き換えます。そのあと、手足などの接合部分の間着をつくります。それから金型を製作してくれるところに送って、完成した金型にソフビの原料を流し込んで焼いてもらい、それを抜いた状態で納品されるんですよ。そこからバリを一個ずつカッターで切って、穴を開けて、組み立てた状態が今のコレです。これから塗装です。
大塚さん
塗装は見本をつくって外注するんですか。
50体あれば50体、自分で同じように塗装しますね。厳密にいうとワンオフが50個並んでいる感じです。
大塚さん
ええええ、自分で全部塗装? 思い入れは伝えやすいけど大変ですよね。
1ヶ月暮らせるくらい稼げればいいな~、くらいのペースでつくっています。
大塚さん
で、ご主人の夢の空間がなぜこの土間なの?
粘土もこねますからね。土間のほうが便利なんですよ。
仕事場を土間にしたのは良かったよね。
正直、土間って傍目には「追い出された感」があると思うんですが……。
大塚さん
まあ、そう思われがちですよねー(笑)。でも、プランの中でこの場所を見つけたときは、ご主人に「これはイケル!」って実感があったんじゃないかと勝手に思ってるんですよ。ただ、冬は寒くなかったですか?
それが寒くないんですよねー。建てる前に「寒くないですか」って聞いたんですが、ちゃんと床下も断熱されているので大丈夫ですって言われて。実際、寒くないし快適でしたよ。念のためにエアコン用のダクトもあるんですが、結局付けないまま一年が過ぎ、そこも棚になってソフビ人形が……。
大塚さん
ところで、このコレクションに対して奥様は……(小声)。
あー、もうどれがどう増えてるのかわからないと思うんですよね。新しい人形もすっと並べて置くとわからないし(小声)。
大塚さん
僕なんかはこういうの見ると「おお」って思うし、収集する気持ちはわかるけど……。
「いくつ同じの買うの?」って言われますが、一体一体表情違いますからねえ。なかなか理解してもらえないですけど。
……。
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大塚さん
奥様は何かコレクションはないんですか。
コレクションというほどではないですが、写真が趣味で一時、レンズを集めてました。あと、食器は好きですね。好きなカップでコーヒーを飲みたいなーって。
大塚さん
用途があるモノは楽しみ方もいろいろでいいですよね。ところで、奥様の仕事場にもご主人とギリギリ接点がありそうな人形やオブジェが何体かありますが。
あー、これはホントは主人のコレクションで、こっちに置いても「ギリギリ」許せるものだけです。
カワイイ系なら許してもらえるからなーって。少しずつ他の空間に侵食を……。
「太陽の塔」のミニチュアも主人のもので、最初置かれたときは「そ、そんなー」って思ったんですが。
でも棚から外してみると……。
ちょっと寂しいんですよねー。それでいまはこちらに置いてます。たま~にソフビが3体くらいダイニングテーブルに出てることがありますが。すぐに戻しちゃうけどね。
ソフビって、天気や光で顔の表情が変わるので、いろんなところで見たいんですよね。で、ついつい日当たりが良い場所に持ち出しちゃって。
妻・大塚さん
なるほどねー。

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一つの家のワークライフバランス

大塚さん
子どもが小学校一年生くらいだと、何をして遊ぶことが多いんですか。
天気が良い日は二人で自転車でよく出かけたりしました。子どもには僕ができなかったことを、やってもらってる感じがありますね。ただ、夫婦二人ともインドア派で、その血が濃いためか家の中が好きなんで、困ったなーと(笑)。
大塚さん
あはははは。遊び相手はご主人なんですね。
そうですね。家事全般は彼女が担当していて。もともと二人ともひとり暮らしでしたから、僕もそれなりに家事はしていたんですが。何がきっかけで作業分担みたいになったのかな。
子どもが生まれてからかなー。食事の栄養バランスも気にするようになりましたし。
確かに長男が生まれてから、僕は子どもと遊ぶ相手になり、料理は彼女に任せっきりになってますね。いつもありがとう。
いえいえ、こちらこそ。
大塚さん
でも家でライフスタイルを完結するためには、家族の食事は大事な要素ですよね。キッチンも見せていただいていいですか。
どうぞ。ここは好きにさせてもらいました。
大塚さん
キレイに使ってますねー。コックピットみたいな感じで基地感ありますよね。
対面のペニンシュラ型キッチンはやめて、シンクやコンロ、ワークトップは壁側に設けてもらったんですよ。リビングから見たときに換気扇のフードも目立たないし、シンクや水栓も見えないですよね。ダイニングテーブルで仕事の打ち合わせをすることもありますから、収納やフードが目の前に見えるのは避けたかったんですよ。3人分なら食器もそんなに多くないので、吊り戸棚もやめました。おかげでスッキリ。
大塚さん
なるほど。
それに、ダイニングとの間に作業台が欲しかったので、ここにやや高めのカウンターをつくり定食屋の配膳台みたいになってます(笑)。椅子に座るとキッチンの目隠しにもなる高さ、コーヒーや食事はすぐに出したいけど、キッチン感はできるだけ見えないように。
大塚さん
そのカウンター下が収納になってるんですね。
収納家具がほとんどないので、リビングにバラバラ出てきそうな日用品はここにまとめてしまっています。

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大塚さん
二人は一緒に仕事するようになってどれくらいなんですか。
同じ空間で仕事を始めて10年ですね。結婚して8年。24時間一緒にいて嫌にならないの?、ってよく聞かれます。
あ、それ、すごく聞かれる(笑)。
大塚さん
で、どう答えるんですか。
ううーん。
ううーん……って感じですかね。
なんでしょうかね。これが当たり前になってるんで。ケンカもするほうが珍しいくらい。
どちらかが機嫌が悪いときはそれを察して、おさまるまでお互いそっとしてますし。
大塚さん
どうしょうもないときは草むしり(笑)。
でも、そうじゃないと、この空間ですべてを、ってなかなか難しいですよね。
そうですね。不思議な関係ですよね。
改めて考えるとなんでだろうね。
働き方としては珍しいと思うんですよ。自営業二人が同じ家で仕事してるって。でも、私は合間に家に手間もかけられるし、子どもも見ていられるし、こういう働き方じゃなければ、いまの庭もできなかったと思います。

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